寄与分,特別受益の計算例~2つの説で違う結論に~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 超過特別受益がある場合に,計算方法の説によって,具体的にどのように結果が違ってくるのでしょうか。

誤解ありがち度 5(5段階)
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A 特別受益控除先行説だと,特別受益が多かった相続人が「有利」(相続分が多め)になる方向になります。

【特別受益控除先行説の理由】
超過特別受益がある場合に,特別受益控除先行説が採用されている理由はどのようなものですか。

→いろいろありますが,「寄与分は独立した調停・審判で決める(制度がある)」→寄与分は修正されにくいよう,計算はより後回し,という理由が分かりやすいです。

特別受益の控除(マイナス)を先行すると,「リセット」の恩恵を受けやすくなります。
相続人の立場から考えると,「生前もらったもの(=特別受益)」は過小評価,「生前に(被相続人に)与えたもの(=寄与分)」はフル評価,ということになります。
ここだけを見ると不公平,アンバランスだと思えます。
しかし,「寄与分」については,現実的には「寄与分を定める処分調停」という手続きによって定めます。
調停で話し合いがまとまらない場合,審判に移行し,家庭裁判所が決定することになります(民法904条の2第2項,家事審判法9条乙類9条の2)。
一方,「特別受益」については,このような独立した調停・審判はありません(民法903条;後掲判例)。
結局,「特別受益」については,遺産分割協議(調停・審判)という全体会議の中で,その計算方法の一環として考慮される,ということになります。
逆に言えば,特別受益を計算・考慮する時点では,寄与分は確定済,ということになります。
そこで,確定した寄与分については,極力修正しない方向が望ましい,と言えます。
言い方を変えると「寄与分はフル評価が良い」ということです。
そこで,計算上は後回し,という見解が採用されたのです。
ただし,この見解はあくまでも高裁の決定です。
最高裁で統一的・画一的見解として採用されたわけではありません。
別の説が採用される可能性も一定程度は残っています。

[民法]
(特別受益者の相続分)
第九百三条  共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2  遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3  被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。

(寄与分)
第九百四条の二  共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2  前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3  寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4  第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。

[家事審判法]
第九条  家庭裁判所は、次に掲げる事項について審判を行う。
甲類(略)
乙類(略)
九の二 民法第九百四条の二第二項 の規定による寄与分を定める処分
十(略)
2(略)

[最高裁判所第3小法廷平成3年(オ)第252号相続財産の範囲確認請求事件平成7年3月7日]
特定の財産が特別受益財産であることの確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法である。

【寄与分,特別受益の計算例(2説)】
超過特別受益がある場合に,計算方法の説によって,具体的にどのように結果が違ってくるのでしょうか。

→特別受益控除先行説だと,特別受益が多かった相続人が「有利」(相続分が多め)になる方向になります。

具体例で示します。

<前提>
相続人  妻A,子BCDE
現存遺産 2000万
寄与分  A;600万,B;280万
特別受益 B;400万,C;300万,D;100万

みなし相続財産=2000+(400+300+100)-(600+280)
       =1920万

一応の相続分(本来の相続分) 
A;1920万×1/2=960万
B;1920万×1/8=240万
C;1920万×1/8=240万
D;1920万×1/8=240万
E;1920万×1/8=240万

<計算例>
1 寄与分合算先行説
一応の相続分(本来の相続分)にまず寄与分を合算し,その合計額から特別受益を控除する。

具体的相続分
A;960+600=1560
B;240+280-400=120
C;240-300=-60
D;240-100=140
E;240

Cの超過分を他の共同相続人が負担することになるため,現存遺産の分配比率を算出する。

A;1560/(1560+120+140+240)=78/103
B;120/(1560+120+140+240)=6/103
C;0
D;140/(1560+120+140+240)=7/103
E;240/(1560+120+140+240)=12/103

これを現存遺産2000万円に乗じて,それぞれの取得額を算出する。

A;1514万5631円
B;116万5049円
C;0
D;135万9223円
E;233万0097円

2 特別受益控除先行説(高裁決定で採用)
一応の相続分(本来の相続分)からまず特別受益を控除し,その後寄与分を合算する。

具体的相続分
A;960
B;240-400=-160
C;240-300=-60
D;240-100=140
E;240

BとCの超過分は,他の共同相続人が負担することになるため,現存遺産からAとBの寄与分を控除した残額の分配比率を算出する。

A;960/(960+140+240)=48/67
B;0
C;0
D;140/(960+140+240)=7/67
D;240/(960+140+240)=12/67

これを現存遺産からAとBの寄与分を控除した残額に乗じる。

A;{2000-(600+280)}×48/67=802万3881円
B;0
C;0
D;{2000-(600+280)}×7/67=117万0149円
E;{2000-(600+280)}×12/67=200万5970円

寄与者A,Bには寄与分が加算される。

A;802万3881円+600万0000円=1402万3881円
B;0+280万0000円=280万0000円

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