借地借家法の適用~公営・公団・公社住宅~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 公営や公団住宅だと一般のアパート・マンションと違いますか。

意外とこれまたややこしいのです。

誤解ありがち度 4(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

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A 公営・公団・公社住宅いずれも借地借家法の適用あり。
  ただし,公営住宅は「公営住宅法」が「原則」優先。


【借地借家法の適用(建物貸借)】
借地借家法の適用がない建物賃貸借というのはあるのでしょうか。その場合どのように違いが出るのですか。

→建物の賃貸借については借地借家法が適用されるのが原則です。ただし,例外として適用されない場合もあります。適用されない場合,借地借家法による借主保護のルールが適用になりません。

建物の賃貸借一般に借地借家法が適用されます。
借地借家法の1条(趣旨)や26条以降(「第3章 借家」)において「建物の賃貸借」としか規定していないからです。
例外として適用されない場合としては,借地借家法の条文(26条;一時使用目的)や解釈上「建物」に該当しない,というケースが挙げられます(例は後掲)。
借地借家法が適用される原則的ケースでは,民法上の「賃貸借」よりも借地借家法のルールが優先されます。
その結果,借主が保護されることになります。
逆に,借地借家法の適用がない場合はこれらの「借主保護」が適用されないこととなります。
この「保護」は非常に強いので,借地借家法の適用の有無自体が熾烈に争われるケースは多いです。
<借地借家法による借家人保護の例>
・契約期間は更新が原則
 更新拒絶や解約申入の制限,一定の猶予期間が必要
・賃料増額には合理的な理由が必要

<借地借家法の適用の有無>
・一時使用目的の建物賃貸借
 →適用なし(借地借家法26条)
・公営住宅
 →適用あり,ただし公営住宅法が優先される。
・公団・公社住宅
 →適用あり
・社宅
 →賃料などの状況によって異なる
・間貸し
 →居住スペースの独立性などの状況によって異なる
・ケース貸し
 →適用なし(原則)
・ウィークリー・マンスリーマンション
 →適用あり,ただし定期借家契約・一時使用目的賃貸借とされていることが多い

【借地借家法】
(一時使用目的の建物の賃貸借)
第四十条  この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない。

【公営住宅】
公営住宅は借地借家法の適用があるのでしょうか。

→借地借家法が適用されます。ただし,公営住宅法に規定があるものは借地借家法よりも公営住宅法の規定が優先されます。

公営住宅における貸主と借主の関係は,あくまでも私法上の建物賃貸借契約です。
そうすると,借地借家法(旧借家法)が適用されます(裁判例後掲)。
しかし,公営住宅法に賃料の設定についてなどのルールがあります。
借地借家法と重複した形となっています。
この場合は,公営住宅法が優先となります。
ただし,公営住宅法では借主の保護が不十分,ということもあります。
特に解約・退去要求の場面です。
この場合は,解約に正当事由を必要とするなど,公営住宅法と借地借家法の両方を適用するという判例もあります(後掲)。
結論をまとめて言えば,次のとおりです。
<まとめ>
基本的には公営住宅法が優先ではあるが,借地借家法による「借主保護」は適用される

【公団住宅,公社住宅】
公団・公社住宅には借地借家法が適用されないのでしょうか。

→ストレートに,借地借家法が適用されます。

公団住宅,公社住宅とも,その制度自体を定める法律に基いて運営されています。

<根拠法>
公団住宅→旧日本住宅公団法
 ※現在は独立行政法人都市再生機構(UR)が運営
公社住宅→地方住宅供給公社法

これらの根拠法は運営内部のルールが定められており,入居者との間のルールは定められていません。
結局,入居者(賃借人)と所有者(事業主)との関係は,借地借家法が全面的に適用されます。

「借地借家法が適用にならないケース」はおもしろものがあります。
これはまた別の話し。

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【東京地方裁判所昭和56年(ワ)第14821号建物賃料等請求事件昭和62年10月26日(抜粋)】
このように、上記説示の、法の家賃の決定、変更に関する諸規定の目的、内容、構造に照らすと、法一三条及びこれに基づく諸規定は、家賃の増減事由及び方法について定めた借家法七条一項の特則として定められたものであることは明らかであるから、右の公営住宅の家賃の変更事由等については、専ら特別法たる法一三条等の諸規定の適用があり、借家法七条一項の規定の適用は排除されているというべきであり、(略)

【最高裁判所第2小法廷昭和62年(オ)第143号建物明渡請求事件平成2年6月22日(抜粋)】
原審は、公営住宅法に基づく公営住宅の使用許可による賃貸借についても、借家法が一般法として適用され、同法一条ノ二に規定する正当の事由がある場合には、同条により解約の申入をすることができ、東京都営住宅条例(昭和二六年東京都条例第一一二号)二〇条一項六号は適用されないものとしたうえ、適法に確定した事実関係の下において、同号の使用許可の取消の意思表示をその主張事実から借家法一条ノ二による解約申入とし、その正当の事由を肯認し、権利の濫用に当たらないとして、被上告人の本件明渡請求についてこれを認容したものであって、右判断は正当として是認することができる。