婚姻費用変更,いつまで遡る~説乱立~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 妻と別居しています。
  私(夫)の収入が激減しました。
  その後半年くらい経過しています。
  婚姻費用の減額が認められるとして,いつからの分が減額になるのでしょうか。


誤解ありがち度 4(5段階)
***↓説明↑***
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2 ↑↓
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4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

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A 説がいくつもあり,統一・統合されていません。
  逆に,「事情のアピール」により説の選択は変わってくるでしょう。


【婚姻費用分担金変更が遡る「時点」(変更時点)】
私(夫)と妻は別居しています。
当初婚姻費用の月額を決めましたが,その後私の収入が激減して半年くらいが経ちます。
仮に婚姻費用の減額が認められるとして,いつの分から,ということになりますか。

→事情変更時(半年前),請求時,審判申立時,などの説があり,1つに統合されていません。

実務上,裁判例においても,説が別れています(裁判例後掲)。
最高裁の判例がない,ということもあり,統一的見解(公的見解)はない状況です。

<婚姻費用分担金変更の起算点(変更時点)の説>
1 事情変更時
例えば,現実に夫の収入が下がった時点。
婚姻費用分担金の額は,夫婦双方の経済状態で決められる,という原理からストレートに考える説。
2 裁判外の請求時
妻サイドの立場から考える説。
つまり,「減額になる」ということを伝えてもらわないと,生活水準を調節することができない,という部分を考慮している。
3 審判申立時
「2」と似ている。
正式な手続きである審判を申し立てた段階で初めて「変更になる」ことが具体化する,というところに着目している。
4 審判の第1回期日
「3」の考え方の延長上にある見解。
期日において,より具体的な主張が行われることに着目している。
ただし,現在ではこの説が取られることはほとんどない。

(1.事情変更時)
[東京高等裁判所平成16年(ラ)第1139号平成16年9月7日]

夫婦間において婚姻費用に関する協議が成立した場合には,権利者は義務者に対し,その協議に基づいて,通常裁判所の判決手続により,婚姻費用の支払を求めることができることはいうまでもないところである。一方,当該協議が成立した後,事情に変更を生じたときは,民法880条の類推により,家庭裁判所は,各自の資力その他一切の事情を考慮し,事情に変更を生じた過去の時点にさかのぼって従前の協議を変更して新たな婚姻費用の分担額を審判により決定することができ,通常裁判所に従前の協議に基づく婚姻費用の支払を求める訴訟が現に係属中であるからといって,そのことが障害事由になるものではないと解される。

(2.裁判外の請求時)
[大阪高等裁判所昭和30年(ラ)第1号夫婦同居協力扶助等申立事件の審判に対する即時抗告申立事件昭和32年12月27日]

抗告人は相手方に対し相手方が抗告人に対し婚姻生活費の請求をなした日の翌月である昭和二十五年一月一日から昭和二十九年十一月末日迄一ケ月金千二百五十円の割合による婚姻生活費(長女良子の着育費)合計金七万三千七百五十円並びに両名の婚姻中昭和二十九年十二月一日から長女良子の成年に達する迄の期間中において抗告人が同居するに至る迄毎月金千二百五十円宛を相手方の婚姻生活費として毎月末日限り支払うべき義務あるものと認めてこれが支払を命じた原審判は相当であつてこれを不当と認むべき何等の資料もない。      

(3.審判申立時)
[仙台高等裁判所昭和29年(ラ)第42号同居、扶助並びに扶養申立即時抗告事件昭和31年2月29日]

当事者双方の現在の資産、収入その他一切の事情に徴すれば、抗告人つね子に対しては、本件調停申立の日である昭和二十九年七月十九日以降一ケ月金二千五百円宛、抗告人正夫、広、美子等に対しては、審判申立の日である昭和二十九年九月三日以降夫々一ケ月金千円宛支給するのを相当と認める。

(4.審判の第一回期日)
[福岡高等裁判所昭和28年(ラ)第81号扶養料請求申立抗告事件昭和29年7月5日]
[東京高等裁判所昭和32年(ラ)第497号夫婦間の協力扶助申立事件の審判に対する即時抗告申立事件昭和32年10月14日]


【「変更時点」の説の選択方法】
審判では,裁判所は,変更の時点,についての説をランダムに採用しているのでしょうか。

→審判官(裁判官)個人の見解によるブレがあります。ただし,ある程度,「実情」を反映させることが多いです。

理論を突き詰めると,個々の裁判官は「法律及び良心」のみにより判断します。
少なくとも最高裁による判断のない法律解釈については,個々の裁判官の裁量が大きいです。
実際に,このような複数の説が並立している論点については,「私が採る見解はA説」と明言する裁判官も居ます。
その一方で,婚姻費用分担金の変更時点など,「個別的事情による考慮が必要」という論点では,単純・100%純粋な法律解釈,とは異なる部分があります。
つまり,個別的な事情によって,どの説を採るべきかが変わってくる,ということです。
<個別的事情による採用する説への影響(例)>
・夫の収入減少の幅が非常に大きい
 →減額をより広く認めないと夫が不当に害される
 →「変更時点」は遡る方向
・夫が収入減少を敢えて隠していた
 →「変更時点」を遡らせると「妻への不意打ち」になる
 →「変更時点」は遡らない方向
・夫の収入減少を妻が熟知していた
 →「変更時点」を遡らせても「妻への不意打ち」にはならない
 →「変更時点」は遡る方向

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