結局のところ、腰痛は安静にすべきなのでしょうか?それとも活動的に過ごすべきなのでしょうか?
その答えは「腰痛のタイプによる」ということになります。専門家の指示を仰ぐべき腰痛か、痛みがあってもなるべくアクティブに生活した方が良い腰痛なのか、まずはそのどちらかを仕分けることが重要になってきます。
とはいえ、“腰痛を仕分ける”と聞くと、専門家にしか分からないような小難しい理論や、CT・MRIなど最新鋭の機器を用いて行うイメージが強いかもしれません。しかし実は、そのようなハイテク技術に頼らなくても、身体におきる異変をみることによってほとんどのものを仕分けることが可能なのです。
たとえば
🚩足首や、ゆび先の力が入りにくい
🚩肛門や陰部周囲の感覚が鈍い、しびれる
🚩お通じやおしっこが出にくい、失禁がある
🚩腰よりふくらはぎなどの方が痛みが強い
🚩24時間絶え間ない痛みがある
🚩(はっきりした理由も分からず)体重が減りつづけている
🚩体調不良や熱発を併発している
🚩はげしい外傷、もしくは骨粗しょう症が顕著
🚩長期にわたるステロイド剤の使用
もしこういった兆候(“レッドフラッグ”と呼ばれます)が疑わしいのであれば、自己判断で解決しようとせず、速やかに専門医の診察を受けましょう。上記のような特徴が当てはまる腰痛の場合、脊椎腫瘍や骨折、感染症、神経圧迫など、重篤な病気が隠れている恐れがあります。(上記の特徴に当てはまったとしても、必ずしもそうであるという訳ではありません)このような場合は、むやみやたらに動いて対処しようとするのは良くないといえます。
しかし、このような腰痛である場合は全体のうちごく僅かで、それ以外の重篤な病理によるものでない腰痛は「非特異的腰痛」というサブグループ名で呼ばれます。(全体の約85〜90%は非特異的腰痛です)
大多数組といえる非特異的腰痛であれば、むしろ安静にしすぎることや、根拠なく腰への恐怖心を持つことの方が良くありません。なるべく活動的に過ごすことや、3日以上仕事は休まないこと、趣味やスポーツは可能な限り継続することが推奨され、その方が良好な予後を期待できるといわれます。たとえレントゲンやMRIを撮って「軟骨が磨り減っている」「ヘルニア気味だ」「骨が変形している」などと不安なことを言われたとしても、その指摘自体忘れてしまった方が良いくらいです。
これらの事をまとめると、
・最新機器やハイテク技術に頼らずとも、最低限の腰痛の仕分けはできる
・レッドフラッグ🚩の兆候が疑わしい腰痛なら「むやみに動くべきでない腰痛」⇨専門医へ
・多数派の非特異的腰痛なら「なるべく安静にせず、活動的に過ごすべき腰痛」
・腰に対する不安や恐怖心を持ちすぎる方が、予後にとって良くない結果を招きやすい
こういったことが言えます。
まずは重篤で危険な病態でないかどうかを疑い、そうでなければよりアクティブで前向きな対処を行なっていくことが世界的にも推奨されているのです。
さらにマッケンジー法によるコンサルテーションでは、ただ闇雲に運動するのでなく、「特にどのような動きが自分の身体には有効なのか」「どのくらいの期間で良くなりそうか」「専門家まかせでなく、自分でも出来ることは何か」など、もう一歩先に踏み込んだ、より高いレベルの対処を学ぶことが可能です。
腰痛は、多くの人の悩みのタネとなる厄介な国民病といえますが、決して怖がる病気ではありません。ほとんどの場合自分での対処が十分可能なものなのです。ゴッドハンドや魔法の新薬より、腰痛についての正しい情報がひとりひとりに正しく行き渡ることこそが、腰痛人口を減らすためには必要なのかもしれません。
国際マッケンジー協会認定セラピスト
神崎 勝和