◆古代日本語に「みづち」(または「みつち」)というのがあります。伝説の想像上の生き物ですが、これをモチーフに環境オペラを制作した脚本家丹治富美子さんにインタビューをしました。(2008/02/09at国立赤城青少年交流の家)◆実はこの物語、近代サイエンスとはほど遠い原始的なものと思いきや、読み返すほどに現代社会に当てはまるのです。脚本家が狙ったというよりも、その架空の生き物が古(いにしえ)から存在していることに不思議になりますし、なぜゆえか現代にフィットしてしまうのです。
◆そのインタビューから感じたことを備忘録として載せておきたいと思います。
* 画像は2009年にお茶の水女子大学で上演されたポスター
(ここからダイジェスト)~~~~~~
未来につなぐ 地球の魂
~「みづち」からのメッセージ~
丹治富美子氏(脚本家・詩人)
自然との共生をテーマにした創作オペラ「みづち」を通して、私たち日本人の自然を感じるチカラ、自然との関わり方、未来へ残していくものについて考え、環境教育のこれからを見つめます。
「みづち」に関する情報
〈オペラ「みづち」あらすじ〉
昔々、日照りに悩む農村の青年が、水の神「みづち」が捕らえられたために雨が降らなくなったと知り、村を救うため「みづち」を助けに向かいます―。国民文化祭・ぐんま2001初演。「群馬県民オペラ」として、県民参加の下、公演された。脚本:丹治富美子 作曲:白樫栄子
「みづち」とは?
想像上の生き物で、頭に角があり、4つの首でヘビのような姿をしており、本来は人間に悪さをするものとされています。このオペラでは「水の神様」として表現しました。
「み」「つ」「ち」の意味は?
み=水、づ→つ=の(助詞)、ち=精霊、「みづち」=「水の精霊」なのです。
脚本の構想は?
3つのテーマ「宇宙」「自然」「愛」これらを“旅”という行動で場面をつないでいきます。
問いかけるメッセージは?
水の大切さを伝えたい。生命の起源は、海(水)。環境のこと、温暖化のこと、様々な地球の異変に気づいてもらいたい…。このオペラを書き始めた1999年頃は、世間はそれほど危機を感じておらず、最近になってようやく…。
水のイメージは?
雨や雪解け水が地下深くに浸透し、長い年月をかけて再び地上に湧き出てくると思うとき…地球が生み出した「地球の魂の雫」と言えるのではないでしょうか。
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◆さて、以下にはさらに詳しいあらすじを載せていますが、こういった架空の生き物がどうして昔から必要だったかということや、なぜ語り継がれてきたのかという疑問が湧いてきます。
◆たとえば、水不足で精神的にも病んでしまいそうな状況に陥ったとき、「水神様の祟り」という第三者を設け、地域コミュニティの中に不協和音が生まれないために創ったシステムなのか…とも想像してしまいますが、もっとその根っこの部分の自然現象を検証してみると、“みづち”とは地球のダイナニズムな幾つかのシステムと重なり合ってくるのではないかと、ふと感じてしまいました。
◆もっとも、様々な古代文明を思い返せば、電子計算装置もない時代に、なぜこのようなモノができあがったのかと解明できないことがたくさんありますよね。そういう背景の中で、受け継がなくてはいけないモノ・コトの象徴としてあるのだとすると、やはり多角的な視点で観る必要もあるのかもしれません。
◆みなさんはこの物語を読んで何かを感じ取ることはありますか!?
では、前振りはここまで…(つづく)
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ここからは、あらすじ(“お茶の水女子大学音楽科オペラ”から転載)
―― 第一幕 ――
昔々のこと。日照りが続き、村では田植えもできない日々が続いていた。困り果てた村人たちは話し合い、村人の1人であるいねの提案により、水乞の祭りをすることになる。準備のために村人たちは帰って行った。
小太郎も同じように帰ろうとするが、どこからともなく現れた老人に止められる。その老人は北にある黒姫山を示す。彼は雲を呼び、雨を降らせることができるというみづちの話をした。
はじめは迷信だと相手にしなかった小太郎も、老人に説得されてみづちを訪ねることを決意する。姉の八重や村長、村人たちに見送られ、小太郎は住み慣れた村を旅立った。
―― 第二幕 ――
小太郎は険しい山を登っていた。竹林を抜け、疲れて休憩していた彼はふと小鳥のさえずりに耳を傾ける。すっかり道に迷ってしまった小太郎は、道案内してくれるという小鳥たちについていくことにしたのだが…
小太郎がたどり着いた不思議な空間では、黒姫と名乗る女性が待っていた。みづちの手助けをしているという彼女は、みづちが人々を見守る神のような存在だと説明する。そしてそのみづちは、押黒族という部族に捕らわれているというのである。
小太郎は彼女に従って重藤という人物を訪ねることにした。すぐにも出発するという小太郎と黒姫は別れの盃を交わす。
―― 第三幕 ――
重藤の館。夕月姫の部屋。彼女は空を見上げながら美しい大地と母親とに思いを馳せる。夕月姫の乳母である志斐は姫の髪を梳きながら、いつか離れていくであろう彼女を想う。夕月姫が織り上げた水藻の衣はとても美しいものであった。
みづちが纏うであろう衣を前にして、「想う人の衣に髪を織り込むと無事に戦から戻る」という言い伝えの話をする彼女を見、志斐はまさか衣に髪を織り込んだのではないかと危ぶむが、夕月姫はきっぱりと否定する。
しかし小太郎のために自分の髪を織り込めたらどんなに良いだろうと嘆く。夕月姫は小太郎に恋をしていた。合戦の日。いざ出発しようとした小太郎たちの前に、戦装束に身を包んだ夕月姫が現れる。
夕月姫を含め戦場へ出ていく小太郎たち。みづちの捕らわれている岩場へたどり着いてみると、そこにいたのは小太郎が村で会った不思議な老人だった。あの老人こそがみづちであったのだ。夕月姫が織った水藻の衣を纏うと、みづちはたちまち命を吹き返し本来の姿を取り戻す。
人間たちに二度と同じ過ちを犯さないようにと言い置くと、彼は再び沼の底へと沈んでいった。
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