既に抵当権登記があるので,抵当権が優先となります。
多額の敷金をオーナーに預けました。
オーナーが倒産し,破産手続きが行われています。
敷金はどうなるのでしょうか。
保護する方法はありませんか。
誤解ありがち度 5(5段階)
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A 抵当権実行による競売が行われたら,退去することになります。
しかも,敷金はほとんど戻ってこないのが一般的です。
保護する方策として「寄託請求」があります。
【敷金返還請求権による配当要求】
当社のオフィスとして,賃貸ビルの1フロアを借りました。
既に抵当権登記があるので,抵当権が優先となります。
多額の敷金をオーナーに預けました。
オーナーが倒産し,破産手続きが行われています。
敷金はどうなるのでしょうか。
≪敷金・原状回復≫≪抵当権と賃貸借≫≪建物賃貸借の対抗要件≫
→抵当権実行による競売が行われ,退去することになっても,敷金はほとんど戻ってこないのが原則です。
ちょっと複雑な状態になります。
前提として,賃借権よりも抵当権が優先です。
仮に抵当権が実行されて,競売されると,競落人(新所有者)から明渡請求を受けることになります。
明渡請求を受けた時点で,元々の「賃貸借契約」は履行不能に至り,終了することとなります。
(「解除」の通知が必要ですが,省略します)
賃貸借契約が終了→退去,は仕方ないとして,敷金が返還されるかどうかがポイントです。
これは「破産債権」(破産法2条5項)として扱われます。
破産開始決定「前」に存在していた,破産者に対する債権,は「破産債権」として,破産手続に組み込まれます。
一般的には,債務超過なので,「ごくわずかしか戻ってこない(分配率),残りの大部分は「免責」となる」ということになります。
なお,実際に敷金の返還請求を行う時点は,破産開始決定「後」ですが,賃貸借契約(正確にはセットとなっている敷金契約)の成立時に「敷金返還請求権」自体は発生している,と解釈されています(判例後掲)。
正確には「停止条件付」の請求権,ということになります。
いずれにしても,「敷金返還請求権」は破産開始決定「前」に発生していた債権,ということになるのです。
[最高裁判所第2小法廷昭和46年(オ)第357号敷金返還請求事件昭和48年2月2日]
そして、本件のように、明渡前に賃貸人が目的家屋の所有権を他へ譲渡した場合でも、貸借人は、賃貸借終了により賃貸人に家屋を返還すべき契約上の債務を負い、占有を継続するかぎり右債務につき遅滞の責を免れないのであり、賃貸人において、貸借人の右債務の不履行により受くべき損害の賠償請求権をも敷金によつて担保しうべきものであるから、このような場合においても、家屋明渡前には、敷金返還請求権は未確定な債権というべきである。
【破産手続における寄託請求による敷金の保護】
オーナーが破産しても,敷金を戻してもらう方法はないのでしょうか。
≪敷金・原状回復≫≪抵当権と賃貸借≫≪建物賃貸借の対抗要件≫
→「寄託請求」をしておけば敷金が保護されることになります。
破産開始決定の直後に,破産管財人に対して「寄託請求」(破産法70条)を行うのが得策です。
これにより,その後月々支払う賃料を「寄託」することになります。
簡単に言えば,「各債権者への返済用プール口座」には入れないで,別に隔離して保管しておく,という意味です。
例えば,敷金が賃料2か月分であれば,2か月分は「別に保管(=寄託)」されることになります。
そして,賃貸借契約が終了し,退去すれば,その時点で「寄託された賃料2か月分の金銭」が戻ってきます。
ここの動きの裏の債権債務の操作はちょっと複雑です。
1 未履行の賃料債務(2か月分)(※1) と 敷金返還請求権 を相殺する
2 寄託された金銭の返還を受ける
※1 実は,「寄託」した賃料2か月分は「賃料として支払済みではない」ということになっています。
[破産法]
(停止条件付債権等を有する者による寄託の請求)
第七十条 停止条件付債権又は将来の請求権を有する者は、破産者に対する債務を弁済する場合には、後に相殺をするため、その債権額の限度において弁済額の寄託を請求することができる。敷金の返還請求権を有する者が破産者に対する賃料債務を弁済する場合も、同様とする。
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