青山の表参道にある『根津美術館』を初めて訪れた。


それは、たまたま近くで早い昼食を取っていたからという理由だったのだが、成り行きにしては思いもよらない発見があった。



根津美術館は、東武鉄道の社長を務めた初代根津嘉一郎氏(1860〜1940年)が蒐集した古美術品が展示されている。


国宝も何点か所蔵されている。


それでも、平日の開館直後から、これほど多くの見学者でごった返しているとは思いもよらなかった。



係の人によると、

「見学される方の半数以上は外国からの観光客」

だそうで、

「館内展示より、まずは庭園を見学される方が多い」

とのこと。


ならば、私と相方も庭園から見学することに。


すると、館内から外へ出てすぐのところに、

『NEZUCAFE』

というカフェがあり、早くも満席に近い。


それもその筈、四季折々の庭園風景を眺めながら、看板メニューのミートパイにNEZUブレンドコーヒーなんぞ、想像しただけでも上質な時間を過ごせそうだ。


庭園から美術館を望む


庭園は、言葉では表せないほど魅力に溢れていた。



石畳の小径を進んでいくと、樹々の中に茶席や様々な石造物が溶け込んでいる。



外国人観光客の誰もがシャッターを押しているが、自然の静寂が乱されることがない。


それだけ庭園は、深山幽谷の趣のある庭園なのである。




庭園内の弘仁亭の前には池が広がる。


毎年4月末ころには燕子花(かきつばた)が見事な花を咲かせるらしいが、尾形光琳の

『燕子花図屏風』 (国宝)

も、そのころ(約一月間)展示される。


尾形光琳『燕子花図屏風』


因みに館内では、この時期(2025年11月1日〜12月7日)伊勢物語展を開催している。


「行く水に数かくよりもはかなきは

思はぬ人を思ふなりけり」

(流れていく水に数を書くよりもはかないことは、私のことを思ってくれないあの人のことを思うことです)


いつの時代も、思うようにならないのが恋の行方…


この歌は、ほんの一部。


歌に合わせ、時代を経てから書かれた絵も数多く展示されている。



趣ある庭園で心穏やかになり、多くの美術品を目にすることで心豊かになり、心は充足感で満たされた。


心が渇いたら、また来よう。


そう、心から思える美術館だった。