そういえば不思議な話がある。
同じことを別の他人からよく言われるのだが、私と彼女はよく似ているらしい。
ルックスも服の好みも髪型も全く違えば専攻も職業も全然違うので不思議な話だ。
それでも瞳の中に
私の中に師がいるということはこれ以上にない喜びなのかもしれない
血や肉でもDNAでもなく学問でも職業ではない名前のない言葉にできないなにかを私は彼女から引き継ぐことができたのだから
私の瞳の中にはかつての師がいる
彼女の面影がある
その事実は彼女が教職を辞めようとも、この世から消えてしまっても変わることはないだろう
彼女はすごい読書家だった。私は彼女から本をおすすめされてそれまで全く手に取らなかった本を読むようになり図書館に通うようになった。
その後の人生でも私は文学部という進路を選び文章や本に関わる仕事に就き、図書館という場所で長い人生を過ごしてきた。
私は人生のうちのかなり長い時間を映画や本を読むことや文章を書くことに費やしてきた。
そもそも私は何故そうなったのか?というルーツは彼女にあったのかもしれない。
そういえば、私の書いた文章を彼女に褒めてもらったことがある。
私は身体に先天的な病気というか欠陥というかなんというかを抱えており、そのため当時は非常に病弱で体が弱く、とある他の先生からあなたはこの学校にふさわしくない、あなたにはきっともっと合った学校があるはず、と言われた。
今までも同じようなことを先生に言われ続けてきたので、私はそのセリフにどこか慣れていた。ふーんまたこの人もそういうんだ…まぁ先生なんてそんなものよね…とどこか達観していた。
だが、彼女だけはそのことに関する意見が違っていた。
私がどうしたら
普通の生徒たちと同じように学校に通えるようになるのかを専門家に相談してくれていた。
そこから少しずつ見る目が変わっていった。
第一印象は最悪でお嬢様ぶった嫌な奴…と思っていた。
クラスで浮いており暗く誰とも会話せず一人ぼっちで学校に通っていた。
「私、有希ちゃんのことが気になるの。」
吉崎先生は私にこう語りかけてくれた。
その時私はこの人のために生きようと初めて心の中で強く誓った。
自分は優等生ではない。
気の利いたことなど何ひとつできやしないかもしれない。
それでもこの人のいうことは聞くしこの人の頼むことならなんでも力になってあげたいと心からそう思った。
私は当初は性格は内気で大人しくてひねくれていて友達が少なかった。
勉強も、嫌いで苦手だった。
だが彼女との出会いをきっかけに
少しずつ明るい社交的な性格になり、友達も増えていき、勉強への関心も高くなり、成績も上がっていった。
だが、私はある理由から彼女との親しい日々にピリオドを打つこととなる。
私は自分が悪口を言われることも
直接的な暴力を振るわれることも特に気にならなかった。私と彼女が親しいことについて何か周りから冷やかされたり何か言われても特に気にしていなかった。
だが、自分にとって大切な誰かが傷つくことは耐えることができなかった。
理由や過程は詳しくは書けない。
だが私のせいで彼女が傷ついたことはまぎれもない事実だった。
そのため私は身を引くことにした。
一切彼女と関わらない人生を歩むことにした。
だがこの判断が正しいのか間違えなのか今の私もよくわからない。
そういう理由もあってなるべく僕は
同窓会や文化祭の類には一切関わらないようにしている。
なるべく同級生が多く集まる場所には行かないようにしている。
辛い過去を思い出したくないのだ。
また、私は繊細で直感が鋭く頑固なところがある。
直感的に僕には彼女と同じ道を歩むことは合わないと思った。
結局、本と共に歩む道を選び文学部に進学しその後も文章や本と共に生きているし、今後も生きてゆくのだろう。
結局私と彼女は違う人間なのだ。
彼女は彼女の道を生き
私は私の道を進む。
それでいい。
私は彼女に顔を向けられないような生き方だけはすまいとこの胸に誓った。
【小説】きみに捧ぐ物語3