「寄託請求」による敷金保護~賞味期間と天敵~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q オーナーが破産したので,敷金を保護するため「寄託」の請求を行いました。
  いつまで「敷金分の金銭」を保管しておいてくれるのでしょうか。


誤解ありがち度 5(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

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A 「最後配当に関する除斥期間」が期限です。
  ただ,その前に「物上代位による差押」という天敵が来たら終わりです。


【破産手続における寄託金の返還期限】
オーナーが破産したので,敷金を保護するため「寄託」の請求を行いました。
いつまで「敷金分の金銭」を保管しておいてくれるのでしょうか。
≪敷金・原状回復≫≪抵当権と賃貸借≫≪建物賃貸借の対抗要件≫

→「最後配当に関する除斥期間」が期限です。最後配当公告+2週間経過時点,までに明渡を完了する必要があります。

最後配当に関する公告がなされ,その後2週間が経過すると,いわば,配当が確定(クローズ)となります。
この期限を「最後配当に関する除斥期間」と呼んでいます。
この時点までに敷金返還請求権が具体化=明渡完了していないと,「寄託」されていた金銭は「破産財団」に組み込まれます。
正確には,最後配当の一部として,債権者への配当に充てられる,というルールになっています(破産法201条2項)。
「最後配当に関する除斥期間」のうちに,「(敷金返還請求権を)行使することができるに至って」いれば,相殺(→寄託金の返還)が可能となります(破産法198条2項)。

[破産法]
(破産債権の除斥等)
第百九十八条  異議等のある破産債権(第百二十九条第一項に規定するものを除く。)について最後配当の手続に参加するには、当該異議等のある破産債権を有する破産債権者が、前条第一項の規定による公告が効力を生じた日又は同条第三項の規定による届出があった日から起算して二週間以内に、破産管財人に対し、当該異議等のある破産債権の確定に関する破産債権査定申立てに係る査定の手続、破産債権査定異議の訴えに係る訴訟手続又は第百二十七条第一項の規定による受継があった訴訟手続が係属していることを証明しなければならない。
2  停止条件付債権又は将来の請求権である破産債権について最後配当の手続に参加するには、前項に規定する期間(以下この節及び第五節において「最後配当に関する除斥期間」という。)内にこれを行使することができるに至っていなければならない。
3(以下略)

(配当額の定め及び通知)
第二百一条(略)
2  破産管財人は、第七十条の規定により寄託した金額で第百九十八条第二項の規定に適合しなかったことにより最後配当の手続に参加することができなかった破産債権者のために寄託したものの配当を、最後配当の一部として他の破産債権者に対してしなければならない。
3(以下略)

【破産手続における寄託金の返還と物上代位による差押の優劣】
オーナーが破産したので,敷金を保護するため「寄託」の請求を行いました。
退去する時期は「最後配当」までは安心なのでしょうか。
≪敷金・原状回復≫≪抵当権と賃貸借≫≪建物賃貸借の対抗要件≫

→抵当権者が賃料債権を差し押さえると,それ以降は「寄託」が使えなくなります。

抵当権の本来的な機能は,「対象物を強制的に売却し,金銭に換え→返済に充てる」というものです。
しかし,その延長・補強として,「物上代位」という制度があります(民法372条,304条)。
抵当権の対象物である不動産からの賃料も対象に含まれる,というものです。
具体的には,賃料の差押,が可能なのです。
抵当権者が賃料を差し押さえた場合,それ以降に生じる賃料は,所有者=破産者(破産管財人),ではなく,差押債権者(=抵当権者)に支払うことになります。
物理的に「破産管財人が保管しておく」ということができなくなります。
結果的に「敷金との相殺→寄託金の返還」というワザが使えなくなります。

[民法]
(物上代位)
第三百四条  先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2  債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

(留置権等の規定の準用)
第三百七十二条  第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。

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