俺は、遥か彼方まで広がる地平線を見た。
星は出ていない。だけど、俺の目には、空一面に広がる星が見えていた。
この世界は、広い。星を見ながら、俺はそう思った。
第一話
恐ろしく広大な砂漠を見て、俺はため息をつくしかなすすべがなかった。
正方形の一辺一メートルという『ブロック』でできたこの世界の名をいうのであるならば、『新規ワールド』なのだろう。何故なら、この世界はマインクラフトと呼ばれる、いわゆる核の世界を中心に、無数の世界があるからだ。
それらは決して交わらない。全ての世界の中心核、マインクラフトが崩壊しなければ、平穏な世界で保っていられるのだ。
最も、その世界の旅人が何かをしなければ、の話だが。
このブロックでできた世界では、『Mod』と呼ばれる、世界を拡張する鍵が存在する。
それは、旅人がその鍵を見つければ自動的に追加されるのだ。
表の名こそ、世界を拡張する鍵だが、裏の名は、
世界崩壊の鍵、だ。
Modには色々な種類があり、ダンジョンを世界各地に生成したりするもの、新たな武器、資源を生み出したりするもの、そして――――強大な力を持つ種族を追加、それに対抗するための軍事力、極めつけは、あらゆるものを破壊してしまう、『核爆弾』を作るための資源が生まれてしまうのだ。
様々な世界の中枢核マインクラフトは、核Mod対策のための書類を、各ワールドの初期スポーン地点に自動生成される『処理塔』へと一斉に送信した。
そこにはこう書かれてある。
――核Mod流出の危険。
この度、世界各地へとばらまかれた核Modの一刻も早い対処へと、ご協力お願いします。
核が悪の手に広がれば、やがて世界のバランスは崩壊し、最終的には、世界放棄をすることに繋がります。
各ワールドの、素早い対応を、期待しております――
このことから、世界を拡張する鍵もしくは、世界崩壊の鍵と、呼ばれているのだ。
さて、この世界について少しだけ触れたが、そろそろ俺の話に戻ろう。
目の前に広がるは黄色が少し薄らいだような色の砂漠バイオームだ。今は正午の、頭の天辺に太陽がきている時間だ。とにかく暑い。
四角い形をした太陽に目をやる。眩しい。
四角い汗が四角い体をいかにも四角と言う風に這っていき、やがて四角い砂ブロックの上へと線を描いて落ちる。
「んで、今どこらへんだ?」
別に、誰かに問いた訳ではない。ただの独り言だ。しかし、返事がないというのも少々気まずいものがある。
手に持っていたマップを確認する。
マップは、現在地と家の場所が良く分かる、非常に便利な道具だ。
しかも、驚くべき事に俺がブロックを置けばそれが反映されて、マップに自動的に作ったものが載るのだ。
マップには、現在地が記されていた。
「やっぱ、砂漠だよな……」
どうやら、この先は広大な大地が広がっているようだ。マップに表示されている箇所の大よそ三分の一が、砂漠バイオームなのだ。
緑色のものがちらちらと見えている。サボテンだ。特に欲しいとも思わないが、取れるものはとっておこうと思い、そちらへと向かう。
日差しと砂漠の砂の暑さで、油断するとすぐにぶっ倒れそうだ……。
焼けるような暑さの中で、サボテンが生えているところまでたどり着いた。ブロックが二つ重なって、サボテンブロックの高さは俺の身長と同じくらいだ。
少しサボテンに触れてみる。瞬間、とてつもない痛みが体を襲う。
「ギャアアアアア!! 痛い!! 痛いって!!」
自分で触ったのに、何故かサボテンに八つ当たりする。かわいそうなサボテン……。
……とにかく、サボテンは砂漠に来ないと取れないものなのでとっておく事にする。
俺は、使い古されたバックの中から斧を一振り取り出した。
それを、天高く掲げ、まるで木こりが木をこるように、サボテンに向かって思い切り振り下ろした。
軽い音と共に、粉々になってアイテム化するサボテンブロックを、俺はやはり砂漠は暑いと思いながら、それでも達成感溢れ出る瞳で睨むのだった。
○
木のブロックを壊す音が、一々耳に心地よい。
俺は今、砂漠に仮拠点を作るために、木材を集めている。
現在地は砂漠へ到達する少し前に見つけた、森バイオームだ。大量の木があり、当分木材には困らないだろう。そう考えると、俺は一人で喜んだ。
ぐぐぅ~。気持ちの良いお腹の響き。
無言でバックの中からパンを取り出す。三日前に見つけた村の、村人との取引で小麦をもらった。その小麦と村人に借りた作業台で作ったパンが、それだ。
俺は勢い良くそれを口へと運ぶと、すぐにむせた。
「……ッゴッホっ!!」
むせて、数秒咳き込んだ。その後食べたパンの味は、極々普通のパンの味だった。
この全てが四角い世界では、夜がマグマダイブの次くらいに恐ろしいものだ。
剣などの武器系ツールを作っておくか、朝、昼のうちに拠点を立てておかないと、洞窟を急いで掘ってその場をしのぐ以外、生き残るすべはないだろう。
俺はこれもまた村人からエメラルド三つで取引した、鉄の剣を持っている。だから外で夜を過ごすのも安心だろう。
それに、昼のうちから仮拠点を建て初めて、日が暮れる頃には立派な豆腐ハウスが完成していた。
「よっしゃ、じゃあ、寝る……か…………」
バックの中身を漁る。そこには、武器や道具やブロックがいっぱい入っているのだが……、
「ベットが、ない!!」
肝心のベットがないのだった。
ベットがなくては寝ることが出来ない。寝ることが出来ないと、精神力がもたない。結果、ゾンビに消される……!!
そんなことはあってはならない。この世界には、リスポーン機能というのもがあり、もし、仮に、マグマに落ちて死んでしまったとしよう。
しかし、そこで『この世界を出る』か『生き返る』の二択が、脳内に直接送られてくるのだ。
『この世界を出る』を選択した場合は、もう、二度とこの世界に生き返る事はなく、別の世界に自動的に召喚される。
『生き返る』を選択した場合は、もう一度、初期スポーン地点に建ってある、処理塔入り口へと飛ばされるのだ。
勿論、今まで持っていたアイテムは、全て、六時間以内に回収しなければ無くなってしまう。
もし、六時間以内に回収できなければ、この世界では全ロストと言われている、要するにアイテム消失という悲劇が生まれるのだ。
俺は、着古したヨレヨレ穴だらけのTシャツと、こちらも着古したボロ雑巾のようなズボンの一セットしか持ってない。革の防具すら持っていない、複数のモンスターに狙われたら一環の終わりの格好だ。
マズイ……、俺はそう思った。
思うのはいいのだが、この非常事態は変わらない。更に、俺を混乱させる事件が起こる。
いきなり、ドアを叩く音がし始めたのだ。
ドンドン! とドアが壊れることもお構いなしに力任せに叩いている。
ドアを叩くのは、多分――
「ゾンビっ!!」
そういうと共に、ドアを開いた。
そこには一体……いや二体のゾンビが、不気味な唸り声を上げながらこちらを見ているではないか。
即座に肩に掛けた(非常時の為に何時も鉄剣一振りを肩へと背負っている)剣を、自分で言うのもなんだが、華麗なラインを描きながら標的へと剣先を向けた。
それに勝るとも劣らない速さでゾンビが襲ってくる。
一対二という明らかにこちらが不利な状況でも、俺は顔を沈めることはない。だって、俺の作ったこの拠点には、ある仕掛けがあるのだから。
表向きは、五×五メートルの非常に小さいブロックハウスだ。
だが、その建物の地下には、ちょっとした『戦闘スペース』のような空間がポッカリと空いている。
七×七程度のそこには、何もない。あるのは、無音と石の擦れ合う音だけ。
だがしかし、俺にはそれでも十分すぎるくらいだった。
「さぁて、いっちょやりますか」
俺は、手に持っていた剣を肩に再び掛け、ポケットの中から素早く赤いブロックを四つほど取り出した。
それを、無音の空間へと素早い動作で設置する。
「ぐぉおおぉお!」
グロテスクな、血と唾液が入り交じったような声でゾンビたちが唸る。
俺はそんなことはお構いなしに、手に火打ち石を持ち、それでその赤いブロックへと着火した。
バチッという音と共に、そのブロックは少し飛び跳ねた。
もうすぐそこまでゾンビが来ている。
俺は、最後の捨て台詞を言う。
「これが俺の必殺技!! TNTダッ!!!!」
瞬間、途轍もない破壊力を伴ったTNTは、綺麗な花火にように、そこら一体の何から何までを壊していったのだった。
自分の意識が遠のいて行く? そんなことはこの世界じゃわからない。
一瞬にして、You diedの文字が頭の中に生成されて、俺はその後少しの間眠った。
ほんの少しの間――――
次回から三人称にしよう……
一人称難すいw
あ、因みにMinecraftの世界を24時間単位にした場合、アイテムロストまでの時間の五分は、六時間になります。