![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240130/00/mddmot/b8/01/j/o1080081015395289332.jpg?caw=800)
少年のまぶたが微かに動く
数え切れない電気部材が雑多に置かれた薄暗い工場に置かれたソファーベッドの傍らにくっつく様に座り込んで微動だにしなかったマルシチが松木を呼ぶ
目をこすりながら少年は身体を起こした。
「ひっ」地べたに座っているのにソファーに座る自分より目線の高い大男を見て少年はしゃっくりのような叫び声をあげた。
気がついたか、、
松木がほんわりと優しい声色でマルシチの後ろから声を掛ける。松木とマルシチの顔を交互に見上げる少年。マルシチも優しい笑顔をしているから最初のびっくりだけで少年も落ち着いている。
腹減ったろ ラーメンくうか?
松木は手に下げた銀色のおかもちからシャンプーキャップのようなカバーをかぶったどんぶりを引き出す。同時にマルシチが片手でかたわらの丸テーブルを少年の目の前に置いた。
どんぶりをテーブルに置いてシャンプーキャップを松木が外すと黄金色のスープが透き通ったちぢれ麺のラーメンにピンクの渦巻きのナルトが浮いていた。
ゴクッ 喉を鳴らした少年が松木を見上げ、「いいの?」 もちろん! 割り箸を割って松木は少年に渡した。 ふ~っふ~っチュルチュルっ ふ~っチュルちゅるっ ちぢれ麺をすする少年の傍らに置いたコップにマルシチがヤカンから冷たい麦茶をそそいだ。
さいごのナルトをやっとつかまえて、少年は口に放り込み、割り箸を ちゅっとしゃぶった。
落ち着いたか
松木が声を掛けると少年はこれから取り調べが始まるコソドロのように首をすくめた。