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立ってるだけで銭になる?

幾多の事故、病気を潜り抜けてどうにかこうにか今日まで生き延びてきた。

“今度、一緒に飯でも食おうぜ”

と友人が言う。

“ああ、また今度な”

と曖昧な返答をするオレ。

“友よ、食事制限をしているオレに、外食はご法度なんだぜ”

と言えりゃ何の苦労も無いのだが、なかなかそういうわけにもいかんのよねぇ。

だって、どうでもいいヤツを飯には誘わんでしょ。
それなりに親しい間柄だからこそ飯に誘ってくれるわけで、それを無下に断るのも何か友情にヒビが入りそうでねぇ。

はてさて、いったいどうやって断ったもんだか・・・。
ようやくブラックコーヒーに舌が馴染んできた。

以前は、大のカフェオレ党だったオレ。
毎日、軽く10杯以上は飲んでいた。

そんなカフェオレ大好きなオレに、天は無情にも糖尿病という厄介な病を与えたもうた。
結果、オレは大好きなカフェオレを断つことになった。

“バッカだなぁ、だったらカフェオレに砂糖を入れなきゃ良いんじゃん”と言うなかれ。

牛乳にも乳頭じゃなくて、乳糖というれっきとした糖分が含まれているのですぞ。
この乳糖が含まれている故、糖尿病患者の牛乳の摂取量は、一日当たり200mlまでと制限されているのです。

200mlなんて、オレにとっちゃカフェオレ1杯分にすらならない。

それを知ったときには、オレはマジで絶望したよ。
糖尿病になったら、コーヒーすら満足に飲めないのかってね。

そんな訳で、泣く泣くコーヒーからミルクと砂糖を抜いたのです。

しかし、飲み続けていれば案外と馴れるもんで、今じゃ砂糖入りのコーヒーなんて甘過ぎて飲めなくなっちまった。
不思議なもんだね、あれほどカフェオレが大好きだったはずなのに。
先ほど体重を計ってみたら、針はいつものごとく71kgを指していた。

なかなか70kgを切らんなぁ、と多少がっかりしつつ体重計を降りると、何故だか針は2kgを指していた。

全く、安物はこれだからいかん。

カーマホームセンターで買った安物のアナログ式体重計には、なんと誤差を修正する装置が付いていなかった。

やっぱ1,000円以下で買った品だけのことはある、チャチさが半端無いわ。などとグジグジ考えていたら、ふと気が付いた。

あれ?ということは、さっき計った71kgという数字も間違っていたんじゃないのか?

そこで再度体重計に乗ってみたが、結果は同じく71kgだった。もちろん、誤差は2kgのまま。つまり正確な体重は、71kg-2kg=69kgということになる。

アリャアリャ、知らん間に70kgを切っているじゃないか。60kg台なんて体重は、遥か昔の高校生時分しか記憶にないぞ。

これで、9/30の検査の時から4kg近く減量したことになる。たった二週間でこの結果なら、決して悪くはないんじゃなかろうか。

ただし、体重だけでなく、体力の方も落ちまくっているけどね。
鏡を見て驚いた。

そこに居たのは、これまで見たことの無い自分。

“どうしちゃったのよ、オレ?”

鏡を見た瞬間、思わず口をついて出ていた。

すっかり頬はこけ、まぶたの肉が落ちたせいか、目も少しばかり大きくなったような気がする。
もっとも肉が落ちたせいで、多少小じわが増えたのと、肌の張りが失われてしまったけどね。

体なんて、二回りも萎んじまった。
こんなにスリムになったのは、約30年ぶりのことだ。

しくし、いくら食事療法を続けているとはいえ、こんなに痩せてしまっても良いもんなのか?
24歳の頃、風疹をこじらせて入院した時だって、確かに痩せはしたものの、こんなに激痩せはしなかったというのに・・・。

医師に指示された目標体重まで、あと5kgを残すのみ。
晴れて目標体重まで落としきったとき、果たしてどんな顔付きや体格をしているのか、今からちと不安ではある。

まぁそれでも、イケメンになってモテ期到来ってわけにゃいかんわなぁ。
臓器提供意思登録カードの本登録が済んだ。

これまで誰にも語ったことは無いが、以前から臓器提供意思表示カード(コンビニ等で配布していたもの)を財布に入れて携帯していた。

今夏、アナフィラキシーショックを起こし、生涯で3度目の死の淵から何とか生還を果たした。
幸か不幸か、臓器提供意思表示カードは、日の目を見ることが無かった。

しかし、次もこれまでと同じように助かるとは限らない。
今度こそ本当に死ぬかもしれない。

どうせ死ぬのなら、無駄死にはしたくない。
出来れば、誰かの役に立つ死に方でありたい。

そう考えたから、今回本格的に日本臓器移植ネットワークに登録することにした。
より身近に死を感じたからこそ、絶対に今やるべきだと思った。

まぁ本音は、俺も人の子なんで、それなりに長生きしたいとは思っていますけどね。
そう思っていても、所詮運命なんてどう転ぶかわかりゃしませんしね。