こんばんは。
数日前でしたか、とある人の消息を知りました。
私にとっては思い出すのにやや抵抗があるような、思い出すとほろ苦い感情が呼び起こされ
る人です。
誤解しないで戴きたいので最初に申し上げておきますが、前夫ではありません。
しかし、その人と関係はあった女性です。
最初の結婚の破綻の原因の一つに、前夫の浪費癖と女性関係の派手さがありました。
行きつけのスナックでは何と若いホステスだけでなく、年増のママとも関係を持ち―どうやら、
お店全員の女性と関係を持っていたようです、殆ど乱交紛いの世界ですね。
そんな人と一時でも法的に夫婦であったというだけで、私自身の恥でもあるような打ち明け話
ではあるのですが、、、
そんなプレイボースですから、とにかく女性を口説くのはお手のものです。
数日前に消息を知ったのは、前夫が関係を持っていた(どこまでの関係であったかは知りませ
んが)女性でした。
私とほぼ同年であったので、間違いはありません。
前夫が実家に戻った直後、私の母がこんな噂を聞いてきました。
知り合いの若い女性が
―○○さんがいなくなって、淋しくて淋しくて堪らない。このまま死んでしまいたい。
と、毎日、泣いているというのです。
そのことを母に話したのは女性のお父さまでした。
この話を聞いた時、母は咄嗟には返す言葉がなかったそうです。その女性と前夫がどうやら
ならぬ関係があることはやはり噂で知っていたようですが、まさか女性のお父さん自身から聞く
とは思わなかったようでした。
しかし、私が彼女の消息を知っていたのは、そこまででした。
あれから30年近くの年月が流れています。
たまたま、その女性の名前を聞いて、名字が変わっていないので、少し不思議に思ったので
す。嫁いでいるなら、名前は変わっているはずです。
―もしや、あのときの女性では。
と思い母に確認したところ、間違いありませんでした。
その女性はいまだに独身だそうです。その理由について、私自身は何を知る由もありません。
ただ、咄嗟に浮かんだのは30年前の彼女の呟きでした。
―○○さんがいなくなって淋しくて堪らない、このまま死んでしまいたい。
何故か、その呟きがありありと耳奥で甦りました。
もし彼女にとって前夫が本当に心から恋い慕った、たった一人の男性であるならば、或いは彼
をついに忘れることはなかったのだとも考えられます。
もちろん、これは私の勝手な想像ですので、外れている可能性もあります。
もっと別の理由で―例えば現代女性らしく、キャリアに生きようと考えての人生の選択であっ
たかもしれません。
でも何故でしょうか、私は彼女の昔と変わらない名前を耳にした瞬間、前夫がいなくなったとき
の彼女の独白を思い出してしまいました。
一体、女タラシであった人は彼女に何を囁いたのでしょうか。
男の方はほんの遊びのつもり、一時、純粋な若い娘に甘い夢を見させたで終わりなのでしょう
が、遊ばれた女性にとっては一生に一度の恋であったかもしれないのです。
人の心を次々に弄んでいったあの人の罪は本当に大きく重いものであったと、私は今更なが
らに思います。
私はむしろ、私が想像するような理由ではない別の事情であることを願います。
敢えてお話しすることではないかもしれません。
しかし、30年ぶりに耳にした彼女の話は、私に少なからぬ衝撃を与えました。
―○○さんがいなくなって淋しくて淋しくて堪らない、死んでしまいたい。
30年前、そんな呟きを漏らし泣いていた彼女がどんな年月を過ごしたのか、、、
むしろ、あんな中身のない人のことは忘れて、愉しい充実した人生を生きてこられたと思いた
い、強くそう願うばかりです。