アピアランスケアはとても大切! ─抗がん剤の脱毛対策 | あなたの心と魂を励ます[ちゃぷれんろごす]

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メンタルケア心理士®・上級心理カウンセラーな県内初のチャプレンによる心と魂を励ますブログ

こんにちは、なぎさです。

 

 

あなたの体調が崩れました。

お医者さんがこう言います。

 

「治すのにこの薬が効きますが、髪の毛は確実に抜けます。──で、やりますか?」

 

やります!とかやめておきます!とか即答できる方はあまりおられないのではないでしょうか。

 

 

 

放置しておくと悪い部分がどんどん増えるのは分かっている状態。

治療をすれば進行を遅らせられるけど、髪は全部抜ける。

薬を使ったら最後、全部ごっそりと抜け落ちてスキンヘッドの状態で生涯を過ごすのか。

喪失感、絶望感、色々な気持ちが押し寄せてきます。

 

時々このように「で、やりますか?」だけを言う医師がおられるようです。

ちょっと…残念…。

 

見た目の変化に伴う苦痛をケアすることをアピアランスケアといいます。

今回はそのお話です。

 

 

クローバー

 

 

抗がん剤の副作用でよくあるのが吐き気や倦怠感、骨髄抑制といって貧血になったり白血球の数値が下がったりなど、本当に幅広いものがあるのですが、脱毛というのもあります。

 

男性でも治療で脱毛するというのはツライものがあります。

仕事や立場上、人前に立つ機会が多い方はどうしようかと悩まれますし、女性の多くは絶望感を抱くほどに悩まれます。

 

「髪は女の命」という言葉がありますが、髪の毛というのは意味があるものでして、平安時代などから仏門に入る時など「世俗と縁を切る」という意味で断髪をしていました。

今でもそういう形がありますね。

神職は髪を切らないで伸ばすというのもあるほど、髪は単なる皮膚の一部、タンパク質で構成されていて切れば伸びます、毛根が不可逆的なダメージ受けたら生えませんという生理学的なものだけでなく、人によってはアイデンティティのひとつであり、意味でもあり、意義でもあったりします。

 

それを「抜けるけど、この薬やるよね?」的に話を進めていくには少々違和感があります。

デリカシーに欠けるというものです。

 

私は、

  • なぜ抜けるのか
  • どの毛が抜けるのか
  • どう抜けるのか
  • 見た目はどう変わるのか
  • 生えてくるのか
  • 抜けたらどうしたらいいのか
  • ウィッグ(カツラ)とかはあるのか
  • 眉毛やまつ毛、体毛はどうなるのか
  • 爪はどうなるのか
  • 肌はどうなるのか

 

など、想定できる予測とその対処方法などを患者さんに提供して何度でも相談できるようにし、見通しを立てた上で治療の選択ができると良いなと思います。

 

もちろん治療中も「思ってたのと違ってこうなってる、どうしよう」という不安と戸惑いを解消できるように常に相談ができると良いのですが、これはがん相談支援センターなどがありますのでそこでフォローはされることと思います。

 

ここで私が言及したいのは、治療中ではなく治療に入る前の話です。

何も情報がない状態で、どうなるのかの見通しも提示されないまま「やります」「やりません」を選べないですよということなのです。

なので、先生方にはぜひ、抗がん剤をすすめる際には情報提供をお願いしたいのです。

そのうえで結論を求めてほしいのです。

 

 

クローバー

 

 

脱毛のプロセス

 

私の手持ちの本によると、脱毛の開始は抗がん剤を始めてから平均で18日程度で、98%の人が脱毛したと回答しています。

 

抜け方としては、1~2週間で髪の毛が抜け始めたな…と思ったら一気に抜けたという場合もあれば、3週間ほどかけて少しずつ抜けていく場合もあります。

 

では抜けてしまったらそれでもう終わりかというとそうではなく、再発毛があります。

これは治療終了してから3~6か月頃に少しずつ髪の毛が生えてきますが、毛質や色は以前とは違う場合があります。

細い猫毛だった人が再発毛では張りのある真っ黒な毛だったり、赤ちゃんのような柔らかい毛だったり、白髪だったりと様々です。

この毛質と色の変化は1~2年度のかけて少しずつ元に戻るとされていますが、抗がん剤の投与量が多かったり、毛母細胞がダメージを受けていると元に戻らず、毛髪自体が生えてこなかったりもします。

 

 

 

脱毛対策

 

では抜けたらどうしたらいいのでしょう。

抜け始めるまでに何かしておいたほうがいいことはあるのでしょうか。

 

帽子やバンダナ、スカーフ、ウィッグなどで頭部をフォローすることができますが、それだけではなく予め髪の毛を短くカットされておくと良いとされています。

理由としては、長髪で脱毛すると髪の毛があちこちに散らばり始末が大変だからです。

また、抜けた毛の多さにショックを受ける場合があるので、これを少しでも緩和するためにショートヘアにされると良いとなっています。

 

この時、前髪を作った状態でショートヘアにされるのをおすすめします。

理由はウィッグはほとんどが前髪ありのため、ウィッグに切り替えてから違和感を強く覚えてしまうからです。

先に前髪ありのショートヘアにしておくことで、少ない違和感程度でウィッグに移行することができます。

さらに違和感を消すためには、先にウィッグを作っておかれて、そのウィッグの髪型に合わせてヘアスタイルを作るという手もあります。

 

ウィッグってどこで買えばいいのでしょうか?

院内にあるがん相談支援センターにお尋ねください。

そこで医療用ウィッグの購入方法などを教えてもらます。

 

 

余談ですが…

ファッションウィッグと医療用ウィッグ、どちらがいいと思いますか?

不自然さゼロを目指す場合、私は医療用ウィッグに軍配があがると思います。

本当に自然です。

 

私がお会いする患者さんでウィッグの方は多いですが、医療用ウィッグの方はどなたも自然すぎて、私がウィッグかどうか意識することもないくらいです。

「これ、ウィッグです」と言われてびっくりすることもあります。

ファッションウィッグは髪型の自由度は高いのですが、メッシュ部分が少し硬め。

毛質がポリ独特のツヤツヤ感があるものは普段使いとしては少し不自然さはあります。

お若い方でしたらファッションウィッグで華やかにしても大丈夫ですが、40代以降は正直に申し上げて医療用ウィッグのほうが自然で違和感がないです。

 

今は人毛タイプ、人工毛タイプ、MIXタイプとあるので、昔に比べて「あ!あの人カツラだ!」感は減っていますのでご安心を。

美容師さんにお願いして、ウィッグを自然な毛の流れにカットしてもらうと尚一層自然になります。

 

ウィッグを買うポイントは

  1. 自分に似合うか
  2. 予算
  3. かぶり心地

です。

似合うかどうか、被ってみて違和感があっても少ないかどうか、これが一番重要です。

ウィッグだけでなくキャップやニット帽、バンダナの方もおられます。

 

 

髪の毛が抜けると、見た目の印象が大きく変化します。

抗がん剤の脱毛の場合、眉毛やまつ毛、体毛も全部抜けてしまう方もおられます。

 

 

では眉毛はどうするのか。

女性でしたらメイク用品のアイブロウなどで眉を描きなれておられるかもしれません。

ですが、男性はアイブロウの経験がほぼないので、何度か練習されるとよいと思います。

 

まつ毛が抜けてしまうと目の中に埃が入ったり乾燥したりすることも…。

この場合、つけまつげという方法もあります。

バッサバサのすっごいつけまつげでなく、ナチュラルなものを付けられるととても自然です。

 

 

 

色素沈着対策

 

薬によっては肌が黒ずんでしまうものもありますね。

お顔の場合、一般的なファンデーションやコンシーラーではなく、痣などをカバーできるものも市販されているので、それでコントロールすることも可能です。

 

他に、爪が黒くなる、指先が黒くなるという場合もあります。

指先に関してはファンデーションやコンシーラーで色味調整をしてからルースパウダーなどでべたつきを押さえたり。

爪に関しては医師に相談のうえマニキュアでカバーする方もおられます。

もう一度書きますが、医師と相談してください。

 

ただし、ジェルネイルはおすすめしません。

マニキュアもジェルネイルも指先にパルスオキシメーターという機械を装着した時にSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)が正常に測定できないことがあります。

これはマニキュアやジェルネイルが測定する時に出ている透過光を吸収するため。

このうち、マニキュアはまだ除光液ですぐにとれるのですが、ジェルネイルはリムーバーがないと取れなかったりします。

そう、いざ!という時に迅速に医療スタッフが対応できなくなってしまう=あなたが危険になるのです。

ですから、もう一度書きますが、特に爪のケアに関しては医師と相談です。

 

爪が割れたり、ボロボロになったり、二枚爪になったりという場合、保湿なども有効です。

ぜひがん相談支援センターの支援員に相談してください。

 

 

クローバー

 

 

さて、長々と書きましたが、最低でもこれくらいの情報は事前に提供されてほしいです。

その上で「やる」「やらない」の選択なのだと思います。

 

これらを医師が一人でやれるような時間はありません。

ですから、事前に支援センターで相談することができるという情報提供が必要ですし、願わくば、相談予約の流れを提示できたら…。

 

初めての治療では治療法に対する不安だけでなく相談窓口そのものをご存じない場合もありますし手続きもわかりません。

何もかもわからない状態で「自分で選んでください」は難しいのです。

 

そしてこのようなアピアランスケアだけでなく、髪が抜けることの悲しさを何度でも言える相手、聴いてくれる人が必要です。

そういうのを聴くのが私!

 

 

患者さんは必要としておられるのに、医療側が必要性をご理解してくださらない。

どうやったら伝わるのかしら…。



※参考文献

がん看護:第23巻第4号患者の悩み・疑問に応えるアピアランスケア 南江堂 2018