「傾聴」 | あなたの心と魂を励ます[ちゃぷれんろごす]

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メンタルケア心理士®・上級心理カウンセラーな県内初のチャプレンによる心と魂を励ますブログ

 こんにちは。
 メンタルケア心理士のなぎさです。
 今日は「傾聴(けいちょう Active listening)」について書いていこうと思います。

 傾聴はカウンセリングの場だけではないですね。臨床(医療現場)では頻繁に目にして耳にしますし、医学生さん、薬学生さん、看護学生さんなども座学で習っていることと思います。
 臨床心理学者ロジャースが提唱しているカウンセラーの基本的態度にも傾聴が出て来ますね。
 傾聴は患者さんやクライエントだけでなく、そのご家族などとお話する時にもとても重要なものだと思います。
さてこの傾聴。カウンセリング辞典によるとこう説明されています。
  積極的な聴き方。相手の話を文字通りの意味だけを受動的に聴くというのではなく、「この人はどうしてこんな風な話し方をするのだろう」「どんな気持ちでこの話をしているのだろう」ということをわかろうとする積極的な姿勢で話を聴く事。聴き手が話し手を大切にする心構えで、このアクティブ・リスニングをしていくと、話し手は、自分の気持ちを率直にのびのびと話すことができ、内面的に変化する可能性がある。
(カウンセリング辞典/誠信書房 6r)

 「聞く」のではなく「聴く」のですね。「聞く」は自然と耳に入ってくる音を受信したものに対して「聴く」は自ら積極的に耳に入れることなので、ここにカウンセラーの態度の違いを見る事ができますね。
 「私はあなたに関心があります。あなたのお話を聞かせてください」という態度と気持ちをもってお話を聴くのが傾聴です。
 この傾聴があることで話し手は内面的に変化するとあります。

 さてここで、カウンセリングの定義を見てみましょう。カウンセリングには種類がとても多いですね。学派や理論が多くあるわけですが、それらすべてをとらえられる定義はこうです。

「カウンセリングとは、言語的および非言語的コミュニケーションを通して行動の変容を試みる人間関係である」

 傾聴をすることにより、話し手であるクライエントは「あ、この先生は私の話を聴いてくれるんだ」「私はこの人に受け入れられているんだ」という安心感を得られます。これが自己開示に繋がります。
 話を聴いてくれない、聴いているようで「聞いている」だけで関心を全然寄せてくれない、または聴いてくれてはいるのだけど荒探しをしている態度の相手に、心の奥底の辛い気持ちを打ち明けられません。
 ではどう安心感を与え、辛い思いを話しても良い相手だと思ってもらえるのか?ここで【共感的態度】が出てくるのです。これについてはまた後日、書いていこうと思います。

 傾聴していくことでクライエントの内面の変化が出てくる。これはカウンセリングの定義にある変容ですね。心のあり様が変化すると、行動にも表れていきます。
 カウンセラーは言葉だけではなく態度や姿勢、服装、表情、声色などの非言語的コミュニケーションも合わせて話し手と対話していくことにより、相手の「現状から一歩前に踏み出す」お手伝いをするのですね。話し手と一緒に考えて前に進む伴走者です。決してカウンセラーが「治す」のではないです。


 と、ここまで書いてきましたが、看護師として思うことを少し書きます。
 私は看護学生の頃から「もっとしっかりと患者さんのお話を聴きたい」と思っていました。しかし学生ですと実習中にそこまでの自由時間はありません。看護師になってからどうだったかと振り返ると、病棟勤務の頃は日々、やらなければならない業務に追われて傾聴したくてもその時間がありません。定期的なバイタルチェックの時間に「どうですか?」「痛みの変化はありますか?」など病状のアセスメントは多かったのですが、メンタル項目をほとんど聴けていなかったように思います。
 外来勤務のほうが長いのですが、社交的会話(今日の天気、気温、季節の話など)や病状に関する話は頻繁にしますが、やはりメンタルに関しては聴けていませんでした。なぜ聴けなかったのか考えてみると、そこまでのリレーションがついていないことと、その話をお聴きするだけの時間がないことです。

 そして今、私はとあるがん治療に関わっていて、治療時間の60分を患者さんとの対話に使っています。ここで出て来た患者さんからのお話で多くあるのは「こういう話は先生には言いづらいし、外来とか病棟とかの看護師さんは忙しそうだから言えないし、そういう雰囲気じゃないし、どこで誰に言えばいいのかわからない。」というものです。
 臨床心理士さんがいるとお伝えすると「いや、精神科とか心療内科ってわけじゃない。薬が欲しいとかナントカ療法で治したいとか、そういう深刻なのじゃないんだけど悩んでたり困ってたり言いづらいことが病院の中の誰に言えばいいのか。」となります。
 院内には多くのコ・メディカルスタッフがいますが、どの人にも該当していない悩みがあるのですね。

 私は幸いそれらのお話を語っていただけます。例えば異性関係、性についてでは特に高齢の性の問題も話します。こういう「人にちょっと言いづらい話」や、病状が進行している時に感じる虚無感や絶望感、自責感など自分の存在に関わるなんとも表現しがたい気持ちをお聴きすることも多いです。もちろん、伺う中で、これは精神科領域に差し掛かってるだろう状態であれば、主治医に相談して、主治医の判断のもと、精神科にリファーをお願いしています。また、栄養関係であれば、管理栄養士さんに繋げるなど、必要箇所へリファーは必須です。

 もちろん緩和ケアがあり、この中に心のケアもあります。その中で、果たしてこれらの「言いづらい話」「自分のあやふやな存在に関する気持ち」をお聴きする時間が臨床現場にあるのだろうか?対応者は誰なのだろうか?と思っています。(当院に関して)

 なんとか、微力ながらもそういうところをお手伝いさせていただければと思っています。

 私はなんでもお聴きします。受療の悩みから痛みの話から、主治医や看護師に対する思いから、旅行や温泉、カキフライの話までなんでも。