青森菱友会・ねぶた師 竹浪 比呂夫



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十腰内伝説
十腰内(とこしない)とは、青森県弘前市にあるアイヌ語由来の地名の一つです。
その昔、青森県鰺ヶ沢町鳴沢に、腕の良い刀鍛冶が住んでいた。彼には器量のよい娘がいたが、跡とりがいなかった。そこで七日の間に十腰(十振)の刀を鍛えられる技量を持った者を娘婿とし、跡を継がせようとした。
ある日、鬼神太夫という若者が訪ねてきた。そして作業中絶対に鍛冶場をのぞかないことを条件に、この難題に挑んだ。ところが不思議なことに何日たっても鍛冶場からは何の音もせず、食事をとっている気配もない。心配になった刀鍛冶は、こっそりと中をのぞいてしまった。するとそこには、恐ろしい形相をした龍が口から火を吐き、刀を鍛えている姿があった。驚いた刀鍛冶は、「娘をこんな化け物にはやれぬ」と出来上がった一腰の刀を抜きとり鳴沢川に投げ捨ててしまった。
約束の日の朝、何も知らない鬼神太夫は仕上げた刀を差しだした。一腰、二腰・・・と数えていくが、十腰ない。鬼神太夫は落胆し、そのまま東へ姿を消したのであった。十腰内という地名は、この話が由来になっているという。
実際の十腰内はアイヌ語地名なので、あくまでも鬼神太夫は伝説上の話です。

