借地権の無断譲渡~「建物の賃貸禁止」特約の効力~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 借りている土地上に建物を所有しています。
  引っ越そうと思っています。
  建物を他人に売ったり貸したりできるのでしょうか。
  「賃貸禁止」という条項があった場合はどうでしょうか。


最後のとこはちょっと難しい問題ですね。

誤解ありがち度 3(5段階)
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A 建物を売るのはNG,貸すのはOK
  特約がある場合は△


【借地権の無断譲渡】
私は土地を借りて(賃貸借契約),その上に自分の所有している家があります。
引っ越そうと思うのですが,この家は売りに出せるのでしょうか。

→借地権の譲渡に当たります。地主の承諾が必要です。

借地上の建物は,当然の前提として,「借地権」が必要です。
この場合,借地権は建物の「従たる権利」ということになります(民法87条2項類推解釈)。
従って,建物を売却した場合,自動的に,借地権もセットとなって移転します(譲渡されたことになります)。
ところで,賃借権については,譲渡・転貸の際に賃貸人(地主)の承諾が必要です(民法612条)
承諾がないまま賃借権(借地権)を譲渡・転貸した場合は,賃貸借契約を解除されることがあります。
つまり,地主の承諾を得ずに借地上の建物を売却した場合は借地契約を解除されるおそれがあるのです。
(なお,賃貸借契約ではなく,「地上権」の場合は異なります)

【民法】
(主物及び従物)
第八十七条  物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。
2  従物は、主物の処分に従う。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条  賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

【借地上の建物の賃貸】
借地上の建物に住まなくなったので,第三者に賃貸しても良いのでしょうか。

→地主の承諾なく,建物を賃貸できます。

借地上の建物を賃貸して第三者が居住したとしても,「土地」自体を第三者に確定的に渡したとは評価できません。
そこで,「借地権(賃借権)の譲渡・転貸」ということにはなりません。
結局,特に地主の承諾なく建物を第三者に賃貸することができるのです。
当然,地主から借地契約を解除されることもありません。

【「建物の賃貸禁止」特約の効力】
借地の契約書に「借地上の建物の居住者は借地人自身に限る」という条項があります。
この場合は建物を第三者に賃貸できないのでしょうか。

→「信頼関係が破壊されない」状態であれば建物を賃貸しても問題ないとされることもあります。

借地に関しては,特約のうち,借地人に不利なものは一定の範囲で無効とされます(借地借家法9条)。
「合理的客観的理由」があれば有効とされています。
また,仮にその特約が有効であっても,特約違反があった時点で,地主から主張する借地契約解除の効力が否定されることも少なくありません(信頼関係破壊理論)。
裁判例の趨勢としては,特約自体は有効として,契約解除の効力を大幅に制限する傾向が強いです(参考裁判例後掲)。

実際には個別的な事例によって判断が決まります。
主な判断要素は次のとおりです。

<解除が否定される例>
・借地人の親族が居住
 →想定される範囲内だから
・実際の建物の使用状況に大きな変化がない
 →地主に不利益が少ないから
・第三者が入居することについて借地人側に合理的理由がある
 →借地人を保護する必要性が高いから
・第三者の入居について地主が拒否する理由に合理性がない
 →地主に不利益が少ないから
・特約の設定自体に合理性がない
 →特約自体が無効とされるから

【借地借家法9条】
(強行規定)
この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。

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【浦和地方裁判所昭和52年(ワ)第727号執行文付与に対する異議事件昭和58年1月18日(抜粋)】
建物所有を目的とする土地賃貸借契約においては、借地人は一般に、借地上に自己が所有する建物を他に賃貸することは建物所有権に基づいて自由になし得るところであつて、借地人が借地上の自己所有建物を土地の賃貸人の承諾を得ないで第三者に賃貸して使用させたとしても、その故をもつて借地の無断譲渡転貸として土地の賃貸人が土地賃貸借契約を解除することはできないと解される。しかし、借地人が借地上の自己所有建物を他に賃貸して使用させることは、建物の使用を介して間接的な形においてではあつても、建物の敷地の使用・占有を必然的に伴うものであることに みると、賃貸人と賃借人の合意により、借地上の建物を他に賃貸することを特約で禁止することは、それが賃貸借期間の全部にわたるものであつても、そのような特約をなす合理的客観的理由が存する場合には許されないものではないと解するのが相当である。そして、調停において、右のような特約が合意されるとともに、右特約に違反した場合には土地の賃貸人において土地賃貸借契約を解除することができ、そのときは賃借人は土地を明渡さなければならないとの条項が定められても、賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的債権関係であることに照らすと、右条項は、賃借人が土地上の建物を他に賃貸したすべての場合に当然に解除が効力を生じるものと解すべきものではなく、形式的には右特約に違反しても、賃貸人と賃借人との信頼関係を破壊するに至らない特別の事情のある場合には、右条項に基づく賃貸借契約の解除は効力を生じないものと解すべきであるから、このような制約の存することを前提とする以上右条項を無効とすべき理由はない。