「満腹して出た外はとっぷりと日が落ちて暗い。


目の前の溜め池は農業用水だったが役割を終え、昼は野鴨が遊び、白鷺が羽を広げる。


闇夜の夏はカエルの大合唱だ。


忍び寄る青くさい山の夜気。


見上げると満天の星。


まさに桃源郷。


こんな居酒屋はどこにもない。」


居酒屋探訪家の太田和彦氏がそう絶賛するのが、島根県益田市にある居酒屋『田吾作』である。


詳しくは同氏著の『日本居酒屋遺産  西日本編』に書かれているが、なんといっても、

「こんな居酒屋はどこにもない」

のひと言に惹きつけられる。


案山子が出迎える『田吾作』

人生気まま、B級グルメでいきましょ!さんのブログより



しまね観光ナビより



太田和彦氏は、

『80歳、不良老人です。』

という本を昨年1月に出版された。


私はそこまで生き延びるかわからないが、人生の先輩が80歳でどう生きているのか知りたくなり、すぐにその本を手に取った。


すると、「山陰の名居酒屋」というタイトルの随筆があり、そこに『田吾作』のことがあれこれ書かれていた。


とりわけ興味を引いたのは、最後の部分である。


「以前、ある雑誌で、某有名人と「日本一の居酒屋」で対談してほしいと言われ『田吾作』を指定すると遠すぎると言われた。


なめるんじゃない。


そんな根性で日本一の居酒屋になど行けるものかと、その対談はお断りしたのでした。」

と。


いいじゃないですか。


私は益々、『田吾作』に行きたくなった。


ホットペッパーグルメより



「なぜ山に登るのか?」

という記者の質問に、

「そこに山があるからだ」

とイギリスの登山家ジョージ・マロリーは答えたとされる。


しかし、実際には、

「なぜあなたはエベレストに登りたいのですか?」

の問いに、

「そこに(エベレストが)あるからさ

“Because it’s there .”」

と、決して哲学的ではない、具体的な山について答えたらしい。


もし私も、

「あなたはなぜ居酒屋に行くのか?」

と聞かれたら、

「そこに居酒屋があるからだ」

ではなく、

「そこに(行きたい居酒屋が)あるからさ」

と答えるだろう。


そして今、行きたくてうずうずしている居酒屋はもちろん、

『田吾作』である。



✴︎私の住む東京都内から島根県益田市までは、列車を乗り継いで約8時間。

根性の見せどころである。

言わずもがなだが、事前予約はしておくに越したことはないだろう。

✴︎因みに太田和彦氏によると、日本の居酒屋料理の最高峰となると京都の『神馬(しんめ)』になるらしい。

ここにも、絶対に行くぞ!