婚姻費用分担金の変更~多少の事情変化では認めない~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 妻と別居しています。
  以前取り決めた婚姻費用の月額が厳しくなっています。
  収入が下がったのです。
  減額は認められないのでしょうか。


誤解ありがち度 3(5段階)
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A 経済状態の変更→婚姻費用分担金の変更,とする審判はあります。
  ただし,「多少の変動」では認められません。


【婚姻費用分担金の変更】
私(夫)と妻は別居中です。
婚姻費用の月額を以前決めました。
その後,私の収入が低くなって,婚姻費用の支払が厳しい状況です。
減額を申し入れても妻は応じません。減額できないのでしょうか。

→経済的な事情に変更があれば,審判において,婚姻費用の減額が認められる場合もあります。

婚姻費用の分担金は,単純な「扶養請求権」ではありません。
しかし,実質的には同様のカテゴリーの請求権です。
そこで,扶養の程度の変更を規定する民法880条を類推適用により,家庭裁判所が婚姻費用分担金の変更の審判をできることとされています(裁判例後掲)。

[民法]
(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)
第八百八十条  扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。

【婚姻費用分担金変更の判断要素】
どのような状況であれば,婚姻費用が減額になるのでしょうか。

→義務者(支払者)の収入の減額,要扶養者の収入増額,が典型例です。

簡単に言えば,「現在支払われている婚姻費用分担金が現時点では不合理」ということが大前提です。
つまり,当初婚姻費用分担金額を決定した時点から,経済的事情が変わった,という場合が典型的な婚姻費用分担金減額の場面です。
<婚姻費用変更(減額)の判断要素>
・義務者側の収入,資力の増減
・要扶養者側の扶養の必要性の増減
・物価変動等による生活費の高騰
・当事者双方の健康状態の変動
・以上の事情変更の理由
など

【婚姻費用分担金変更の基準】
多少でも夫の収入が変われば,婚姻費用も連動して変更されるのでしょうか。

→「事情の変更」が小さい場合は,婚姻費用の変更は認められません。

ごく一般論として,1度合意により決めたものは,原則として守られるべきです。
審判(決定)内容の変更についても同様です。
そこで,事情変更の程度がある程度「重大」である場合に初めて婚姻費用分担金の変更が認められることになるのです(裁判例後掲)。
<婚姻費用分担金の変更が認められる基準>
・当初の合意(審判)内容が不合理になった
・事情変更が「重大」(婚姻費用分担金を変更してもやむを得ない程度)

[東京高等裁判所平成16年(ラ)第1139号平成16年9月7日]
夫婦間において婚姻費用に関する協議が成立した場合には,権利者は義務者に対し,その協議に基づいて,通常裁判所の判決手続により,婚姻費用の支払を求めることができることはいうまでもないところである。一方,当該協議が成立した後,事情に変更を生じたときは,民法880条の類推により,家庭裁判所は,各自の資力その他一切の事情を考慮し,事情に変更を生じた過去の時点にさかのぼって従前の協議を変更して新たな婚姻費用の分担額を審判により決定することができ,通常裁判所に従前の協議に基づく婚姻費用の支払を求める訴訟が現に係属中であるからといって,そのことが障害事由になるものではないと解される。

[東京高等裁判所昭和49年(ラ)第653号婚姻費用分担審判に対する即時抗告事件昭和50年3月19日]
婚姻費用の分担義務を定めた協議(調停を含む)または審判を事情の変更を理由に取消または変更の審判をすることができるのは、協議または審判のあった後、その基準とされた事情に変更を生じ、従来の協議または審判の内容が実情に適合せず、不合理になった場合に限られると解すべきである。従って変更の審判において新たに分担方法を定めるに当っては、単に現在の事情のみに基いて新たな見地から定めるべきではなく、変更すべき協議または審判の基礎とされた事情と現在の事情とを比較し、その変化の程度に応じて前の定めた分担方法を修正するにとゞめるべきである。

[大阪高等裁判所平成21年(ラ)第1262号、平成22年(ラ)第103号婚姻費用分担(減額)審判に対する抗告事件,同附帯抗告事件平成22年3月3日]
 調停において合意した婚姻費用の分担額について,その変更を求めるには,それが当事者の自由な意思に基づいてされた合意であることからすると,合意当時予測できなかった重大な事情変更が生じた場合など,分担額の変更をやむを得ないものとする事情の変更が必要である。
 そこで,本件についてこれをみるに,前記認定のとおり,相手方は前件調停が成立してから×か月後に就職先を退職し,大学の研究生として勤務して収入を得る状況となっており,平成21年の収入は合計399万7890円となり,前件調停成立時に比して約3割減少していることを認めることができる。相手方は,退職の理由について,人事の都合でやむを得なかった旨主張するが,実際にやむを得なかったか否かはこれを明らかにする証拠がない上,仮に退職がやむを得なかったとしても,その年齢,資格,経験等からみて,同程度の収入を得る稼働能力はあるものと認めることができる。そうすると,相手方が大学の研究生として勤務しているのは,自らの意思で低い収入に甘んじていることとなり,その収入を生活保持義務である婚姻費用分担額算定のための収入とすることはできない。
 したがって,本件においては,相手方の転職による収入の減少は,前件調停で合意した婚姻費用分担額を変更する事情の変更とは認められない。

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