地彦が 施餓鬼寺の参道に辿り着くと 背後から 声を掛けられる
愛結夢「また会ったね」
菊地彦が振り向くと 愛結夢と武内がいた
菊地彦「全く…とんだ処で 邪魔者と再会だな」
武内「御挨拶だな 我々は お前を心配して来てやったんだぞ」
菊地彦「それはそれは(笑) あんた達の目的くらい 承知しているんだが まさか心配してくれていたとはな(笑)」
愛結夢「僕は別に心配なんてしてないさ」
武内「菊地彦 愛結夢様から聞いたぞ ヤマタイの墓に 入ったのか?」
菊地彦「ああ」
武内「まさか あの泉に手を付けなんだろうな?」
菊地彦「泉?」
愛結夢「不老不死の泉の事さ」
菊地彦「そんな物に 俺は興味ないが…そろそろ美羽が 見付け出す頃だろうな」
武内「菊地彦!やはり知っていたのか!? ふん!!不老不死が聞いて呆れるわ あれは絶対に 侵してはならぬ秘法なのだ!愛結夢様 私と来て頂けませぬか」
愛結夢「いいよ」
武内と愛結夢が 参道を降りようとした その時 施餓鬼から 大きな爆発音と共に 火柱が上がる
菊地彦「なんだあれは!?」
愛結夢「餓鬼共が顕現(けんげん)したみたいだね ますます 面白くなって来た」
そこへ 遅れてやって来た 隼人がやって来る
隼人「菊地彦様ー!」
菊地彦「どうした隼人!?」
隼人「それが…」
愛結夢「ごめんね 君には 出来るだけ ゆっくり辿り着いて欲しかったから 是空(ぜくう)に結界を張らせて 道に迷わせたんだ」
菊地彦「とにかく 寺へ急ぐぞ 隼人!着いて来い!!」
愛結夢「やれやれ 今さら行っても無駄なのにね(笑)」
武内「愛結夢様 我々も急ぎしょう」
愛結夢「はーい」
武内と愛結夢は 菊地彦と反対に参道を降りて行った…
その頃 ヤマタイの中を調べていた 美羽は 装飾古墳(そうしょくこふん)の紋様を注意深く探っていた すると 紋様の中に縦横にはしる 四角い筋を見つけた
美羽「これだわ…」
美羽は 筋のある壁に向かって 押してみる…すると 美羽の力でも 壁の奥に向かって容易に動き出すと 隠し部屋が現れた 菊地彦から預かった ジッポーのライターの炎が揺れる…隠し部屋の中に入ると 天井(てんじょう)に碑文(ひもん)の様な文字が見える
美羽「古代文字だわ…秘不老不死得者泉浸…!やはり 不老不死の秘法があるんだわ!! …泉…泉は何処!?」
嬉々とした表情を浮かべながら 隠し部屋の更に奥へと 入って行くと 突き当たりの壁の下に 美羽が かろうじて入れるくらいの 穴が空いてる 美羽は穴に頭を突っ込み じたばたと 少しずつ穴を抜けていく…中に入ると ヒンヤリとした空気が 美羽の身体を撫でる 水の気配を感じた…
美羽「この泉に浸かれば 永遠に生きられる…若くて 美しいままの…私が…」
美羽はライターを 泉の淵(ふち)に置くと 衣服を脱いで 黒く浮かび上がった水の中へと入って行き ゆっくりと沈み込み 大きく息を吸うと 頭迄浸かる…黒い波紋が 泉の中央から 淵へと広がって行く 一瞬の静寂(せいじゃく)から いきなり水しぶきを上げならがら 夜叉(やしゃ)の形相(きょうそう)で現れた美羽は 泉の淵に立つ
美羽「菊地彦にばかり 当主ヅラ させておくものか…邪馬台国(やまたいこく)の遺産は 大神(おおが)家が…いえ!! この私が!」
美羽が 言い終えぬ内に 彼女の身体に変化が起こる 身体中に伸縮が現れ その痛みに 思わず声が出る
美羽「グエェェェー!!」
美羽は立っている事が出来ず その場で のたうちまわっている 身体を捻(ひね)る度 ボコボコと皮膚の下にある 肉や内臓が暴れている…次第に 美羽の身体は小さくなって行き 皮膚の色は どす黒く変色していく… 美羽の断末魔が 部屋中に響き渡る
美羽「グワーァァァァ!!」
そこへ 武内と愛結夢が到着する 異様な悲鳴を聞いた 武内は狼狽している
武内「…遅かったか…」
愛結夢「その様だね」
武内「その昔…邪馬台国が滅んだ時 卑弥呼と その側近達は その死から逃れる為 秘法を使った…禁じられた秘法を…」
愛結夢「その卑弥呼の末裔が また同じ事をしただけじゃない 結局 歴史は繰り返すんだね(笑)」
武内が 庚申塔(こうしんとう)の馬頭観音(ばとうかんのん)の目に指を入れると 美羽が入って行った 入り口の扉が 音を立てながら開く…そこから小さな生き物が 顔をだした…白髪が疎ら(まばら)に残り 黒褐色の身体は皺(しわ)だらけで 顔の真ん中にある筈の鼻にあたる箇所には 穴が2つ空いてるだけ…目には 黒目がなく 口は耳の辺りまで裂けて キィキィと 不気味な声を上げている
武内「私が知っていた女ですじゃ…いや 女だったものです…人間の身体のままでは 不老不死など 不可能 肉体組織そのものを 細胞から変えてしまわなければなりません…しかし そうなれば もう 人間ではない…御覧なさい もやは人間の心も理性も 思考能力も無くしてしまいましたわい…卑弥呼達も この様な姿に変わり果て 千数百年もの間 施餓鬼寺に 閉じ込められておりました」
愛結夢「なるほどね」
突如 餓鬼に成り果てた 美羽が 襲い掛かろうとした それに反応して 愛結夢が素早く印(いん)を結び両手の指を向け 餓鬼を弾き飛ばす 餓鬼は叢(くさむら)に落下すると直ぐに ガサガサと逃げて行った
愛結夢「何処へ行くんだろうね?」
武内「おそらく燈九郎の元へ行ったのでしょう」
愛結夢「それじゃ 施餓鬼寺に戻ってみる?」
武内「はい…おそらく 菊地彦達も まだ 居る事でしょうからな」
武内は ヤマタイの扉を閉じ 愛結夢と共に 施餓鬼寺へと急ぐのだった…
【妖師探偵外伝・誕生篇】其ノ拾八 完
其ノ拾九に続く…




