神宮外苑(明治神宮外苑)は、国立競技場や神宮球場、秩父宮ラグビー場などのスポーツ施設をはじめ、絵画館などの文化施設や緑地、公園などからなる広大な一帯である。


この神宮外苑は現在、神宮第二球場跡地に新ラグビー場を、現在のラグビー場に新野球場を造り、さらに高層ビルを2棟立てる再開発計画が進行中である。


しかし、この計画全体で樹木619本を伐採し、242本移植することがかねてより問題視されてきた。


そして、その後どうなったかが急に知りたくなり、まずは現地に行ってみることにした。



地下鉄銀座線「青山一丁目」駅を降りて青山通りをしばらく歩くと、有名な『いちょう並木』が見えてくる。


この青山口から絵画館に向かって300m続く『いちょう並木』には、 4列146本のいちょうが植えられている。


そして、青山口から絵画館に向かって高い順に植えられているので、まるで絵画の遠近法のように、青山口から見ると絵画館に引き込まれるような錯覚に陥る。


神宮外苑の『いちょう並木』


この芸術的な構図は近代造園の権威折下吉延博士が手がけたというが、一目見るだけでも価値があるのではなかろうか。


が、この構図の主人公であるいちょうを、まさか切ってしまうというのではあるまいな!



そんな不安を抱えて青山口から絵画館に向かって歩いていると、左手に『いちょう並木』とは異なるいちょうの一群を目にする。


ここに設置されている看板によると、どうやらここにある18本のいちょうは、伐採もしくは移植によってここから消え去ることが決まっているようだ。


『いちょう並木』のいちょうではないにしろ、なんとも寂しい限りである。


伐採もしくは移植が決まっている18本のいちょう


絵画館は現在工事中で閉館していた。


絵画館前にそびえていた樹齢100年ともいわれるヒマラヤスギは、すでに2025年初めに伐採されたようで跡形もなかった。


このスギも先の折下博士の綿密な植栽計画で植えられたものだが、何とも儚いことである。


もはや再開発を大義名分とした破壊と言っても過言でない。



工事中の絵画館



さらに歩くと、白いフェンスで仕切られた広大な工事現場に行き当たる。


神宮第二球場跡地である。


この周辺の樹木も一部は伐採済みのようだった。


ここに新ラグビー場ができる予定で、現在の秩父宮ラグビー場はこの先にある。


そして秩父宮ラグビー場の跡地には、新神宮球場が建てられることになっている。


新野球場になる予定の秩父宮ラグビー場


もちろん、時が過ぎれば建物は老朽化するだろう。


樹木も老木ともなれば、倒木の危険もあるだろう。


しかし、だからといって新しくすればいいというものではない筈だ。


法隆寺や錦帯橋が危ないから壊してしまおうとはならないように。



東京都は、秩父宮ラグビー場周辺は低層ビルしか建てられない現行の都市計画公園法を解除し、高層ビルを建てられるようにした。


それは、三井不動産が2棟の高層ビルを建てようとしているからだろうが、法律を変えてまで許可することだろうか。


そして、おそらく『いちょう並木』は伐採されずに済みそうだが、神宮外苑と歩み続けてきた619本の樹木は再開発の犠牲になる。


本当にそれでいいのだろうか?


東京の、いや日本の大切な宝だった筈なのに。



最近の東京都のすることは、利権ばかりが見え隠れしていて、大切なものを見失っているように思う。


東京都にとって大切なものとは、一体何なのだろう?