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大角 隼人(おおすみ はやと)は 燈九郎の後を追って電車に乗り 大分県迄来ていた
隼人が窺(うかが)って見ている…
1車両前に座る燈九郎は 夢遊病者の様に 潜在意識に操られている感だ
JRの在来線を 何度か乗り継いで行く燈九郎の姿を 一時たりとも見逃さぬ様に 細心の注意を払い 様子を見ていた隼人の左肩に 熱をおびた 感覚がのし掛かる 振り向くとそこには あの 燈九郎が倒れていた岩鞍のある山中にいた少年 愛結夢(あゆむ)だった
愛結夢「何してるの」
隼人「…貴方は!?」
愛結夢「ねえ あの子は誰なの?」
隼人「…」
愛結夢「成る程ね 君が何も言わないって事は 菊地一族に 関わる何かが あの子と関係しているって事だね?」
隼人「…厩戸(うまやど)の者には 拘わりのない事だ」
愛結夢「やっぱり そうなんだ(笑)」
愛結夢の誘導に 振り向き躊躇する隼人 電車は 1度止まり また動き出すと 愛結夢は 隼人に対して 嘲笑を浮かべながら 諭す様に 目は 前の車両を見ながら 話を続ける
愛結夢「どうでも良いけど 君の意中の人は 今の駅で降りたよ」
隼人「なんだって!?」
愛結夢に気を捕わられた刹那 燈九郎は 国東(くにさき)駅で 下車していたのだった
隼人「畜生!!」
愛結夢「心配しなくても大丈夫だって あの子の後は 僕の式神が しっかり付けてるから きっと彼は 邪馬台(やまたい)の守護者に 会いに行ったんだろう?」
隼人「何故それを!?」
愛結夢「解るさ 君のオツムの中は 恥ずかしいくらい 裸同然なんだから(笑)」
隼人「くそっ!」
2人は 次の駅で下車すると 反対車線のホームで 国東行きの電車を待っている
隼人「…貴方は何故 燈九郎を?」
愛結夢「燈九郎って云うんだ」
隼人「大国主の末裔である貴方には 関係のない事ではないんですか?」
愛結夢「心配しなくても 僕は スサノウには興味ないよ 僕の指針が あの燈九郎に向いてしまっただけ 岩鞍に倒れていた彼の心の闇が 僕に伝わってしまった それだけ」
隼人「では 我々の邪魔はしないと…」
愛結夢「うん それどころか 君に協力してあげる」
そう言うと 愛結夢は 目を閉じ 何かを感知しようとしている 間もなく 目を開けると 微笑みを浮かべながら 空に向かって 呟き出す
愛結夢「是空(ぜくう) 聞こえるか?」
愛結夢の頭の中に 是空の声が届く
是空「はい 燈九郎は今 国東の 馬頭山(ばとうさん)を登っています まるで何かに引き寄せられているみたいに 歩き続けています」
燈九郎「了解…燈九郎は 馬頭山だってさ 急いで行くと良い」
そのタイミングで 電車が滑り込んで来る
隼人が乗り込んでも愛結夢はホームに立って
微笑みを浮かべているだけだ
隼人「行かないのか?」
愛結夢「うん 急に用を思い出してね 僕は 宇佐八幡に行く事にするよ」
隼人「武内老人ですか」
愛結夢「そう云う事 君達よりも あの お爺ちゃんの方が 面白い話をしてくれそうだからね」
ホームに 笛の音と電車の汽笛が響くと 隼人と愛結夢の間を 電車のドアが遮断する 愛結夢の目には
現世と幽界の狭間の様な空間が 広がっていた 隼人を乗せた電車は 冥界へと誘う 死神の馬車に姿を変え 愛結夢の視界から消えて行く それを見送る愛結夢の表情には あの微笑みが残る
愛結夢「面白くなって来た」
愛結夢は 踵(きびす)を返し 再び 反対側のホームへ歩き出すのだった…
【妖師探偵外伝・誕生篇】 其の拾壱 完
其の拾弐へ続く…



