【妄想小説】Baby(前編) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

年下雅紀くんの

短いお話です(^^)/

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーーン

 

鳴り続けるピンポンに苦笑い。

「今開ける!笑」

 

「さむいさむいさむいっ。

っあーーっもう早く!早く開けて」

 

ドアの向こうから聞こえてくる

大きな声にも苦笑い。

 

ガチャ

 

「もう遅いから、

ピンポン何回も鳴らさないでって、」

 

「いいからいいから早く入れて。笑

あーもうちょーーー寒いっ」

 

高い背、

小さく丸めて寒そうにしてる

わんこみたいな顔。

 

細い体、

するっと滑り込ませてくる

猫みたいな仕草。

 

ちょっとだけキュンとして…

ちょっとだけやっぱり、苦笑い。

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

「お風呂ありがとー!生き返ったー」

 

…やだな、もう。

 

上半身はだかのままで

こっちに来る雅紀につい、

ドキドキ。

 

「今日も終電逃したの?」

 

「あー…うん、そう。

逃した逃した。やっちゃった。笑」

 

冷蔵庫からビール、

勝手に出しながら

にこっと笑うかわいい顔。

 

笑顔は昔から変わらない

かわいいままなのに。

 

たくましい雅紀の上半身に

ついまた、ドキドキ。

 

「来る前ニノとLINEしててさ、」

 

「ニノくん!懐かしい。笑

相変わらず仲いいんだね」

 

久しぶりに聞く
雅紀の親友の名前にほっこり。

 

「これから行くんだって言ったら

おねーさんによろしく、だって。笑」

 

「…おねーさん、ね」

 

胸が痛い。

 

昔からずっと変わらない関係を

改めて突き付けられたみたい。

 

「…おねーさんはやだな、」

 

ポツリこぼれる、小さな声。

 

「何か言った?」

 
「別にー。なんでもない。
パジャマ、そこに出しておいたよ」
 
「ありがとー。
これちょう着心地いんだよね。
ふわっふわなの」
 
メンズサイズのふわふわスウェット。
 
年末に、
セールで安くなってた!とか言って
雅紀が自分で買ってきたやつ。
 
スウェットにTシャツ。
歯ブラシ。
 
派手なトランクスと靴下まで、
いつの間にか、何枚か。
 
一人暮らしの小さな部屋の中に
すっかり増えてる雅紀のもの。
 
「なんでもかんでも
うちに置いてかないでよ」
 
「いいじゃん別に。
あったほうが便利だし」
 
「便利って…」
 
確かに便利かもしれないけど!
 
「なんか困んの?」
 
しれっと
悪びれもせずに言う顔が
まっすぐすぎて憎たらしい。
 
「困ること…
あるかもしれないでしょ」
 
「え?なに?」
 
「彼氏とか!
おうちに呼んだときに困るでしょ」
 
「えー?笑」
 
彼氏なんていないくせに、
って言いたげにニヤニヤする顔が
ますます憎たらしくて。
 
思ってもなかった言葉が飛び出す。
 
「彼氏が来るかもしれないでしょ」
 
「え?」
 
まっすぐな視線。
 
「そんな人……いんの?」
 
い、いないけど。
そんな人いるわけないけど。
 
「パジャマも歯ブラシも、
弟みたいな男の子のものですって
彼に言うの?」
 
「………」
 
「そんなのヘンでしょ」
 
ヘンだよ。
 
いくら弟みたいな
幼なじみの男の子でも。
 
こんな頻繁に…泊まりに来るなんて。
 
夜遅くに突然やってきて、
泊まっていくなんて。
 
ずっと昔から知ってる、
弟みたいな男の子。
 
ずっとずっと、
かわいかった男の子。
 
幼くてかわいかった雅紀は、今は。
 
ただただドキドキしてしまう、
大人の男の人。
 
もうずっと、
わたしがどんな気持ちで
迎え入れてるのかなんて。
 
そんなこと
考えたこともないんだろうな。
無邪気なこの弟は。
 
「…お風呂入ってくる」
 
狭いリビングから逃げる。
雅紀の顔が見られない。
 
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
 
ちゃぷん
 
「ふーーーー」
 
ちゃぷちゃぷちゃぷ。
お湯を揺らす。
 
”おねーさんによろしく、だって。笑”
 
おねーさん。
 
そうだよ。
雅紀にとっては、
おねーさんなんだもん。
 
終電逃したら
泊まるってだけで別に。
 
スウェットだって歯ブラシだって、
必要だから置いてるだけで別に。
 
もしほんとに
彼氏ができたってきっと、
 
いつも姉がお世話になってまーす♪
 
とか言ったりしてきっと…別に。
 
じゃぶん!!
 
「…………(ブクブク)」
 
 
思い出す。
初めて会った日のこと。
 
あれは春で…
わたしは高校生で、
雅紀は中学に上がる頃だった。
 
”となりに越してきました相葉です”
 
おばさんの後ろで
ぺこりと挨拶する姿。
バスケットボール持って。
 
ちょっと人見知りして、
大人しくてかわいかった。
 
でもそれからすぐ
しょっちゅう遊びに来るようになって。
 
弟ができたみたいで
嬉しかったし。
 
お姉さんかぜ吹かせるわたしに
イヤがる素振りもなかったし。
 
…かわいかったなー。
 
ニノくんと一緒に
わーわーじゃれてるとこなんか、
わんころ2匹って感じで
ほんとにすっごくかわいくて、
 
昔を思い出すとそれはそれで
今とはまた違うキュンというか、
ふわふわした気持ちになるけど…
 
 
ザバッ!
 
「…ふーーーー」
 
 
ヘンなのはわたし。
雅紀じゃない。
 
いつの間にか
大人のオトコになった雅紀に
勝手にドキドキして、
 
いつの間にか…
こんなに好きになっちゃった、
わたしが悪い。
 
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
 
「ふはははっ!」
 
ソファにごろんと横になって
テレビ見ながら笑ってる雅紀は
全然いつも通りだから。
 
ちょっとほっとして
わたしもいつも通りを意識する。
 
「何見てたの?」
 
「あ、あがった?長かったね」
 
ソファからぴょん!と
顔を出してこっちを見る姿が
やっぱりわんこみたいだから
ちょっと笑っちゃう。
 
「アメトーーク見てた。
今日のちょうおもしろい。笑」
 
「えーなに芸人?」
 
いつも通りはほっとするけど。
 
いつも通りすぎて…
ちょっと切ない。
 
「雅紀ビールまだ飲む?
新発売のチューハイもあるけど」
 
「あ、チューハイにする。それ飲む」
 
レモン味を雅紀に手渡して、
わたしもソファに座ろうとしたら。
 
 
「ねえ、ここ座って。
ドライヤーかけたげる」
 
「…え?」
 
 
雅紀が指さしたのは、
ソファの下。
 
え?
 
雅紀の足のあいだに
座ってってこと??
 
「ほら。早く髪乾かさないと
風邪引いちゃうから」
 
ドライヤー、
すっかりスタンバイして
やる気満々の雅紀に。
 
「じゃあ…お願いします」
 
大人しく言う通りに、
雅紀の足のあいだに座る。
 
ブオーーー
 
温風と、雅紀の大きな手。
 
『…何言うとりますの!』
『ワハハハ!』
 
テレビからの笑い声。
 
「………」
「………」
 
ブオーーー
 
大きな手が
髪のあいだを何度も通る。
感じる、雅紀の指。
 
「まだけっこう濡れてるから
時間かかるよ?笑」
 
「うん。大丈夫」
 
ブオーーー
 
 
ドキドキドキ
 
…やだな。
 
やっぱりこんなに、ドキドキしちゃう。
 
「雅紀、もういいよ、」
 
たまらなくなって、
立ち上がろうとしたら。
 
「こら。動かないで」
 
いきなり首もとに
ぎゅっと回される雅紀の左腕。
 
「…!!」
 
片腕で後ろからすっぽりと
抱きしめられてるみたいな状態に
びっくりして体がこわばる。
 
「ちょっと雅紀、なに…笑」
 
「逃げようとするからでしょ」
 
髪に、首元に、
触れてるふわふわのスウェット。
 
あたまの後ろに当たってる
雅紀のからだの感触。
 
しなやかに硬い、
筋肉質な胸のあたり。
 
ドライヤーの風はもう
当たってるのかもうわかんない。
 
ぎゅっ
 
雅紀の腕に
さらにぎゅっと抱きしめられて。
 
もう心臓止まっちゃいそう…
 
ブオーーー
 
 
『…あーあかん』
『それはあかんわー』
『ワハハハ!』
 
 
「ねえ、今日……る?」
 
「え?なに?」
 
 
アメトーークと
ドライヤーの音に阻まれて
雅紀の声が聞こえない。
 
「雅紀?なに?」
 
腕の中から振り向いたら、
思ってたよりも近くにあった、
雅紀の真剣な顔。
 
カチッ
 
ドライヤーを止めた雅紀が
真剣な表情。
 
 
「今日…一緒に寝る?」
 
「………え?」
 
雅紀?
何を言ってるの??
 
 
『…ほんまに何を言うてるの!』
『ワハハハ!』
 
 
ねえ雅紀。
 
ほんとに何を、言ってるの??
 
 
(後編へつづく)
 
 
(初出:2018.2.16)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
年下雅紀くんをRebornしてみました(^^♪
 
書いた当時は全3話あったんだけど、
手直しして前後編にしようと思ってます、
いけたら明日後編アップします、
アップできますようにー!(神頼み)
 
読んでいただきどうもありがとう。
今日もおつきあい感謝です。
2月もどうぞよろしくね(^^)