



1980年代に3人組バンド「イエロー・マジック・オーケストラ」(YMO)で世界的ヒット曲を生み出し、88年には米映画「ラストエンペラー」で米アカデミー賞作曲賞を日本人として初めて受賞した。晩年はがんとの闘いが続いたが、最後まで音楽作りに情熱を注いだ。
YMOで共に活躍したドラマーの高橋幸宏さん(享年70)が1月に死去してから3カ月。坂本さんが静かに旅立った。
葬儀は家族葬で営まれ娘で歌手の坂本美雨(42)ら子供たちも見送った。お別れの会は本人の遺志により行わない。死因は明らかにされていないが、20年6月に直腸がんと診断された。両肺などにも転移しステージ4と公表していた。
特にここ半年は凄絶な闘病だった。亡くなる1、2日前には家族や医師に「つらい。もう、逝かせてくれ」と頼み込むほど。関係者は「弱音を吐かなかった彼がそんなことを言うとは…。よほど苦しかったのだろう」と思いやった。
14年に中咽頭がんと診断され、治療の末に寛解。だが、直腸がんと診断された20年6月には、治療しなければ「余命半年」と告げられた。手術では、最初にがんが発生した原発巣と肝臓2カ所、転移したリンパの腫瘍、さらに大腸を30cmも切除。両肺に転移したがんを摘出するなど、1年で6回の手術を受けた。その後は通院して投薬治療を続けてきた。
そんな状況下で全身全霊で取り組んだのが2022年12月11日に全世界配信したピアノコンサートだった。同年9月中旬に事前収録し数日かけてコンサートに仕立てた。「最後になるかもしれない」と死を意識しながら繊細な音色を奏でた。
痩せた印象だったが、力強いまなざしで鍵盤と向き合った。「アレンジも選曲も時間をかけて慎重にやった」という13曲、約60分の演奏。「大きな達成感を得ていた」(関係者)というこの映像が世界に届けた人生最後の演奏となった。
理知的でニックネームは「教授」。興味こそ原動力で、既成の価値観にとらわれず、やりたいと思ったことに全力で取り組んだ。
所属事務所は2日に発表した訃報を伝える文書に坂本さんが好んだラテン語の一節を添えた。
「Ars longa, vita brevis」
(芸術は長く、人生は短し)
「人の命は短いが、優れた芸術作品は死後も後世に残る」ということわざだ。
Yahoo!JAPANニュース
より記事を引用