国民的な人気を誇る漫画『ドラえもん』(小学館)に
は再放送が全くない幻のアニメシリーズがある。それが通称“日テレ版”だ。日本テレビ系列で1973年に半年間だけ放送されていた。最後に再放送されたのは1979年。この作品は触れられることもなく、視聴者の僅かな記憶を残して存在を抹消された。日テレ版はテレビ朝日系で放送のドラえもんとは異なる部分も多い。
ドラえもんの声は男性声優があてていた。『平成天才バカボン』のバカボンのパパ等、中年男性のキャラクターで定評の富田耕生。後半は『ドラゴンボール』の孫悟空役や『銀河鉄道999』の星野鉄郎役等を務める野沢雅子に代わっている。
のび太はいたずらっ子でドラえもんを怒鳴りつけることもあるし、ドラえもんも負けしと反論する。のび太がわんぱくに描かれていた理由について、日テレ版の脚本を手がけた鈴木良武は以下のように振り返る。
「僕自身の好みを言えば、少年がいつも誰かにべったりとか何かというと直ぐ頼るっていうのは、ちょっと考えなきゃいけないと思う。でもそれはどっちかというと、大人側の論理なんだ。原作ののび太は少年側の論理なんですよ。寧ろ、自我に目覚めさせようとした俺たちのほうが生意気だったのかもしれない」。
こうして日テレ版は、原作の初期に輪をかけるドタバタギャグになったが、低迷した。初回放送では関東地区の平均親聴率は6.6%。裏番組が永井豪原作のロボットアニメ『マジンガーZ』(フジテレビ系)で、絶大な人気を誇っていたことも背景にあった。
みんなが寝静まった頃に
より記事を引用