

2022年8月5日ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が赤外線の眼でとらえた車輪銀河の姿が公開された。銀河の衝突で作られた構造がこれまでより格段によく見える。ちょうこくしつ座の方向約5億光年の距離に位置する「車輪銀河」(Cartwheel galaxy、ESO 350-40)は、小さな銀河が大きな渦巻銀河に高速で衝突した結果、大きな銀河がスポークがついた車輪のような姿になった。ハッブル宇宙望遠鏡(HST)などが撮影したユニークな姿がよく知られているが、塵に隠されて見えない構造も多く、全貌は明らかになっていなかった。
そこへ今夏に観測を開始したジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が持つ赤外線の眼が向けられた。その画像からは、過去数十億年間に銀河がどのように変化したかが分かると共に、今もゆっくり変貌を遂げつつあり構造全体が大きく変化していることが改めて示された。
上の画像は、0.6μm~5μmまでの近赤外線領域を撮影する近赤外線カメラ(NIRCam)と中間赤外線観測装置(MIRI)のデータを合成して作られたもの。
NIRCamのデータは青、オレンジ、黄色の擬似色で表現されていて、青は若い星や星形成領域に相当する。外側のリングはおよそ4億4000万年間広がり続けていて、周囲のガスにぶつかることで星形成がうながされている。一方、中心部には古い星や濃い塵が分布している。
MIRIのデータは赤の擬似カラーで示されており、銀河内の塵について詳しく知るにために役立つ。炭化水素などの化学物質や、シリカを含む塵が大量に存在する領域があることがわかった。これらの領域は、内側と外側のリング構造をつなぐスポーク状の構造の骨格となっている。スポーク状の構造は2018年に公開されたHSTによる画像でもとらえられていたが、このJWSTの画像ではより顕著になっている。
アストロアーツより写真と記事を抜粋

