
広間には
文殊、虛空を含め浅葉家の人間は六人いた
一人の男が言った
「お待ちしておりました、私が浅葉家現当主の千手(ちうね)と申します」
そして千手の隣に座っていた
文殊と同い年くらいの巫女少女が続いて言った
「私は普賢(ふうか)といいます」
それに続き中年ぐらいのシュッとした男が言う
「浅葉分家の阿弥陀(あみだ)と申します」
その隣に座る女が言った
「私の名前は大日(ひより)と申します、阿弥陀の妻です」
千手が言った
「このたびは今井先生のお力をお借りできて光栄です」
今井は千手に訊いた
「いえいえ、それよりこの家に憑いてるのは一体?」
千手はこんなことを話した
この浅葉家には代々当主が封じ続けていた
サヨコの祠というものがあり
当主は祠を生涯守らなければならなかった
しかし、興味本意でやって来た若者たちがあろうことか祠を荒らし
封印を解いてしまった
その若者たちはその場で溺死体のような状態で見つかった
元々サヨコというのは浅葉家の娘だった
当主は妻との間にサヨコを授かったものの
まもなくして妻は病死
そして当主は再婚をした
その女には二人の連れ子がいた
サヨコはひどいいじめを受け
最終的に井戸に身を投げ自殺した
当時の当主には行方不明になったとだけ伝えた
村総出で探したが見つかるはずもなかった
問題はそれからだった
女と二人の連れ子が相次いで
溺死体のように死んでいた
当時の当主はサヨコが
殺されていたことを知らされた
自分にも何かしらの外が出ることを恐れた当時の当主はその井戸を壊し、祠にした
そして祈祷を絶やさなかった
しかしそれを外部の者に破壊され
サヨコは怒ったのだろう
虛空が遮るように行った
「祟なんてある訳ありません!」
今井はいかにも売れっ子探偵のように
腕を組み静かに言った
「私も虛空さんと同じ意見です...これは言い伝えを利用した殺人です、この今井が解決して差し上げましょう...ジッちゃんになりかけて!」
やはり空気が冷たくなった
その後今井たちは
屋敷の客間に通された
「今晩はここでお泊りください」
文殊が言った
今井たちは適当に陣取り
文殊は部屋から出ていった
「なんかややこしい事に巻き込まれちゃったね」
世鶴が自分のネイルを眺めながら言う
「他人事みたいにいうなよ、お前も一応渦中にいるんだからな」
「それより...なんで俺まで」
益子はやっと疑問点に気付いた
今井が言うには現行犯逮捕のための手錠係のようだった
その時、今井たちの部屋のふすまを誰かがノックしている音がした
トントン トトン トン
「雪だるまつく~ろ~...ってオイ」
今井のノリツッコミが冴えた
ノックした人の正体は大日だった
「失礼します...」
そう言いながら部屋に入り
今井を見つめた
「まさか...」
世鶴はあらぬことを考えた
しかしそれは違ったのだろう
「今井さん、あなたに話したいことがございます...」
そして大日は益子と世鶴に部屋を一旦出るようにと言った
仕方なく二人はおとなしく部屋を出ていった
「大日さんでしたよね?私になにか御用でしょうか?」
今井の問いかけに対して
大日は今井の後ろを指さした
「あなた...昔一人の仲間を失ってはいませんか?」
今井はドキッとした
今井の脳裏には四年前ほどに今井をかばって殉職した宮下が思い浮かんだ
「た、確かに私は四年前に部下を一人失っています...まさか死んだ時から私に憑いてたんですか!?」
大日は首をゆっくり横に振った
「つい最近あなたの近くにいるようになったんでしょうね、とは言っても取り憑いてるわけではなくあくまで見守ってるというべきでしょうか」
「そんなにはっきりとわかるもんなんでしょうか?」
「そりゃあそうですよ、某奇妙な冒険の幽波紋並にくっきりと」
今井はえも言えぬ心境になった
その頃部屋を追い出された益子と世鶴は
例の霊の祠に文殊と一緒に来ていた
「これが...例の霊の礼の祠?」
「礼が一個多いぞ」
世鶴に益子が突っ込んだ
しかしそれは祠とはいえないような
まさに井戸に簡易的な祭壇がついただけのようなものだった
「サヨコに触れられた人間は...触られた瞬間に死んでしまうんです...この祠を壊した奴らは水死体のようでしたが、死に方は色々とあるようです...どのみち即死なんですがね」
文殊は祠の周りに転がっている石を足で転がしながら言った
その時益子の携帯が鳴った
必殺仕事人のテーマだ
「今井さんが呼んでるみたい『世鶴は来なくていい』だそうなのでちょっと戻るわ」
そういって益子は走っていった
「もしかして:ホモ」
世鶴のあらぬ妄想が炸裂した
益子は息を切らせながら
今井と大日の居る部屋に入った
その瞬間だった
頭に何かが当たり
痛みが来る間もなく気絶した