



2020年2月に亡くなった野村氏は生前、まだ1軍デビュー前の未来のスラッガーの元を訪れ、ある金言を送っていた。
2018年2月、当時82歳の野村氏はヤクルトの春季2軍キャンプを視察。今や注目を一身に集める22歳は、当時入団1年目。データを駆使したID野球でヤクルトをリーグ優勝4回、3度の日本一に導いた名将と緊張の初対面を果たした。
野村氏:打撃で何に一番気をつけてる?
村上:疲れが溜まると体が開く癖があるので…
野村氏:俺は足しか考えたことがない。足を正しく動かせば上半身は自然とついてくるから。初めて取材で来たんだけど(村上に対して)良かった。初めて知った。注目の選手だね。
冗談も交えながら語りかけた野村氏は、村上の手に注目した。
野村氏:わぁ大きいわ。すげぇ。(手を合わせて)大人と子どもだよ。ホームランは狙って打ってるの?
村上:いや、打ってないです。
野村氏:王ともそんな話したんだけど「狙ってない」って言うんだよ。日本で一番ホームランを打ってる王でも狙ったことないって言うんだから。自分を信じて。自分のバッティングをすれば勝手に打球は飛ぶんだから。その体で証明できる。王を凌ぐバッターになってください。
村上:はい!
日本人最多のシーズン55本塁打、通算868本塁打の世界記録を持つ王貞治氏。この大記録を超える程のバッターに…野村氏はそれほどの可能性を当時18歳の村上に感じていた。
野村氏:手が届かないなんてとんでもない!同じ人間なんだから。王の記録(55本)なんて破っちゃえ!!とりあえず俺の記録(52本)破れ。笑
52本目を放ち生還した村上は、手を合わせ天を仰いだ。「偉大な野村克也さんと本塁打数が並ぶことができて光栄です」。大先輩のエールは今も村上の背中を押しているに違いない。
TBS NEWS DIGより写真と記事を抜粋