


極東ウラジオストクで暮らし、氷点下30度までは体験したことがある共同通信の飯沼賢一記者にとっても異次元の寒さだった。
共和国首都のヤクーツクから四輪駆動車で約900キロ先のオイミャコンを目指す。近郊を流れるレナ川は凍結して冬場は車道になる。
片側2車線を大型トラックが行き交い、道路標識もあった。取材に同行した運転手のマキシムさんによると、4月までは通行できるという。
川を渡り、オホーツク海に面する極東マガダンまで通じるコリマ街道を東へ。ソ連の指導者スターリン時代の政治犯が建設に関わった通称「骨の道」。収容所に送られ、強制労働で多くが亡くなったことに由来する。
「この先の未舗装路を4時間走る」。ヤクーツクから約750キロのキュベメで給油中、マキシムさんがつぶやいた。気温は既に氷点下50度。車外に出て5分で、ニット帽からはみだした前髪とまつげが真っ白になった。
針葉樹林帯を切り開いた一本道は車通りもなく、携帯電話も通じない。「世界の果てだね」と問いかけると「『世界の尻』かな。神がしりもちをついたようなくぼみにオイミャコンはある」とマキシムさん。
2000メートル級の山に囲まれた盆地に位置し、北極圏で発生した寒気団が停滞するため気温が下がるというのが定説だ。すっかり日が暮れた午後4時、オイミャコンに着いた。温度計は氷点下59度を指していた。
共同通信より写真と記事を引用