今年の6/21にも書きましたが、緒方先生の論文がBritish Journal of Hematologyというイギリスの血液学会の論文誌に掲載されました。

この論文が世界中でかなり読まれているらしく、BJHから本日Congratulations!とタイトルされたメールが来ました。

 

Prevalence of massively diluted bone marrow cell samples aspirated from patients with myelodysplastic syndromes (MDS) or suspected of MDS: A retrospective analysis of nationwide samples in Japan

 

「骨髄異形成症候群の診断に用いる骨髄塗抹標本への末梢血混入の発生率」訳すとこんな感じ?

 

日本全国からセカンド・オピニオンでいらした患者さんのお持ちになった骨髄塗抹標本(283件)のうち92件(32.5%)は、血液が大量に混入した診断に使えない検体であった。この92件の多くの例で担当医がこの問題に気づいておらず、生検もなされていなかった。

要約するとこんな内容です。

 

せっかく骨髄検査しても32.5%がうまく採れていないなんてショックですね。(実際のところ、関東は33%、東北・北海道が19%、名古屋以西が38%、九州は28%でした。4割近いってすごいですね。)

 

東京血液疾患診療所で再度骨髄検査したところ、採れていなかった人の70%が採れました。そして多くの例でMDSの分類(病型・リスク)が異なるものとなり、一部の例は良性疾患であることが判明しました。

 

これは日本からいらした方々の集計ですが、アメリカでも、イギリスでも問題視している先生方はいらっしゃいますし、他の国々でも同じようなものでしょう。日本はその中ではマシな方だと思っています。

 

そんなに簡単じゃないのですよ。骨髄検査は。

1,43歳でMDS診断→移植→46歳無再発、無病

 

移植後、無病、再発なし→完治のはずなのに働けない。

病気は治ったはずなのに、体が疲れやすく、動くのがつらい。

仕事は一旦復職できたが、結局解雇された。

なんとか次の仕事に就いたが、しかし病気は治った建前なので、いつまでも病気を口実にして怠けていると言われ、退職に追い込まれた。職安のがんサバイバーに仕事を探してくれるはずの窓口に行ったけれど、具体的な仕事の提案は2年間1件もない。

「オリンピックに出ている人もいるのにねえ」と嫌味をいわれる。

 

働けない→病気は治ったはず→障害年金はもらえない。

働けない→病気は治ったはず→生活保護も受けられない。

これからどうやって生きていけばいいのでしょうか?

 

こんなお電話を頂きました。

 

「障害年金はドクターがちゃんと書いてくれれば遡って受け取れると思うのですが」と言ったら、「その病院の看護師さんに受け取れませんよと言われた」らしいのです。ただ、血液検査の数字は確かにそれほど悪くないので、難しいかもしれません。

 

辛さを聞いてあげるしかできませんでした。


 

明日のForumで緒方先生に先日のBJHの論文のお話をしていただこうかと思っています。それから、動画を撮って、7月前には公開できるかな。
 

 

この論文はBritish Journal of Hematologyというイギリスの血液学会の論文誌で、かなり権威のある論文誌です。

Prevalence of massively diluted bone marrow cell samples aspirated from patients with myelodysplastic syndromes (MDS) or suspected of MDS: A retrospective analysis of nationwide samples in Japan (wiley.com)

 

骨髄異形成症候群の診断に用いる骨髄塗抹標本への末梢血混入

 

今はOpen Readになっています、英語ですけど。

東京血液疾患診療所の患者さんには英語が読める、書ける方が多いです。皆さん、すごいですね。でも、考えてみると、今60~80台の方々って、世界を飛び回って仕事をしていたJapanese Businessmanだった方々ですものね。勢いのあった頃の。Japan As No.1とか言っていました。

あんな元気が日本に戻ってくるといいな。

この方はMDSと診断されていましたが、

遺伝性鉄芽球貧血の可能性も考慮した方がよいのではということで、とりあえずそちらの治療をしていただきました。

 

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先日、10/17に2回目のセカンドオピニオンを受けさせていただきまして、ありがとうございました。

 

その後の経過報告となりますが、緒方先生よりアドバイスいただきました薬が功を奏し、貧血が改善いたしました。

こんなにも効果が出るものかと、主治医の先生と共に驚いております。

 

10月17日 セカンドオピニオン受診

10月26日 Hb 6.0, Reti 0.2, 輸血あり

(緒方先生のご報告を拝見し、薬を処方いただく)

10月28日 内服開始 

11月  2日 Hb 7.0, Reti 10.9, 輸血あり

11月  9日 Hb 11.3, Reti 3.6, 輸血なし

11月22日 Hb 12.7, Reti 0.9, 輸血なし

 

この度は誠にありがとうございました。しばらく、このままで

様子を見ていきたいと思います。
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良かった良かった!

嬉しいです。

 

 

いい写真ですね!

この子のお母様が素敵なメッセージを寄せて下さいました。

 

9歳のころから通っている子が、この度成人(18歳)しました!!

緒方先生のセカンドオピニオンにご両親がいらした時は、既に無菌室入りしていて、妹さん(当時5歳)をドナーにして移植をする予定だったのです。前日にstopして、無菌室から出てきた子です。

 

「あの時の太陽を半年ぶりに見た息子の眩しそうな顔が今も忘れられません。」

 

この9年間、ちゃんと薬を飲まなかったり、たまに入院して治療したり、病室に鉄アレーを持ち込んだり、試合中にぶったおれて救急車で運ばれて来たり、毎週輸血をしていた時期もありましたが、サッカーをやめることなく続けてきました。中学の時は県で2位、高校では今年ベスト16に入ったそうです(どれくらいすごいか私には分かりません。でも神奈川は強豪校が多いらしい)。

 

高校卒業後は何故かオーストラリア(コアラとカンガルーの国)の州立大学に進学するそうです。

 

オーストラリアの医療事情を考えると心配だけど、それでも突っ走るのがいいところなのでしょう‥‥。

 

「先生に出逢っていなければ、自分の人生に悲観し何事にもチャレンジできず、夢なんて馬鹿馬鹿しいと諦めていたかと思います。先生を始め、スタッフの皆様に支えられ希望をもった人生を送れていることに親子ともども感謝しております。」

 

私も自分の子供が成人した時より、嬉しいよ!

 

 

 

 

 

12月16日は第101回目のLivingWithMDSForumです。

新たな始まりということで‥‥。

 

今、緒方先生はミュンヘンに行っています。

戦争のせいでロシア上空が通れず、行きは昔懐かし北極越え、帰りはこれもまた昔懐かし北航路のアラスカ越えです。

お若い方はご存じないかもしれませんけれども‥‥。

 

この3年間Webで行なっていたMDSの会議です。
直接会えなかった期間も共同で論文を執筆したり、雑誌に寄稿したりしていましたが、やっぱり会同して食べたり飲んだり、議論したりするのとは違いますのものね。

 

中間報告によると、かなりの手ごたえがあったらしく、新しい共同研究の提案にも多くの参加が見込めそうです。

よかったよかった。

 

12月のフォーラムの際にでも少しお話いただきますね。

11月18日は第100回目のLivingWithMDSForumでした。

2013年9月7日に第1回フォーラムを始めてちょうど10年目となります。

皆様にお祝い頂き、ありがとうございました!!

嬉しかったです。

 

今までの累計の参加者は約3000人程度で、電話による相談は初回だけでほぼ5000人程度(複数回ご相談いただく方も多いので)です。(あ~、ちなみにメールによる相談は忘れがちなので、電話を頂けると助かります。留守電を入れといていただければお掛けなおししますから。)

 

さあ、これからも200回を目指して頑張りたいと思います!!

 

 

 

 

「MDSの21%が誤診」という論文があり、見てみました。

BloodAdvancesという論文誌のデジタル版?ですかね。

結構有名な先生方の論文です。

 

概略は

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いろんなところ(Locally)で診断した骨髄系腫瘍性疾患918人を中央審査(central review)で再分類したところ、誤診率は全体で 15%、MDS では 21% となっています。 

 

診断に不一致がある症例の治療率は、誤診症例の7%で不適切な治療を受けていました。

 

形態の解釈や異形成の定量化における観察者間のばらつきにより、正確な病理学的診断には課題が生じます。

診断の不一致は頻繁にみられ、これは試験関連登録や国内登録の正確性に影響を及ぼし、不適切な治療につながっている可能性がある。

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Discordant Pathologic Diagnoses of Myelodysplastic Neoplasms and Their Implications for Registries and Therapies

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当然の結果ですね。これは既に私たちが幾度となく主張していることですが、公に指摘された意義は大きいと思います。

この論文では異形成の評価についてのみ触れられていますが、それ以前に①骨髄穿刺で細胞が取れていない問題や②染色の問題など、治療以前の問題が大きすぎます!!

 

いつ治療に入るべきか、どの治療を行うべきか、治療はどの程度効いているのか、今後の治療をどうすべきか、検査は診断時のみならず、治療していく中でも重要な位置を占めています。

 

 

 

どんな意図があるのか不明ですが、

MDSはMyelodysplastic Syndromesから

    Myelodysplastic neoplasms

名称が変更になりました。

 

略称はMDSのままです。

 

日本語訳は骨髄異形成腫瘍とか骨髄異形成新生物らしい。

 

低リスクMDSは不応性貧血、高リスクMDSはくすぶり型白血病なんて時代もありましたね。

 

 

 

……あるお手紙2の続きです。

 

多分、主治医の先生が提案どおりにやって下さったようで、血液検査の数値は以下のようになっています。

21年12月ヘモグロビン5.9血小板1.7万
(赤血球は毎週、血小板は月に2~3回)というような輸血依存状態
22年3月セカンドオピニオン
22年6月ヘモグロビン9.0、血小板5.1万
23年1月ヘモグロビン10.8、血小板10.3万

 

というわけで、すっかり元気になったので、嬉しくてお手紙下さったみたいです。

 

私もとっても嬉しいです!!