一夜にして今までの苦労がなくなれば、人はどんなことを思うのだろうか。
勿論、少しのことが消えたなら取り戻すことは簡単だ。しかし、随分と長い間の苦労が全て消えたならば、大抵の人ならこう思うはず。
「オワタ」
そして、ある世界に連れてこられた一人の男も、そう思ったのだった。
第二話
荒れ果てた大地が連なっている。空がどんよりとしていて、周囲の雰囲気を一層悪くしている。
そんな地に相応しい、世界の終わりを見たような顔で歩く、一人の男がいた。
彼の名前はスティーブ。旅人だ。
民衆が考える旅人のイメージといえば、何事にも挫けずに、クリエイティブに物事を捉えられる……といった感じだろう。しかし、そんな旅人はただの妄想の中で生まれた産物で、実際の旅人は大体が普通の一般人と何ら変わらないのだ。
スティーブはといえば、一向に口を開く気配はない。ただ、薄暗い大地を、一歩一歩、力なく歩くのみだ。
彼は別の世界で死んだ。
原因としては、モンスターとの相打ち、というかどう考えても自殺。これだけで、彼の性格はだいたい理解できてくる。
しかも、さらに彼は選択を誤る。
今まで見てきた世界から、別の世界へと渡ったのだ。
死ぬと、強烈な痛みの中で、二択を迫られる。
『この世界を出る』か『生き返る』。実にさっぱりとした選択だ。
彼は、ただ『生き返る』事を望んだ。
そして、爆死という最悪のシチュエーションの中で、脳内での選択問題を迫られた彼は。
頭が混乱し、どちらかわからないものを選択してしまったのだった……。
こういうことは、よくあることで、彼も住居などを持っていたわけではないから別にそこまで悩む必要はない。新しい世界をまた、巡ればいいのだから。
しかし、彼の悪夢はそれだけでは終わらない。
リスポーンして、彼が初めて目にしたものは、大部分が損傷した処理塔だった。
唖然。ちょうどこの言葉がぴったりだ。
彼はそれを見てから数十分はピクリとも動かなかった。
そして、一時間ほど時間が立つと、ピクリと体を動かし、
「え゛!?!?!?」
と、まさに「え」に濁点を付けたような声で驚いた。
その後、やはり数十分間は驚いて目を見開いた状態で、固まってしまうのだった。
驚きを隠せなくなった彼が出た行動とは、この漆黒と闇で覆われた、光のない大地をただ、歩き回ることだった。
空腹から来るストレスがどんどん体に蓄積されてゆく。
体が痛い。心も痛い。そんな心境でほぼ平らな大地を踏む。
少しすると、遠くの、闇の向こうに光が見えてきた。小さな小さな、光。
それは、スティーブの心への大きな灯火となり、空腹で腹が捩れそうなこともお構いなしに、気持ちだけ遠くの光へと突っ走っていた。
○
光りの下へついた時には、漆黒の大地は真っ暗になっていた。何も見えない。本当の闇だ。
そして、スティーブは悟った。
(もう夜かよ)
この世界にも夜が訪れたのだ。
「はぁ……俺なんであんなバカなことしたんだ……」
遠い世界で起きた出来事が、一足遅い走馬灯のように脳内再生される。あの世界に初めて降り立った時の初々しさが妙にむず痒い。
しかし、今回この世界に降り立った時に感じたのは、他の何ものでもない『絶望』の二文字。
光の正体を見ながら、重く後悔した。
光の正体だが、そこは町、だった。
「ほー、自然生成でここまでの輝きを創り出すとは」
真っ暗闇を歩いていたせいか、目の前の、松明とグロウストーンの明かりで目が痛む。その痛みは心地よい。
光のおかげで、周りの建造物もはっきりと確認できるのがこれまたいい。
建造物の方だが、高さ百メートルを超えるビルから、小さな可愛らしい家まで、大小様々な建造物で、町は溢れかえっていた。
「お、おぉ…………」
驚くことしかできない。目の前の、広大な景色は、彼が初めて見る景色。
そう思うと、新しい世界でも何とかやっていけそうな気がしなくもない。
「もう……昔のことは忘れるかな……」
町を見て安心しきったスティーブの体は、突然疲労を呼び覚ます。
体力が大幅に失われていることが良く分かる。空腹と眠気が、まるで前の世界で殺られそうになったゾンビのように、容赦無く襲ってくる。
「何か……食べ物……」
こんな時は、近くの木の葉を探ってみるのがいい。何故なら、時々リンゴが木になっているからだ。
そして、そのことを、スティーブは知っていた。
「とりあえず、木だな」
その木は、周りを見渡しても、一向に見つからないのだった。
~2-2へ続く~
全 然 進 ま な い
次回は一週間以内にかけたらなーなんて思ってますおしまい。
次回で二話完結!