養育費変更;元夫の再婚~養育費変更;再婚の影響~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 夫婦で離婚しました。子供を妻が引き取りました。
  夫が妻に毎月支払う養育費も定めました。
  その後,(元)夫が別の女性Bと再婚しました。
  (元)夫としては,社会保険の負担が大きくなり,手取りが減ったので生活が苦しくなりました。
  養育費は減額することになるのでしょうか。


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A 再婚の時点が,養育費を定めた時点よりも「後」であれば,減額が認められるでしょう。

【養育費変更;元夫の再婚】
Q夫婦で離婚しました。子供を妻が引き取りました。
夫が妻に毎月支払う養育費も定めました。
その後,(元)夫が別の女性Bと再婚しました。
(元)夫としては,社会保険の負担が大きくなり,手取りが減ったので生活が苦しくなりました。
養育費は減額することになるのでしょうか。

A再婚の時点が,養育費を定めた時点よりも「後」であれば,減額が認められるでしょう。

養育費は合意や審判などで金額が定められた後に,変更が認められることがあります。
当然ですが,「主に経済的な事情の変更が生じた」ことが前提とされています(民法880条)。
「再婚」によって一方の「経済的負担が増えた」ということも,事情の変更,となります。
逆に,金額を定めた時点で生じていた事情,や予測された事情,については,変更の理由とはなりません。
いわゆる「織り込み済み」ということになるのです。

裁判例において,このタイミングによって「変更が認められなかった」という事例があります(後掲)。
概要を示しておきます。

<元夫の再婚;養育費変更が認められなかった裁判例>
・東京高裁平成19年11月9日
先 元夫が再婚していた+再婚相手の子供(連れ子)と養子縁組をしていた
後 養育費を定める調停成立
↓養育費変更の調停,審判
裁判所の判断
「再婚,養子縁組により社会保険料が増加したこと等の理由で収入が減少すること は,その当時予測可能な事情」
※事業経費として「トラックのレンタル料発生→利益(収入)減少」も主張されたが,同様に「予測可能」と判断された

養育費を減額すべき事情の変更とは言えない

[民法]
(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)
第八百八十条  扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。

[平成19年11月 9日 東京高裁 平19(ラ)1199号 養育費減額審判に対する抗告事件]
第2 当裁判所の判断
 1 当裁判所は,原審判と異なり,相手方の養育費減額の申立ては理由がないから却下すべきであると判断する。その理由は以下のとおりである。
 2 記録によれば,以下の事実が認められる。
  (1) 抗告人と相手方は,平成15年×月×日,協議離婚をするに際し,相手方が抗告人に対し,養育費として未成年者1人につき月額3万円を支払う旨合意し,相手方は抗告人に対し,離婚から平成16年5月まではこの合意のとおり養育費を支払ったが,その後,養育費の減額を主張し,平成16年6月からは未成年者1人につき月額2万円を支払うようになった。
  (2) この間,相手方は,平成17年×月×日,Fと再婚し,平成18年×月×日,Fの長女であるG(平成7年×月×日生)と養子縁組をした。
  (3) 抗告人は,平成18年×月×日,相手方に対し,養育費として未成年者1人につき月額3万円を支払うことを求めて別件調停を申し立てた。相手方は,未成年者1人につき月額2万円を支払うことを主張したが,平成18年6月×日,ア 相手方は未成年者1人につき月額2万2000円を平成18年6月から未成年者らがそれぞれ成年に達する月まで毎月末日限り支払うこと,イ 相手方が未成年者ら3人の養育費として,離婚後平成16年5月まで月額9万円,平成16年6月から平成18年5月まで月額6万円を支払ったことを確認すること,ウ 抗告人が相手方に対し,相手方の実家を介して未成年者らに連絡を取ることを認めること,以上を内容とする調停が成立した。
 この調停の際,当事者双方から各自の平成17年分の所得税の確定申告書が提出され,これらの収入を養育費算定の基礎収入とした上で話合いが行われた。相手方は,調停成立時において,当時仕事に使用していた自己所有のトラックを買い換えるか,又は会社からトラックをレンタルで借りるかしなければならないという事情を認識していた。
  (4) 相手方は,平成18年9月から仕事に使用するトラックをレンタルで借りるようになり,レンタル料として月額10万5000円を支払うようになった。
  (5) 相手方は,平成18年8月分の養育費の支払を怠ったため,抗告人は履行勧告の申出をし,相手方は,平成18年9月×日に8月分の養育費を支払った。相手方は平成18年9月分の養育費について別件調停における合意額の半額しか支払わなかったため,抗告人は,再び履行勧告の申出をしたが,相手方が上記のレンタル料の支払等を理由にこれに応じなかったため,抗告人は,相手方の財産に対して強制執行をした。
  (6) 相手方は,平成18年12月×日,養育費減額の調停(以下「本件調停」という。)を申し立て,減額の理由として,借金の返済が多くなったこと,税金も未払になっていること,トラックのレンタル料を支払うようになったことを挙げた。
  (7) 別件調停において相手方が提出した平成17年分の所得税の確定申告書及び所得税青色申告決算書によれば,相手方の収入は671万9243円であり,経費242万9361円及び青色申告控除10万円を差し引いた所得金額は418万9882円であった。この金額から社会保険料控除6万3200円,生命保険料控除5万円,損害保険料控除3000円,配偶者控除38万円,扶養控除38万円,基礎控除38万円を差し引いた結果,課税される所得金額は293万3000円であった。
 本件調停において相手方が提出した平成18年分の所得税の確定申告書及び所得税青色申告決算書によれば,相手方の収入は680万4411円で,ここから経費376万6657円及び青色申告控除10万円を差し引いた所得金額は293万7754円であった。この金額から社会保険料控除82万1500円,生命保険料控除5万円,損害保険料控除3000円,配偶者控除38万円,扶養控除38万円,基礎控除38万円を差し引いた結果,課税される所得金額は92万3000円であった。
 3(1) 上記2の事実によれば,相手方の平成18年の課税される所得金額は平成17年の課税される所得金額と比較して,収入が約10万円増加し,経費が約134万円,社会保険料が約76万円増加したことから,合計で約200万円減少したことが認められ,それに伴って養育費の算定の基礎となる相手方の総収入も減少したことが認められる。そして,この総収入の減少の原因となった経費の増加は月額10万5000円のトラックのレンタル料の支払によるものであり,社会保険料の増加は婚姻と養子縁組によるものであると認められる。
  (2) しかし,上記のとおり,別件調停の成立時において,相手方は既に再婚し,再婚相手の長女と養子縁組をしており,当時仕事に使用していた自己所有のトラックを買い換えるか又は会社からトラックをレンタルで借りるかしなければならないという事情を認識していたのであるから,トラックを利用した事業者というべき相手方としては,レンタル料がいくらであるかは重大な関心事であり,レンタル料の額,ひいては(1)の総収入の減少についても相手方は具体的に認識していたか,少なくとも十分予測可能であったというべきである。なお,原審判は,その理由として,収入減少の程度が大きく,予想できた減収の範囲を超えていることを掲げているが,関係記録によっても,相手方がどの程度の減収を予想していたかなどを含め上記事情を認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。
 また,相手方の本件調停の申立書によれば,相手方が別件調停で定められた養育費の支払をしばしば怠っている理由は,トラックのレンタル料の支払のみではなく,それ以外の借金や税金の滞納にもよるのであって,これらの点について,相手方において別件調停の成立時に予測不能であったと認めるに足りる証拠はない。しかも,相手方は,トラックのレンタル料の支払が必要になった平成18年9月に先立つ平成18年8月の段階で養育費の支払を遅滞し始めているのであって,相手方が養育費の支払をしない理由は,必ずしもトラックのレンタル料の支払のみであるとはいえない。
  (3) 調停は当事者双方の話合いの結果調停委員会の関与の下で成立し,調停調書の記載は確定判決と同一の効力を有するのであるから,その内容は最大限尊重されなければならず,調停の当時,当事者に予測不能であったことが後に生じた場合に限り,これを事情の変更と評価して調停の内容を変更することが認められるものであるところ,上記の事情に照らすと,相手方の収入の減少は相手方に予測可能であって,これをもって養育費を減額すべき事情の変更ということはできない。
 したがって,その余について判断するまでもなく,相手方の養育費の減額の申立ては理由がない。

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