※この日記はクレトトケイの偏見で書かれております。その点を留意のうえ、ご覧ください。
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自動投稿してるんですよー HAHAHA!!

とか笑ってたのはどこの誰でしょう。私です。書き上げたなかったんですねー えぇ。はい。お待たせしました。この話、やっと完結します。次で。たぶん。

 

私には姉のような存在がいる。ある日その姉にこんなことを言われた。

「クレトちゃんは別れるときにいつもとても辛そうな顔をしてる」って…………だって、明日だとしても当たり前に会えるかなんてわからない。明日でなくても、いつ、必要ないって言われるかわからなかったから。

 

だから『さよなら』という言葉が私は世界で一番嫌いな言葉だった。

 

カラオケから待ち合わせをした駅まで電車で戻る妖怪とマスキさん。

その間は妖怪らしく人間のばかし方について話していたのだが、正直すべった感が半端ないというか興味がないのはわかっていた。それでも話を続けたのは、あまりにもこの半日が楽しかったから記憶に残りたかったのかもしれない。

 

嫌な記憶は中々忘れないから。たとえ、この先に二度と出会うことがないとしても記憶の片隅に残りたかった。こんな妖怪がいたことを。

 

私は人間を信じられない。ネット上でつながっている関係なんだから簡単に消えることは殆どない。ないけれど、人間はとても嘘が上手いからリアルであったら、何かが終わったら用済みだと廃棄されるかもしれない。いや、されるに違いない。こんな醜い姿を見られたのだから。

 

だから、私は誰かと会ったあとはいつも考えてしまう。

『どうかこれから私の醜さを思い出すたびに幸運がその人に訪れますように。私を嫌いになってくれますように』

そんな戯言を、楽しければ楽しいほどに願ってしまう。

 

私はこうしてマスキさんについて好き勝手書かせてもらったけれども、彼との関係性の表記というものについて悩まされる。

 

友達という関係でないのは確かだ。だからといって、ネト友というにも何か違和感を感じる。私の考えているネト友という関係性とは違うから。

結局のところはこうして実際に顔を合わせたとしても、配信者とリスナー。それが一番近いのだ。本当は配信仲間というように言えれば嬉しいが、私は何の成果もあげていない。自称配信者というような存在。

 

なので結局のところは観察対象と観察者。そんな奇妙である意味なんのつながりもない、そんな関係なのではないかと思う。つまるところの、人間と妖怪なのだ。

 

別れの電車が来るまで、10分程時間があった。

 

構内の店がシャッターを閉める音を背景に「座ろっか」と私達は並んでベンチに座る。

横並びに座るのは3回目。1度目は色んなことを考えている雰囲気はありつつも、とてもニコニコしていたのを私はひっそりと正面の窓ガラスで見ていた。

2回目は数分前。一日の疲労もあるのだろうが、その顔に笑顔はなかった。まあ、私が少し考え事と不快感を与えていたせいもあるだろう。

そして、3回目。スマホを触っていた。

 

私はそのスッと鼻の高い、周りの人よりかは彫りが深くほんのりと浅黒い顔をこっそりと眺める。たぶん、整えてこの眉の形なのだろうが目茶苦茶はっきりした眉毛だよな……と。

 

信じたくはないけれど、この世界はある程度の未来が確定している。けれどそれはほんの少しの言動、歩く道を変えるだけでも変わるほど曖昧なもの。

そして導きたい未来を口にすると叶わなくなることがある。自分でもズルいことをしていると思った。自分が何かを望んではいけないのも知っている。私は誓約に従って、人間とは付き合わなければならない。

 

でも、それでも望みを、願いを抑えられなかった。私は人間が好き。人間の笑顔が好き。自然とこぼれた笑みが、笑わせようと微笑む顔が、不意に見せる笑い顔が。この人間はそんな私の好きな笑顔を持っている人だった。たしかに配信を聴けるだけでも楽しめる。

 

けれど――この人間のもっといろいろな表情が見たいと思ってしまった。

 

『もうこうしてお会いすることはないでしょうね』

 

胡散臭いおまじない。また出会える未来につなげる、そんな古いおまじない。

正直、初めから私にはこの人間の考えていることは読み取りづらかったが、移動の電車に乗る直前から油絵の具で塗りつぶされているように、様々な色が混沌と混ざり合い過ぎて本当に考えが読み取れなくなっていた。けれど、その言葉を口にしたときは少し戸惑いが見えた気がする。

 

口から出る言葉はとても現実を探るようなもので、この28歳のマスキという男の真面目さという部分がにじみ出ていた。それこそ、あの白いキツネ面のない素顔を見ている気持ちだった。

 

『どうかこの人間に祝福がありますように。この人間の望みが叶いますように。この人間が悲しい思いをしませんように』

 

自分にできることがあるのなら私は喜んで協力するだろう。けれど、きっとこの人はそれを願わないし、その方が上手くいく。私は何者でもないまま、ただただ私に見せてもらえる配信を応援するというのが一番よいのだと思った。だから心の中だけでそんなことを強く願った。信じては貰えないだろうけれど。

 

窓の外の闇が、夜の駅の静けさが、音を立てるように進む針が冷たく私を現実に引き戻していく。

別れたあとにマスキさんが呟きで《魔法は解けた》という表現をしていたが全くその通りだ。じわりじわりと人間という器が壊れるように、会話をしていても世界の色が一色一色と失われていっていた。

 

何度自分に『今日が特別で、ただの日常に戻るだけだ』と言い聞かせても、このまま私の世界は灰色ではなくただの闇に染まってしまうのでないかと恐怖に震えていたクレトである。

 

次回、最終回。人間は嫌いだ。

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