巾木一両の書き垂れ劇場 -3ページ目

巾木一両の書き垂れ劇場

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一方 愛結夢は 一旦 武内と別れ 比叡山 延暦寺へと帰っていた ここは天台宗の牙城 愛結夢が日常を過ごしていた場所である そこには 愛結夢が雄一 信頼している高僧 埓劑(れつざい)がいる 愛結夢の持つ 陰陽(おんみょう)が開眼すると 他の僧は 彼を恐れ 嫌って 殆どの 接触を絶つ中 埓劑だけは 愛結夢の傍(かたわ)らで 道を説いてくれた… 愛結夢は埓劑に これまでの経緯と 燈九郎の存在を話した


埓劑「成る程…羅嗷(らごう)が現れるかも 知れないと…」


愛結夢「ええ 燈九郎が倒れていた 岩座(いわくら)には 【参(しん)】と【羅嗷】の文字が 梵字(ぼんじ)で書いてあった それが 気に掛かって 施餓鬼寺(せがきじ)に行く前に 宇佐神宮(うさじんぐう)の 奥宮(おくのみや)…あそこにも 御神体と云われる 3つの巨石があるのを 思い出して 立ち寄ったのが 裏目に出ちゃって…」


埓劑「私は アートマンが出現するのは まだまだ 先の事かと 思っておりましたが…」


愛結夢「弥勒菩薩の事?」

…仏伝(ぶっでん)によれば 釈尊(しゃくそん)が誕生した時 全世界を支配する 転輪聖王(てんりんじょうおう)になるか 人々を救う 仏陀(ぶっだ)になるか どちらかであろうと 予言された その後の物語は 周知の通りだが…


埓劑「その燈九郎と仰る方が 仏陀の道を選べばよいが…」


愛結夢「先ずは 餓鬼調伏(がきちょうふく)が 先だよ 馬頭観音は ここに運んでくれた?」


埓劑「千百年振りに 施餓鬼陀羅尼(せがきだらに)を 使う事になりますな…」


愛結夢「それには餓鬼共の居場所を知る必要があるね」


埓劑「判りました 私に お任せを 只今 護摩檀を 用意させますので餓鬼共にの所在は直ぐに判るでしょう」


埓劑は 奥の祈祷間(きとうのま)へと 消える
愛結夢は目を閉じ 思念を送る


愛結夢「是空 聞こえるかい」


すると 愛結夢の頭の中に 是空の声が届く


是空「はい」


愛結夢「そっちは どうなってる?」


是空「菊地彦は 燈九郎を追って 飛鳥に来ています 隼人は菊地彦と別れ 武内老人を尾行の最中です」


愛結夢「判った 僕は今から 先回りして 京都へ行く 燈九郎に憑(つ)いている餓鬼共を片付けに掛かる 君は 武内の じいちゃんに 焼津(やいず)で 会おうねって 伝言を頼む」


是空「御意 して その後は」


愛結夢「武内のじいちゃんに まとわりついてる隼人に 菊地一族に危険が迫ってるって伝えたら 一緒に行ってくれる? 菊地彦に もしもの時が あったら 守ってあげて」


是空「然(しか)るべく…」

是空との交信が終わると 徐(おもむろ)に立ち上がり 氷の微笑みを浮かべながら 呟いた


愛結夢「菊地彦 君の死に場所は ソコじゃないんだなぁ… 燈九郎の 完全覚醒には 君の命が必要だけど 今はまだ その菊地の汚れた魂を 君に預けておくよ(笑)」


愛結夢は 比叡山を後にした…


【妖師探偵外伝・誕生篇】 其ノ 弍拾壱 完

其の弍拾弍に 続く…


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翌日 大阪のホテルで眠っていた 菊地彦は 朝のニュースで飛び起きた 大阪府羽曳野(はびきの)市にある 白鳥陵(しらとりりょう)が 一夜の内に破壊されたと キャスターが告げている 次に映像が映し出されると 掘りを擁(よう)し木々が生え繁った 前方後円墳(ぜんぽうこうえんふん)の中央が 爆弾でも落とされたかの様に 抉(えぐ)られ大きな穴が空いてた 空撮の映像に載せて これだけの破壊工作が あったにも関わらず 近隣の住人は 誰も気が付かなかったと アナウンスされている…と 部屋の電話が けたたましく鳴る ニュースから 目を離さす 受話器を取ると 慌てた口調の 隼人(はやと)からだった


隼人「ニュースを御覧になっていますか!?」


菊地彦「ああ…また先を越されたようだな」


隼人「私の部下が見張っていた筈なのですが 全く 気付かなかったと…」


会話の矢先 今度は携帯が鳴る


菊地彦「一寸待て」


携帯の発信者の名前を見る… 菊地一族の1つ 山鹿(やまが)家の 宇木南(うきな)からだ


菊地彦「どうした」


宇木南「燈九郎を見つけました」


菊地彦「何処だ!?」


宇木南「竹の内街道を東へ向かう様です」


菊地彦「判った そのまま 後を着けろ 連絡を 怠るな」


携帯を切ると ホテルの電話口で待っている 隼人に 言う


菊地彦「宇木南からだ 燈九郎は おそらく 奈良に行く筈だ」


隼人「餓鬼達は どうしたのでしょう」


菊地彦「ふん この白鳥陵も あの餓鬼共の仕業だ 多分 大分の港からフェリーの後を着いて行ったんだろう 奴等は死なないのだからな」

隼人「では 我々も後を」


菊地彦「直ぐに支度して 車で向かうぞ」


隼人「はい」


菊地彦「お前は飛鳥(あすか)方面へ僕は三輪山(みわさん)へ廻る」


隼人「畏まりました」

受話器を置くと 身仕度を整え 部屋の出口に向いながら 菊地彦は呟いた


菊地彦「今度こそ 逃がすものか いつまでも 好きにはさせておかない…そうでなければ 僕の 今までの苦労が 水の泡だ…」


そう吐き捨てながら 菊地彦はホテルの部屋を出て行った…


【妖師探偵外伝・誕生篇】其ノ弐拾 完

其ノ 弍拾壱に続く…
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菊地彦と隼人は 施餓鬼寺の境内に立っていた そこで見たのもは… 炎と煙に包まれた本堂だった 燃え盛る建物の前に 血まみれの男が 倒れている 寺男の漢麿(からまろ)だ 隼人が漢麿に駆け寄り 抱き起こす 既に虫の息だ


隼人「どうした!?何があった!?」


漢麿「…餓鬼」


隼人「しっかりしろ!!餓鬼がどうした」


菊地彦「燈九郎はどうした」


漢麿「…餓鬼と…一緒…に…」


隼人「…死にました」


菊地彦「燈九郎は何処へ行ったんだ」


隼人「おそらく 次の聖痕(せいこん)を承(う)けに…」


そこへ 武内と愛結夢(あゆむ)が 到着する


武内「燈九郎は…燈九郎は無事か!?」


愛結夢「一足遅かった様だね」


いきなり 菊地彦が武内に詰め寄り 胸ぐらをつかむ


菊地彦「前から 聞きたいと思っていた 一体貴様は 何者なんだ!?」


菊地彦が 掴(つか)んでいた 両腕を 武内は 老人とは思えない 物凄い力で捻(ひね)り上げると 菊地彦の耳元で呟いた


武内「よく聞いておけ 菊地彦 いいか お前は お前の好きな様にやってみろ だがな ブラフマンは… 暗黒神スサノオは お前等が いいように出来るような そんな ちっぽけな存在ではない そこに 近付けるのは あの 燈九郎だけだ それだけは 変わらぬ事だと 心に刻み込んでおけ」


そう言い終えると 掴んでいた 菊地彦の腕を 解き放した その刹那 一瞬の風が起こり 愛結夢の背後に 式神である 是空(ぜくう)が現れる


是空「燈九郎が 我等の結界を越えました」


愛結夢「そう」


是空「数体の餓鬼共も同行した模様 奴等は 東へ向かいました」


愛結夢「菊地彦 燈九郎は 東へ行ったみたいだよ 多分次は 白鳥陵(しらとりりょう)に向かうんじゃないかな」


菊地彦「大阪か…隼人!菊地一族を大阪に集めろ!行くぞ!!じいさん…この借りは必ず返すぞ」


そう吐き捨てると
隼人と共に施餓鬼寺を降りて行った…


愛結夢「じいちゃん 僕達は 飛鳥(あすか)に行こうよ」


武内「…何もかも お見通しで御座いますな」


愛結夢「おじいちゃんの持っている 【時の卵】を見せてくれるかな?」


武内「貴方と云う 御方は…敵いませんなぁ(笑)」


愛結夢「是空 お前は 菊地彦達の後を追ってくれるかい?何かあったら 報告しておくれ」


是空「承知!」


是空は風の中に消える


武内「1つ 伺っても?」


愛結夢「なあに?」


武内「貴方様は 何故 今回の事に 興味を持たれなさったのですかな?」


愛結夢「僕の興味は 燈九郎だけさ 彼がアートマンとして生まれて来たのは 何も 聖痕を承ける為だけじゃないって事 僕の勘が 当たっていたら 燈九郎は もう1つの使命をおびて 現れた…」


武内「もう1つの使命?」


愛結夢「その内 解るよ」


武内「貴方様が そう仰(おっしゃ)ると言う事は…これはまた 楽しみが 増えましたな」


愛結夢「そう云う事(笑)」

炎上する 施餓鬼寺を背に 愛結夢達も 寺を後にする 眼下には やっと麓(ふもと)から 登ってくる 消防車のサイレンが 遠くから響いていた…


【妖師探偵外伝・誕生篇】其ノ拾九 完

其ノ 弐拾に続く…