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一方 愛結夢は 一旦 武内と別れ 比叡山 延暦寺へと帰っていた ここは天台宗の牙城 愛結夢が日常を過ごしていた場所である そこには 愛結夢が雄一 信頼している高僧 埓劑(れつざい)がいる 愛結夢の持つ 陰陽(おんみょう)が開眼すると 他の僧は 彼を恐れ 嫌って 殆どの 接触を絶つ中 埓劑だけは 愛結夢の傍(かたわ)らで 道を説いてくれた… 愛結夢は埓劑に これまでの経緯と 燈九郎の存在を話した
埓劑「成る程…羅嗷(らごう)が現れるかも 知れないと…」
愛結夢「ええ 燈九郎が倒れていた 岩座(いわくら)には 【参(しん)】と【羅嗷】の文字が 梵字(ぼんじ)で書いてあった それが 気に掛かって 施餓鬼寺(せがきじ)に行く前に 宇佐神宮(うさじんぐう)の 奥宮(おくのみや)…あそこにも 御神体と云われる 3つの巨石があるのを 思い出して 立ち寄ったのが 裏目に出ちゃって…」
埓劑「私は アートマンが出現するのは まだまだ 先の事かと 思っておりましたが…」
愛結夢「弥勒菩薩の事?」
…仏伝(ぶっでん)によれば 釈尊(しゃくそん)が誕生した時 全世界を支配する 転輪聖王(てんりんじょうおう)になるか 人々を救う 仏陀(ぶっだ)になるか どちらかであろうと 予言された その後の物語は 周知の通りだが…
埓劑「その燈九郎と仰る方が 仏陀の道を選べばよいが…」
愛結夢「先ずは 餓鬼調伏(がきちょうふく)が 先だよ 馬頭観音は ここに運んでくれた?」
埓劑「千百年振りに 施餓鬼陀羅尼(せがきだらに)を 使う事になりますな…」
愛結夢「それには餓鬼共の居場所を知る必要があるね」
埓劑「判りました 私に お任せを 只今 護摩檀を 用意させますので餓鬼共にの所在は直ぐに判るでしょう」
埓劑は 奥の祈祷間(きとうのま)へと 消える
愛結夢は目を閉じ 思念を送る
愛結夢「是空 聞こえるかい」
すると 愛結夢の頭の中に 是空の声が届く
是空「はい」
愛結夢「そっちは どうなってる?」
是空「菊地彦は 燈九郎を追って 飛鳥に来ています 隼人は菊地彦と別れ 武内老人を尾行の最中です」
愛結夢「判った 僕は今から 先回りして 京都へ行く 燈九郎に憑(つ)いている餓鬼共を片付けに掛かる 君は 武内の じいちゃんに 焼津(やいず)で 会おうねって 伝言を頼む」
是空「御意 して その後は」
愛結夢「武内のじいちゃんに まとわりついてる隼人に 菊地一族に危険が迫ってるって伝えたら 一緒に行ってくれる? 菊地彦に もしもの時が あったら 守ってあげて」
是空「然(しか)るべく…」
是空との交信が終わると 徐(おもむろ)に立ち上がり 氷の微笑みを浮かべながら 呟いた
愛結夢「菊地彦 君の死に場所は ソコじゃないんだなぁ… 燈九郎の 完全覚醒には 君の命が必要だけど 今はまだ その菊地の汚れた魂を 君に預けておくよ(笑)」
愛結夢は 比叡山を後にした…
【妖師探偵外伝・誕生篇】 其ノ 弍拾壱 完
其の弍拾弍に 続く…



