ケース貸し~デパ地下・スーパーに借地借家法適用?~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q スーパーの一画を借りて食品販売をしています。
  借地借家法の適用はあるのでしょうか。


デパ地下,スーパー,名店街・・・大きい店舗内の人間模様を描きます(?)

誤解ありがち度 3(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

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A 原則は↓
  展示ケースで囲ったエリア→適用なし
  名店街→適用あり


【ケース貸し】
当社は,食品販売をしています。
あるスーパーの1区画を借りているのです。
借地借家法は適用されるのでしょうか。

→「独立性・排他性」によって決まります。
ごく一般的な「ケース貸し」では借地借家法の適用は認められないでしょう。

一般論として,建物の内部の一部分,であっても,借地借家法の適用対象になり得ます。
しかし,「構造上及び利用上の独立性・排他性」がない場合は,借地借家法の予定する「建物」としては認められません。

【独立性・排他性の判断基準】
どのような事情によって,独立性・排他性を判断するのでしょうか。

→物理的状態,経営面でのオーナーの関与など,多くの要素を考慮します。

具体的・典型的な判断要素について,以下挙げます。

<独立性・排他性を肯定する事情>
・営業場所が障壁などによって他のエリアと区別されている
 周囲に壁があれば,入口に扉がない場合でも肯定されたケースもあります。
・内装・設備の設置がテナントの責任・負担で行われている
・内装・設備が容易に移動できない
・税金・警備費用・消防費用などを各テナントが負担している

<独立性・排他性を否定する事情>
・セール情報の広告費用をオーナーが負担している
・営業に関する許認可をオーナーが得ている
・テナントからオーナーに,一定の利益歩合金を払っている
・顧客の代金支払は,オーナー管理の(総合)レヂで行っている
・オーナーの指示により,営業場所を移動することができる契約になっている
・オーナーが経営・運営方針に関与できる
 従業員の審査,個別的商品の種類・品質・価格等について,オーナーが審査する,包装用紙をオーナーが指定する,など。

【大規模小売店舗立地法の届出】
営業の独立性について,参考となる資料はありますか。

→大規模小売店舗立地法の届出がヒントになることもあります。

スーパー・デパートなどの規模によっては(原則として売り場面積が1000平方メートル以上),一定の事項の届出義務があります。
届出内容の1つとして,対象店舗内で小売業を営む者,も含まれます。
実際には,入居テナントのすべてを届出に入れてあるということは少ないです。
小規模なものは除外されていることが多いです。
あくまでも参考の資料になるという程度に考えるべきです。

【ケース貸しの典型例】
具体的に,どのような場合に借地借家法が適用されたりされなかったりするのでしょうか。

→デパ地下のように商品展示ケースエリア→借地借家法適用なし
 「名店街」→借地借家法適用あり

特に重要なのは,物理的障壁,でしょう。
これがないと,原則的に独立性・排他性なし→借地借家法適用なし,となります。
<独立性・排他性なしの典型例>
・商品展示ケースだけで区切られている
・薄い板状の衝立(パーティション)だけで区切られている
<独立性・排他性なしの具体的形態>
・デパ地下の総菜売り場
・スーパーの総菜売り場

物理的障壁がある程度しっかりしていると,独立性・排他性あり→借地借家法適用あり,となります。
<独立性・排他性ありの典型例>
・4方向に「壁」がある
・オーナー(デパート・スーパーなど)とは別の看板が設置されている
<独立性・排他性ありの具体的形態>
・デパートの名店街

なお,「フードコート」については,他の要素によって判断が分かれるでしょう。
お客様が食事をする場所は共用となっています。
平均的には,「利用上の独立性」の程度が低いので,借地借家法の適用は否定される傾向にあります。

【ケース貸しの裁判例】
公的に判断された事例はありますか。

→肯定・否定の結論になった裁判例があります。

1 最高裁判所昭和30年2月18日
→借家法(賃貸借)の適用 否定
<重要な事情>
・店舗の位置(部分)は賃貸人から指定された
・商品の種類・品質・価格等について賃貸人が指示していた(営業方針に干渉できた)
・安全確保等の目的で適切な指示をすることができた(防火目的など)
・賃借人が設置した設備はいずれも定着物ではなく移動しうるものに限られていた
・包装用紙も賃貸人が指定していた
・従業員は賃借人が雇用したが,その適否も賃貸人が指示できた

2 浦和地方裁判所越谷支部平成2年4月20日
→借家法の適用 否定
<重要な事情>
・オーナーが商品陳列棚を設置した
・売上の11%をテナント料として設定していた
・売り場と他のエリアとのしっかりした区切りがなかった
・顧客の代金支払は,各「売り場」ではなく,オーナー管理の「レヂ」だった

3 東京地方裁判所平成8年7月15日(後掲)
スーパーマーケット内のパン売り場
→借家法の適用 肯定
<重要な事実>
・店舗の形状であった(壁によって他のエリアと区切られていた)
・実際にオーナー側の者が店舗に出入りすることはなかった
・内装はテナントが施工した
・店舗の場所が移動することはなかった

【東京地方裁判所平成6年(ワ)第1664号建物明渡請求事件平成8年7月15日(抜粋)】
2 以上認定したとおり、被告らは、本件店舗の中において原告の経営するスーパーマーケット部分とは明瞭に区画されている本件売場部分において、昭和四五年から現在に至るまでの長年の間、場所を移動することもなく、内装工事費や設備機材費等て自己負担のうえ、独自の経営判断と計算において、自ら開発した焼き立てパンの製造販売技術を用いて、営業を行ってきたものである。
 他方、原告は、被告ローゼンベツクから一旦売上金全額の入金を受け、経理上は全額売上げとして計上したうえで、売上金の一定割合の歩合金や諸費用を控除した残額を被告ローゼンベツクヘ支払う方式により、右歩合金等を取得するものであるが、原告は、本件売場部分での営業自体には関与していないばかりか、内装工事費や設備費用等すら負担することもなく、まさに本件売場部分を提供することの対価として、保証金や歩合金を取得しているものである。
 したがって、本件契約は、本件売場部分の使用関係に関する限り賃貸借に関する法の適用を受けるべきものと解するのが相当であって、その使用関係の終了については被告らは借家法の規定による保護を受けるベきものというべきである。
 なお、本件契約にかかる契約書第二〇条には、「この契約は特定商品の販売業務の委嘱に関するものであって特定の賃貸借契約ではないから乙(被告栄喜堂)は契約の終了にあたって損害金立退料補償等如何なる名目を問わず甲(原告)に対し金銭その他如何なる請求もすることはできない」と規定されている。しかし、これは、右文言自体から明らかなように、契約終了の際に被告栄喜堂から金銭的請求をすることができないことを確認することに主眼のある条項であるばかりか、借家法六条が強行規定であることから考えても、本件契約の実態に則して検討した右判断を左右するものではない。

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