ひぐらし鳴いて、しんみり。
坂道下ればゆうげのにおい。アザミの綿毛がふわりと飛んで。伸びた影が薄暮に溶けてまどろみを誘う。金の輪で遊ぶ子ども。心地よい音色をたててまわしてる。背負ったリュックの中身が重い。履き潰した靴はすっかり色褪せて、すり減った靴底、よく滑る。夕日に輝く金の輪、触れ合う度、鈴の音のような音響かせて。坂の下の町並み、団欒の灯りをともして。
少年よ、君にその灯りが見えるか。ゆうげのにおいは届いているか。母の呼ぶ声は聞こえているか。
ひぐらし鳴き止んで、静寂。
日、没して、シグナルは赤。丸いヘッドライト一列に並んで静止。車内にはケーキ屋の包み。ショートケーキが二つ。妻と子へ。あなたのこどもはいま、ピアノを弾いている。一日の終わりに手習いをひとつ。重くなった瞼に、回らない舌。鼻だけはいやに敏感で、右手にはリングをひとつ。シグナルが青に変わって仄暗い部屋へ。閉じたカーテンはサイズが合っていない。
あなたの代わりに悲しみ抱いて、ベットに入る。鍵盤の蓋が閉じられてショートケーキの上の苺がはじける。遠く、うつつを離れて、金の輪が触れ合う音がきこえた。
坂道下ればゆうげのにおい。アザミの綿毛がふわりと飛んで。伸びた影が薄暮に溶けてまどろみを誘う。金の輪で遊ぶ子ども。心地よい音色をたててまわしてる。背負ったリュックの中身が重い。履き潰した靴はすっかり色褪せて、すり減った靴底、よく滑る。夕日に輝く金の輪、触れ合う度、鈴の音のような音響かせて。坂の下の町並み、団欒の灯りをともして。
少年よ、君にその灯りが見えるか。ゆうげのにおいは届いているか。母の呼ぶ声は聞こえているか。
ひぐらし鳴き止んで、静寂。
日、没して、シグナルは赤。丸いヘッドライト一列に並んで静止。車内にはケーキ屋の包み。ショートケーキが二つ。妻と子へ。あなたのこどもはいま、ピアノを弾いている。一日の終わりに手習いをひとつ。重くなった瞼に、回らない舌。鼻だけはいやに敏感で、右手にはリングをひとつ。シグナルが青に変わって仄暗い部屋へ。閉じたカーテンはサイズが合っていない。
あなたの代わりに悲しみ抱いて、ベットに入る。鍵盤の蓋が閉じられてショートケーキの上の苺がはじける。遠く、うつつを離れて、金の輪が触れ合う音がきこえた。