巨大な月の影の移動…写真 | スチャラカでスーダラな日々

スチャラカでスーダラな日々

故・植木等氏の御冥福に因んでkeiのスーダラな日々を紹介します。故人の映画のようにスイスイと軽妙な人生を送りたいものです☆彡

下の写真は、1997年3月9日にシベリア鉄道沿いのシルカ市郊外ソンツェバーヤ地区で撮影した荒涼たる大地に浮かぶ月の影が移動する様子です。写真をクリックすると、大きい写真が見られます。

 皆既日食は観測できる幅が非常に狭く、太陽と新月と地球が一直線に交わり、月の影が太陽を部分的に隠すことを部分日食と言います。この場合はシベリアで見られた皆既日食に伴う部分日食が日本でも観測されました。ここシベリアでは月の影が完全に太陽を隠したので皆既日食が起こりました。この三枚の写真は、大地に映った月の影の移動する様子が良く分かります。この月の影のことを天文用語で本影錐(ほんえいすい)と呼んでいます。今回は太陽高度が20度と低いために観測できました。太陽高度が高い場合も観測できますが、淡い現象なので寝ながら上を見るしか確認する方法がありません。

実際に体験すると太陽の光が月によって失われてダイヤモンドリングを迎える瞬間、黒くて大きな影が太陽方向に迫ってきます。皆既中はその影の中に大地が覆われるので、地平線付近からわずかに影から外れた太陽の光が全周に渡って夕焼けの状態で見られます。それも長くは続かず、猛スピードで月の影は地表を駆け抜けて行きます。地球の直径を約3時間かけて通過するので、どんな交通機関も月の移動するスピードにはかないません。

やがて次のダイヤモンドリングを迎える直前に月影の移動を撮り始め、三枚目でダイヤモンドリングを撮ったと同時に月の影も地表から去ります。写真から皆既中とダイヤモンドリング直後とでは、地表の明るさの違いもお分かりいただけます☆彡

ここは見るからに寒そうな風景ですが、観測地は-20℃で皆既中は-30℃まで気温が下がりました。徐々に太陽の光が失われるのと同時に地表に届く熱も奪われて気温が低下します。撮影中は失敗したくないので、素手でシャッターボタンを押していました。

黒い太陽の右下に見えるのが水星で、更に右には金星が見られます。この写真は広角レンズで撮ったのですが、もっと画角が広ければ上部にヘール・ボップ彗星が見えていました。ですが同時に撮るのはコロナの露出がオーバーになるほどシャッタースピードを伸ばさないと撮れません。せっかくの現象を15秒間も見えないファインダーで隠されたくなかったので、止む無く通常の1秒露出で撮影しました。

北半球の本影錐の移動
北半球の本影錐の移動

皆既中の本影錐の移動…南半球
南半球の本影錐の移動

上の写真は、2001年6月21日にザンビアの首都ルサカ市内のホテル敷地内で撮影した月の影が移動する様子です。写真をクリックすると、大きい写真が見られます。

シベリアの時に撮影した写真と比べてみると、同じ第三接触直前に撮影していますが、月の影の向きが逆から始まっているのにお気づきでしょうか?これは南半球で起こったために北半球で見られた影の移動とは逆になるからです。北半球では太陽の正午の位置が南にあるのに対し、南半球では太陽の正午の位置が北にあることと関係します。

黒い太陽の右下に見えるのが木星です。水星がすぐ近くで0等級の明るさで輝いていましたが、皆既中の空に比べて暗いため写真には映りませんでした。金星は地平線のそばにあり、写野に入りません。