ハーフ・アンド・ハーフ |   私的喫煙日記

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      私の日々の喫煙生活を記録しています。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
      

ただただ、懐かしい。

パイプを始めた頃、わりと何処でも売っていたので、たまに買っていた。先頃、製造がスカンジナビアン・タバコに変わって、ちょっと味がヨーロピアンになったと聞いて、吸ってみようと思いながらも、なかなか買っていなかった。

パウチを開けると、本当に懐かしい香り。そうそう、こういう匂いだった。

独特の香料で、似たものを知らない。葉組みは昔よりも色が鮮やかになったように思う。

着火してみると、昔よりも柔らかい印象。もっと辛い煙草だったように思う。

独特の香りはそのままだが、キャベンディッシュ感がかなりある。こんなに吸いやすい煙草だったか?

 この香りを誰かがセメダインと形容しているのを、どこかで聞いた。確かに、薬品のような印象がある香料だが、この感じは、細かくは違うにせよ、ある年代のアメリカン・オールド・スクールに共通するものだと思う。

例えば、以前このブログで取り上げた「エピファニー」だ。アインシュタイン博士の愛用したという「レヴェレーション」の復刻版で、コーネルディールから出ている。

日本でも「飛鳥」が単なるラタキア含有のイングリッシュ・ミクスチャーと一線を画するのは、ベースにこのアメリカン・オールドスクール的な香料があるからではないか?と考えられる。

と、いうのも、この人工的甘味料を我々の世代なら誰でも知っているからだ。顕著なのはコカ・コーラである。ドクター・ペッパー、ルートビアなど、挙げればキリがないが、要するに「得体の知れない」ものなのだ。

20世紀は80年代に入って、より自然な風味に還ろうとするテイストが注目された。

ひょっとするとそれは、パイプ界に於いては、デニッシュ・インベード(デンマークの侵略)とも関係しているかも知れない。マクバレンは、キャベンディッシュを主体として高品質なヴァージニアを水増しするのに、敢えて人工的な香料から単調なキャラメル系の甘味料に限定し、その結果として伝統的で歴史のあるラールセンなどの優れたミクスチャーと共に一時代を構築したのだ。

そう考えると、アメリカでそれまでにカルチャーの中心にあった近代的なコカ・コーラを押しのけて、ずっと安心する自然の「何か」に代わって行くのは当然の流れだ。得体の知れない謎の近代性は、排除されていったのだ。ボンド・ストリートやNo.79がすっかり影を潜めてしまったのも頷けるだろう。それ等は「陳腐」で「安価」なものとして片付けられ、無着香のヴァージニアやペリックが通好みとなり、初心者セットに「アンフォーラ」が付くようになるわけだ。

そして今、スカンジナビアンに引き継がれたハーフ・アンド・ハーフは、その特有の香りを残しつつも、ヨーロッパの伝統的なミクスチャーになった。不思議な曲折である。

もともとは、OTCブランドなどと揶揄された安価なパイプ煙草だったわけだが(OTCとはつまりOver The Counter、カウンター越しひいてはドラッグストア・ブランドという意味だ)、この「Burley and Bright」という言葉に着眼してほしい。

よく「ハーフ・アンド・ハーフ」の名前の由来として、ヴァージニアとバーレーの半々(ハーフ・アンド・ハーフ)という説明を聞くが、実際には何処にもヴァージニアとは書いていない。これは大昔からの表記だ。

では、Burley and BrightのBrightとは果たして何であるのか?明るい葉の、当然ヴァージニアだとミスリードを誘発する。しかしながら、キックの強さから、OTCブランドだった以前のハーフ・アンド・ハーフからヴァージニアを検出する事はない。

ところが、だ。

新しいハーフ・アンド・ハーフは、違う。恐らくは、私はベースのつまり着香前の段階での煙草として、疑わしいのがガーウィス・ホガースのバルクである「バーレー・アンド・ブライト」ではないかと睨んでいる。

ここではハーフ・アンド・ハーフに使われている着香の代わりにココアらしい微着香が加えられているものの、同じOTCブランドであるプリンス・アルバートを例に取ってみるとわかりやすいだろうが、ベースは紛れもなく同じだ。

いつの時点で、ハーフ・アンド・ハーフからヴァージニアが消え、バーレー葉オンリーになってしまっていたのかは不明であるが、少なくとも、最初のコンセプトとしては、確かにヴァージニアとバーレーの半々という意味だったのだろう。

そう考えると、明らかに時代は良い方向に流れた。製造会社が限定される現代に於いて、原料葉の問題は改善されたのだ。

これが、新しいハーフ・アンド・ハーフのバーレーキックが少ない理由なのだろう。