緒方は 苛立ちながら 菊地彦達の到着を待っていた
燈九郎を見失った事で 菊地彦から 酷い中傷を受けたからである
菊地彦「間もなく我々も そこに行く 待ってろ」
彼のその一言に なすすべなく 車の中で待機せざるを得ないからである 忙(せわ)しなく 煙草を吸う緒方は ふと 日野の事が気になり 携帯を鳴らす…
緒方「剛太の奴 何やってやがんだ!?」
携帯を止めて 車の外に出る
緒方「おい!!剛太!!」
大声で呼ぶが 返答はない そこへ車が到着する 運転席を降りた宇木奈が 後部座席のドアを開けると 憮然とした 表情の菊地彦と 困惑した阿蘇が降りて来る
菊地彦「状況は?」
緒方「…見失ったのは この辺だ 今も剛太が探してるが…」
阿蘇「宇木奈 剛太を呼んで来てくれないか」
宇木奈「はい 緒方 お前も着いて来い」
菊地彦と阿蘇は車に戻る
2人は 太極殿跡の奥へと歩いて行く…緒方が 日野の名前を呼びながら 雑木林の方へ歩いて行く 辺りは夕焼けにそまり 太極殿跡地を 幻想的に染め上げ 周りの景色を黄金色に変えている…そこへ 風が通り抜けると 雑木林の木々を揺らし ザワザワと自然の音を奏でる ふと宇木奈が 何かを感じる
緒方「どうした?」
宇木奈「嫌な臭いだ…」
風上の方に 目を向けると 夕焼けに染まり赤い水を湛えた 大きな水溜まりが 風に煽(あお)られ さざ波立っている
緒方「…あんな処に 水溜りなんかあったっけか?」
近づくにつれ 何とも云えない臭いが鼻につく…宇木奈が 水溜まりの水を 人差し指に漬け 臭いを嗅ぐ…
宇木奈の予想は当たっていた その水…いや この塊は夕焼けのせいではなく 紛れもなく 血液だ 良く見ると 内臓や骨の残骸も見える これは日野の死体なのか?突然 緒方が叫ぶ
緒方「宇木奈!!あそこ!!」
緒方が指差す方向へ目をやると 大量の血溜まりの中に プカプカと浮く日野の眼球があった 一部始終を目撃したであろう その目はもう 何を語る事もなく 沈み行く夕日に 照らされながら 虚空(こくう)を見つめていた
【妖師探偵外伝・誕生篇】其ノ 弍拾五 完
其の弍拾六に続く…





