



「ここの背景をもう少し細かく」。青森県弘前市内の自室で、画面に向かって指示を出す。別冊少年マガジン(講談社)で連載中のマンガ「ふらいんぐうぃっち」の作者、石塚千尋さんのいつもの仕事風景だ。「ふらいんぐうぃっち」は半人前の魔女が弘前の親類宅に居候し、一人前の魔女を目指すというストーリー。2016年4月にはテレビアニメ化もされた人気作だ。
県内に1人、東京など県外にも数人いるアシスタントへの指示は、すべて無料通話ソフト「スカイプ」やメールで出す。「中には顔も見たことがない人もいるので不思議な感じ」と石塚さん。完成原稿はデータを添付して出版社に送る。
石塚さんがマンガ家を志したのは高校生の時。「絵を描いて食べていけたらいいな」という漠然とした夢を抱えて上京した。
専門学校生時代に描いた作品が出版社の編集者の目にとまり、本格的に描き始めた。2010年春には新人賞を受賞。だがスランプに陥り、何を描いたらいいか分からなくなった。
受賞の2年後、実家のある弘前に戻った。窓から見える弘前の景色に「ここに魔女が住んでいたら面白いんじゃないか。」と思い構想を練った。
作品は弘前城近くにある藤田記念庭園・洋館の喫茶店や青森市の浅虫水族館など実在の場所をモデルにした場面が数多く登場する。

朝日新聞デジタルの記事と写真を一部抜粋