
熱帯雨林に見られる植物の7割が樹木である。これらの樹木は垂直に3 - 5層からなる層構造をしている。最上層には飛び抜けて高い樹木がまばらにあり、これを超高木層と言う。その下に樹木の枝葉で覆われた層がある。これらを樹冠と呼び、高さ30 - 50mにも達する。樹冠が集まる上層部を林冠と呼ぶ。また、構成樹種がきわめて多いのも特徴の一つである。
太陽エネルギーを元に合成される生産量の大半が樹冠に集中するため、下層とは異なる樹冠生態系と呼ばれる特異な生態系を形成している。また、つる植物や着生植物が多いのもこのような森林の特徴である。これらの植物も樹冠生態系を構成する要素となる。樹冠の下は1 - 3層から成る中間層の林冠、最下層の林床が形成されている。
熱帯雨林では、濃い植生のために日射が遮られ、地表付近では下草が生長しにくい。 これは、人間も含めた大型動物にとっては移動に適した地形となる。 これが、何らかの理由(伐採、山火事など)によって日射量が得られるようになった場合、いわゆるジャングルと呼ばれる低木・つる植物の豊富な、中を歩きにくい植生となる。
20世紀に入って以降、熱帯雨林は伐採や農地開発による破壊(森林破壊)が進み、急速に減少・劣化してきている。 その速度は、毎秒0.5 - 0.8ヘクタールにもおよび、かつて地表の14%を覆っていたとされる熱帯雨林が現在は6%まで減少し、このペースで減少が続けば40年で地球上から消滅するものと予測されている。 それに伴って絶滅する生物種の数は、年間5万種にも上るとみられる。
森林破壊の原因は地域によって異なるが、世界資源研究所 (WRI) は、破壊の最大の脅威は木材や紙生産のために行われる商業伐採であり、鉱業開発、農地や牧草地への転換等がそれに続いていると報告している。また、森林が最終的に農地や牧草地、産業植林地などに転換される過程において、商業伐採がその最初の段階における役割を果たしているという意味でも、その影響は大きい。
国際連合食糧農業機関(FAO)の統計によれば、熱帯雨林が広がる国・地域の森林率は減少傾向にある。