今から十年前の1997年3月上旬にシベリアのシルカと言う都市のソンツエバーヤ地区に行ってきました。
目的は皆既日食観測です。皆既日食の話は後程することにして、まず素晴らしい自然でした。
以下、http://eclipse.star.gs/ni970309/より一部抜粋
シベリアでは3月も真冬です。このモンゴル国境に近い荒野では、日中-20℃で夜になると-30℃にまで下がりました。こう寒くなると、足元から冷えてきます。アラスカで着ていたゴアテックス入りの防寒着と手袋を着けて、エスキモーの靴を宿で履いて完全な防寒をしました。それでもあまりに寒くて太陽と反対側の方角に設置されたテントで暖を取ります。

機材は荒野に設置したまま。風が吹かないので助かりましたが、カメラを保温しようとしたらカイロ灰をくっつけたガムテープがあまりの寒さに付きません(>_<)
貰い物のカイロを付けると良く付きます。これにはジャンパーをかけて保温しました。カメラと三脚が二台ずつの固定撮影です。一台目は部分日食を、二台目は皆既日食だけを撮ります。部分日食は10分おきに撮影していたので、その間はテントで暖をとります。撮影の合間も手足が冷えるので、手はテントの暖房によくあたって足は三脚の下に発泡スチロールを敷いて荒野の寒さをシャットアウトします。あまりに寒いせいか、現地でよく飲まれているウォッカをがぶ飲みして「人間ストーブだ!」と言う方もいます。
やがて空が青く濃くなってきました。ふと温度計を見ると-30℃!あと少しで皆既日食です。心臓の鼓動がピークに達した頃、ダイヤモンドリングが輝きました。太陽の右側から光が消えていき、まるで瞳のように横に伸びる極小期型のコロナが見えます。同時にピンク色のプロミネンスも見えて、その廻りに二つの惑星が輝いています。右下は水星で、更に右下は金星です。

地平線に近い皆既日食なので、廻りだけが新月の暗い影に覆われていました。それが太陽方向に移動した瞬間、月の谷 から光が漏れてダイヤモンドリングになり皆既日食も終わりました。
太陽はゆっくりと輝きを取り戻しました。そこに一人だけカメラの前に立って元に戻りつつある太陽を眺めている方がいました。人物の影が長く伸びて非常に印象的な写真となりました。

気がついたら指に違和感があります。寒さでマニュアル撮影の予定が、勝手に自動になるのでカメラを調整する際に素手で操作していたのが原因です。故意による撮影の失敗はしたくないので、素手でシャッターを押しました。昼前に太陽は完全な姿に戻りました。