【妄想小説】Baby(後編) | 彼方からの手紙

彼方からの手紙

ラブレターフロム彼方 日々のお手紙です

「今日…一緒に寝る?」

 

雅紀の真剣な表情。

熱を帯びたような視線。

 

本気なの?

ほんとに本気で言ってるの?

 

雅紀もわたしと同じ気持ちだって

思っていいってこと…?

 

ど、どうしようどうしよう、

なんて返事したら、

 

「ごめんごめん!うそうそうそ。笑」

 

急に空気を変えるように

あははって笑う顔。

 

「冗談冗談。ごめんごめん。笑」

 

ブオーーー

 

唐突にまた、

髪に感じるドライヤーの温風。

 

「前向いてて。

まだ乾いてないから」

 

雅紀の手、

頭のてっぺんにのった手のひらに

くるっと強制的に前を向かされる。


ブオーーー

 

「………」

「………」


”一緒に寝る?”

”冗談冗談。ごめんごめん”

 

急展開に

頭がついていかない。

 

なんなのもう…

どうしたらいいの?

 

さっきまでぎゅっと

首元に回されてた腕が離れて、

さみしいけど。

 

髪のあいだを滑るように

優しく動いてる

雅紀の大きな手のひらに、

やっぱりキュンとして。

 

カチッ

 

「はーいできた。乾いたよ」

 

背中越しに聞こえる声。

 

「…ありがとう」

 

振り向けない。

うるさい心臓の音。

 

「さらさらだね」

 

肩にかかってる髪を

ひと束掬うみたいに持ち上げる

ごつごつ節ばった指の感触に、

胸がぎゅーーっと苦しい。

 

顔、見えないから。

 

雅紀の顔が見えないから、

思い切って、勇気を出して。

 

「ほんとに、一緒に寝る?」

 

「え?」

 

「いいよ」

 

ドキドキドキドキ

 

「ベッド…行く?」

 

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

 

「こっちの部屋こんななんだ!」

 

寝室の扉を開けた瞬間、

テンション高い雅紀に苦笑い。

 

「なんかけっこう女子っぽいね?」

 

「女子っぽい?そう?笑」

 

「うん。この、このあたりとか」

 

鏡を置いてる棚の周りを

落ち着きなくきょろきょろ見てるとこ、

わんこみたいだからまた、苦笑い。

 

「雅紀まくらは?」

 

「あっ忘れてきた」

 

いつもまくらにしてるクッション、

ソファまで急いで取りに戻る姿も

やっぱりかわいいわんこだな…笑

 

”ベッド…行く?”

 

わりと真剣なトーンで

振り向いたのに。

 

雅紀の目が、

気まずく揺れたように見えちゃって。

 

やっぱりほんとに

ただの冗談だったのかなって

急に恥ずかしくて心細くて。

 

「なんにもしないならいいよ?笑」

 

ふざけた感じでつい、言ってしまって。

 

「なっ、なんもしないよ!!」

 

かぶせるように

雅紀が大きな声で言うから…

 

そこからはもう、

完全にいつもの雰囲気で。

 

完全にいつもの、

弟とおねーさんの距離に

戻ってしまって。

 

しょうがないよ。

だってもうずっと、

わたしたちはこんな感じだもん。

 

すごく近くにいるのに、

すごくすごく遠い。

 

遠いなー…

 

「はーい。枕もってきた」

 

「じゃあ、寝ましょうか」

 

「はい。寝ましょう」

 

「ほんとに何にも

しちゃダメだからね?笑」

 

「しないよ!

なんもしないっていったじゃん!」

 

「ではどうぞ。笑」

 

ふざけた雰囲気でふとんをめくって、

雅紀を促す。

 

「へへ…おじゃましまーす」

 

ドキドキドキドキ

ドキドキドキドキ

 

すごくすごくドキドキしてるのに。

結局いつもの”おねーさん”を

演じちゃう自分が哀しい。

 

ふたりで入るには小さなベッド。

肩が触れ合う距離にいる雅紀。

 

「もー狭いーー。笑」

 

「ごめん!それはごめん。笑」

 

申し訳なさそうに、

大きなからだを小さく丸める雅紀が

かわいくてふふふと笑う。

image

「電気消すね」

 

「うん」

 

「おやすみ」

 

「おやすみー」

 

パチッ

 

枕元の灯りを消して

真っ暗になったら。

 

より近くに感じる、雅紀の体温。

 

ひとりの時とは違う、

狭さとあたたかさ。

 

「………」

「………」

 

ドキドキドキ

 

ドキドキしながらも

すぐとなりに感じる

ごつごつした身体の感触が嬉しい。

 

もぞもぞ動く雅紀から

わたしと同じシャンプーの匂い。

 

甘い匂い。

 

「雅紀」

 

「ん?」

 

思ってるより近い場所から

聞こえてくる返事。

 

目を閉じたまま、続ける。

 

「髪、乾かしてくれてありがとう」

 

「うん。笑」

 

柔らかくて、甘い声。

 

「今度雅紀にもやってあげる」

 

「え?」

 

「すごく気持ち良かったから」

 

「………」

 

あっ、やだ。

 

ヘンな意味に聞こえてたら

どうしよう。

 

ぱっと目を開けたら、

暗がりの中で交わる視線。

 

思いがけず

まっすぐ真剣な瞳に見つめられて

ドキン!と胸が、強く打つ。

 

ドキドキドキドキ

 

「オレ今心臓バックバク」

薄暗がりの空気を
小さく震わせる雅紀の声。


「こっちの部屋に入りたいって

いっつも思ってた」

「………」
 

「でもほんとに入れてもらえるなんて
思ってなかったから…
今すげーテンパってる」


ほんとに?ほんとなの?

うちに泊まるときはいつも、
わたしが寝室の扉閉めるときはいつも、

リビングに敷いたお布団の中から
ばいばーいなんて
無邪気に手を振ってたのに?

おやすみー!って、
いつもかわいい笑顔だったのに?

 

「ダメって言われたけど、」

からだを少し起こした雅紀が
ぐっと近づいてくる気配。

「やっぱ無理っぽい」

真剣な表情。
ちょっとずつ近づく距離。

長い腕が伸びてくる気配に
ドキドキが止まらない。
 

ためらうように
ゆっくり近づいてきた手が
わたしのあたまに触れる。

おそるおそる
そっと髪をさわる雅紀の手に
もう涙が出そう。

 

「ずっと好きだったから」

 

「え?」

 

「会いたくて、泊まりにきたくて。

終電逃したなんていっつもウソついて」

 

「雅紀、」
 

「ごめん。なんもしないって言ったのに」

「雅紀」

ぱっと離れようとした手を
追いかけてぎゅっと掴む。

大きな雅紀の手。
ごつごつしてる甲の感触。
 

ぎゅっと手を握ったまま
からだを起こして、雅紀と向かい合う。

「わたしも好き」

「………え?」

薄い暗がりの中で
びっくりしてるかわいい顔。

「わたしも…雅紀が好きなの」

言った瞬間にぎゅーーーっと!


すごいチカラで抱きしめられて、
キュンが止まらない。

「…マジで?」

「うん」

「ほんとに?」

「ほんとに。笑」

何度も確認する雅紀が、
しがみつくみたいに
ぎゅっとしてくる雅紀が、
かわいくてかわいくてつい、
笑みがこぼれる。

「はぁーー…良かった」

わたしの首すじに
顔を埋めてる雅紀の小さな声。

「急に彼氏とか言い出すから
オレすげー焦ってた」


あの話、信じてたの?

「ベッドのある部屋に
オレ以外のやつが入んのかよって」


真剣な声。

「そんなの絶対、
耐えらんないって思って」


「ごめん。そんな人いないよ」

つぶやいた言葉に、
ぎゅっとわたしを抱きしめる
雅紀の力がまた強くなる。

ドキドキドキ

腕の中から見つめたら。
至近距離で目と目があったら。

 

嘘でしょ…

信じられないくらい
オトコっぽい雅紀の目。
艶っぽい瞳の表情。

「ん、」

急にちゅっ、とくちびるが触れる。

「…ん」

そのまま
絶え間なく落ちてくる小さなキス。
 

初めて触れる、雅紀のくちびる。

両方の頬を
大きな手のひらで包まれて。

顔を少しだけ
上に向けられてキスしてるのが
たまらなくドキドキする。

そっと入ってくる
熱い熱い柔らかさ。

どんどん深くなるキス。

思わずきゅっと
胸のあたりに手を寄せたら。

スウェット越しに伝わってくる
雅紀の鼓動の音。

”オレ今心臓バックバク”

手のひらに感じるありえない速さが
愛おしくてたまらない。

雅紀。

ストレートに、まっすぐに。
これまでの距離を
越えてきてくれてありがとう。

「ん…雅紀、」

止まらないキスが苦しくて、
思わずくちびるを離したら。

「こら。逃げないで。笑」

甘くささやく雅紀が
優しくついばむみたいに
また何度もくちびるを寄せてくる。
 

「待って」

「やだ。笑」

「やだって…笑」

優しくキスされたまま
うしろ髪にさらっと通される
雅紀の両手、長い指。

そのままうなじを
ぐっと支えるように固定されたら
ますますキスが深くなる。

食べられちゃうみたいな
オトコっぽいキスに、
ドキドキが止まらない。

ぱさっ

ふわふわのスウェット、
さっと脱ぎ捨てた雅紀は
初めて見る艶っぽさ。

少し乱れた長めの前髪。
きれいな身体のライン。
がっちりしなやかな肌。

熱い身体に抱きしめられたまま

ぐっと切実に押し倒されたら、

急にオトコっぽい雅紀に
熱い身体の匂いに
ドキドキしすぎてもう…

「すっげー好き」

耳のすぐそばでささやく
柔らかい声。

ちゅっ

そのまま耳にキスされて
思わず力が抜ける。

「今すぐオレのものにしたくてたまんない」

絶対的に優しくて
かわいい男の子だった雅紀は。

いつのまにか
すごくすごくオトコっぽくて
すごくすごくかっこよくて…

強い腕に、
熱い身体に、
優しい甘さに。

熱く熱く溶けて。

雅紀が全部、ココロまで全部、
甘く熱く…溶かしてくれた。


(終わり)

 

(初出:2018.222/2.28)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

読んでいただき

ありがとうございました(^^)/

 

2話と3話を

ぎゅっとまとめて後編としました、

はー楽しかったーー♡

 

「今すぐオレのものにしたくてたまんない」
 

ぎゃーー雅紀雅紀ー!!

最高ーー雅紀雅紀ー!!

(落ち着いて)

 

これは…!と思うセリフだけ、

厳選して残してみたんですけど、

 

いちばんツボなのは、主人公ちゃんに

「じゃあ、寝ましょうか」って言われて

「はい。寝ましょう」って返すこのセリフ!

すごい言い方想像できない??

相葉さんぽくなーい??

(出ましたいつもの自画自賛)


今日は立春なので

(とは言え札幌はただいまマイナス9℃だけど笑)

ひさびさにコメント欄開けときます、

共にきゃーきゃーしてもらえたら

とっても嬉しい(^^)

 

お付き合い感謝です、

いつもどうもありがとう!