その9 | もっと!! り フォームおじさん?

もっと!! り フォームおじさん?

かわいいかわいい 姫ウズラの育ち様は如何ッスか?
ちっさいちっちゃい姫ウズラの生き様は如何ッスか?
新米姫ウズラーの奮闘記は いかがっすかぁ~
と思ったんすが、いろんなモノのフォームを変えてるリフォームおじさんの育ち様でいいっすか?




ある夜常連のスナックのエアコンクリーニングを終わらせたマルシチは埼玉と東京を繋ぐ大きな鉄橋を歩いていた。
最近一人で仕事を任せられる様になったマルシチは川口から新宿までの約20キロメートルを歩いて往復していた。人気のないところは走ったり競歩でいけば片道三十分を切れた。
鉄橋の中程までくると、学生や自転車に乗ったオバサンやランニング中のおじさんらしき人の人だかりが出来ていた。人だかりの中心の欄干の上にはまるで牛若丸のように一人の男の子が立っている。半ズボンに白いハイソックスが行き交う車のライトで浮かび上がる。
一人のおじさんが、「キミ!危ないよそこから降りなさい!」
来ないで!来たらすぐ落ちるから!
オバサンが「どうしたの?!何してるの?!」
どうしたものかたじろいでいる人だかりの後ろからマルシチが覗き込んだとき、子供は ぽーんと空中に飛び出した。ああああああ!その場のほぼ全員が叫んだとき、はるか下方から トッポーン と音が聞こえた。 欄干から下を見下ろすおじさんの肩を叩き『すいません これお願いします。』と工具箱とスプレータンクを渡したマルシチはヒラリと欄干を飛び越え真っ暗の河に飛び込んでいった。ああああああ!!2度目の叫びと同時に ドッパァーン マルシチの着水音。人だかりの誰もが欄干から下を覗き込んだ。一人のおばさんがスマホで110番通報をしている。
20〜30メートルはあろうかと思う真っ暗の川面には何も見えない。欄干から乗り出す人々がみなスマホのライトを水面に向けている。一人の若者が、ああっ!!と水面を指差すと少年がうつ伏せに浮いて来た。 それを追う様にアブクの直線がは水面に引かれていく。うつ伏せの少年にアブクの線が追い付くと、少年は顔だけを水面に飛び出したまま埼玉側の河岸に向かって進み始めた。
到着したパトカーから降りてきた警官に連絡をしたおばさんが、食い下がる様に説明している。少年は河岸まであと15mほどのところまでボート並みのスピードで進んだかとおもうと、急にスピードを落とした。ここまであとから飛び込んだ大男の姿は全く見えない。東京側から来た警官が管轄が違うと埼玉県警に連絡を入れた頃、少年を肩車した大男が河岸にたどり着き、欄干の人混みから おおおおおおおおおお!! と三度目の叫び声があがった。