私は彼女から

常に自分に厳しくあること

謙虚さを持つこと

人は生まれながらにして平等で差別をするべきではないこと

意地悪をしてしまう側の心が捻くれていること

親しき仲にも礼儀あること

周りの人の気持ちを考えること

……数えきれないほどの色んなことを教わった

 

性別だとか

教師と生徒だという関係性だとか

そういうのを全部超越して

先生のことが好きになった


私は出来ることならば

彼女と親友として出会いたかったなと思った。

だが、意外と師と生徒という関係性も思ったよりは悪くないのかもしれない。

恋人や友達はいつか縁が終わる。

だが師弟関係というものは一生涯続いていくものだからだ。卒業後も。


自分は吉崎先生が好きだということで随分と長い間考えさせられた。

同性愛だとか異性愛だとかそんなこと飛び越えてただ吉崎梨乃という人間のことが好きだった。

 


私は卒業時に彼女に何もお礼を言えないまま卒業した。

今でもそのことに後悔している。

せめてお礼と謝罪はするべきだった。

だが、どこかで彼女の目にこの文章が読まれていればいい、とそう思う。


私は今でも23年に一度は手土産を持って母校に行くようにしている。

必ず一人で。

それが私に出来る唯一のことで罪滅ぼしにもなるかもしれない、というささやかな祈りをこめている。


私の瞳の中に映る彼女は

気高い人で常に厳しい人だった

でも厳しい中に優しさを持った女性だった



私は自分の人生の全てを文字に残そうと決めていた

10年というちょうどいい月日が流れたので僕は自分の気持ちをここに残しておこうと思う。


私の唯一の望みは彼女に教職を辞めてほしくないということだ。

学校の先生じゃなくてもいい。

家庭教師でもピアノの先生としてでもいい。

どんな形でもいいから、先生を辞めてほしくなかった。

また私みたいな子がいたら救ってあげて欲しかった。

それが唯一の僕の望みだ。

 

あの日、あなたが私という種を探してくれて傘をさしてくれて、水をくれた。その花はあなたの栄養分ですくすくと育ち、すっかり大きくなりました。

 

親愛なる吉崎梨乃さん

敬具

佐々木有希