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一方 菊地彦達が 馬頭山に辿り着いた頃 愛結夢は 宇佐八幡宮で 燈九郎と伴に 甲賀三郎(こうがさぶろう)の人穴に入り 出雲大社で姿を消した 武内老人を探していた…
愛結夢「爺ちゃん見つけた」
武内「これはこれは 厩戸様 お久しゅうございます 比叡(ひえい)から何時 降りて見えましたのですかな?」
愛結夢「燈九郎は国東六郷山施餓鬼寺(くにさきろくごうさんせがきじ)にいるよ」
武内「何と手回しの良い」
愛結夢「一緒に行く?」
武内「宜しいですとも 道中 お話を聞かせて下さい その前に 黒男神社(くろおじんじゃ)に参拝させて頂いても宜しいかな?」
愛結夢「成る程ね 爺ちゃんには 縁深い社(やしろ)だもんね」
武内「タケシノウチノクスネを奉(まつ)った 社ですじゃ これは不思議な人物で 4世紀から5世紀にかけて 6人の天皇に仕え 300年も生きたと云われております 私の考えでは 3世紀の卑弥呼にも仕えていたのではないかと… 魏志倭人伝にある 卑弥呼の元に出入りしていた 雄一の男と言うのが それではないかと その男の役目は 審神者(さにわ)と云われる 神の言葉を伝える者…言わば 神と人との仲介者ではないかと考えておりますのじゃ…」
愛結夢「ふーん でも それだけじゃないんじゃない? 例えば…景行(けいこう)天皇 例えば…蘇我馬子(そがのうまこ)例えば…安倍晴明(あべのせいめい)例えば…」
武内「(笑)厩戸様には 敵(かな)いませんな…そう言う私も 及ばずながら 神と人との仲介者になりたいと 黒男神社にあやかりに参った訳でして」
愛結夢「殊勝な心掛けだね …それはそうと爺ちゃんは 菊地一族には冷たい様だけど?彼等が神に近付こうとしているのを 邪魔するのは何故?」
武内「…もう 手遅れですからなぁ 菊地彦が どんなに 足掻(あが)こうと 既にスサノオは燈九郎と共に動き出そうと
しておりますから」
愛結夢「まあ そんな事だろうとは思ったよ あんまり可哀想だったんで 菊地彦には ヤマタイの秘法の在処(ありか)を教えてあげたけどね」
武内「何ですと!?」
愛結夢「いけなかった?」
武内「あれは!…あの泉は」
愛結夢「不老不死の禁断法でしょ それくらい良いじゃない」
武内「あの秘法に菊地彦が興味を持つとは思いませぬが もし泉に手を着ける事があれば 厄介な事になります 急ぎ 六郷山に向かわなければ」
愛結夢「爺ちゃんが そんなに慌てるなんて以外だね(笑) よっぽど楽しい事が起こるらしいや」
武内「施餓鬼寺にいる 燈九郎に危険が及ぶかも知れませんぞ」
愛結夢「…そりゃ大変だ」
足早やに 宇佐八幡を後にする武内の後を 軽やかに追う愛結夢の心は これから起こるであろう禍(わざわい)に 好奇心を駆り立てられていた…
【妖師探偵外伝・誕生篇】其ノ 拾伍 完
其ノ 拾六に続く…




