借地非訟事件,介入権~裁判所が介入してそこに地主が介入?~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 借地・貸地では地主に代わって裁判所が許可という制度があるのですか。
  地主は承諾されてしまう場合,対抗措置はないのですか。


いわゆる「借地非訟」ですね。「介入権」もあります。

誤解ありがち度 3(5段階)
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A 一定の場合,裁判所が地主に代わって許可する制度があります。
  地主の優先的な買取権(介入権)があります。


【借地非訟事件の種類】
借地に関して,本来は地主と協議して決めるはずなのに,協議が決裂したら裁判所が代わりに許可をくれる制度はどのようなものがありますか。

→細かく分類すると5種類あります。大きな分類では3タイプです。

<大きな分類>
・借地の条件変更
・借地上の建物の建て替え
・借地権の譲渡

<細かい分類>
1 借地条件変更申立事件(条件変更事件;借地借家法17条)
「条件」の例としては「借地上の建物は,木造建物に限る」といったものが典型です。
例えば,この建物を鉄筋のビルに建て替えたい場合,「借地条件」を変更する必要があります。
地主との協議が成立しない場合,借地人は裁判所に借地条件変更の裁判を申し立てることができます。

2 増改築許可申立事件(増改築事件;借地借家法18条)
ほとんどの借地契約には,「借地上の建物の建替え・増築・改築(修繕)等をする場合には土地所有者の承諾が必要である」という規定(特約)があります。
ここで,特約どおりに地主の承諾をもらおうと申し入れても地主が承諾しないということがあります。
実際には承諾料の金額について合意に達しないということが多いです。
こんな場合に,借地人は裁判所に,「土地所有者の承諾に代わる増改築の許可の裁判」を申し立てることができます。

3 賃借権譲渡許可申立事件(譲渡事件;借地借家法19条)
一般の借地契約は「賃貸借契約」であることがほとんどです。
従って,借地人が借地上の建物を譲渡する場合には,譲渡について土地所有者の承諾が必要です(民法612条)。
地主の承諾が得られない場合,借地人は,「土地所有者の承諾に代わる許可の裁判」を申し立てることができます。

4 競売または公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件(公競売事件;借地借家法20条)
裁判所の競売手続で借地上の建物を買い受けた人は,借地権も一緒に取得することになります(従たる権利;民法87条2項類推)。
これも一種の「借地権」の譲渡,に近い状態です。
やはり,借地権の譲受けについて土地所有者の承諾が必要です(民法612条)。
そこで,競落人が地主の承諾を得られない場合,「競売に伴う賃借権譲受許可の申立」をすることができます。

5 借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受申立事件(介入権事件;借地借家法19条3項,20条2項)
上記3(譲渡事件)と4(公競売事件)の場合,地主には借地権を借地上の建物と一緒に優先的に買い取ることができる権利があります。
これを「介入権」と呼んでいます。

【借地非訟事件の意義】
他の賃貸借契約などの取引ではこのような「非訟事件手続き」はないのに,借地の場合は制度があるのはなぜでしょう。

→長期にわたる継続的契約であり,かつ,対象物の価値が大きいからです。

借地・貸地に関しては,借地人が建物を所有し,居住したり,建物を賃貸することにより建物を活用します。
地主・借地人との協議が行き詰まり,不動産の活用が実際にストップしてしまうと非常に不経済です。
そこで,一定の場合については,裁判所が地主に代わって許可を出す,という制度があります。
これを「借地非訟事件」と呼んでいます。「訴訟」とは違う概念です。
「非訟事件」という意味ですが,専門的には「裁判所の裁量的判断により,権利義務の具体的内容の形成を目的とする事件」とされています(最高裁判所昭和40年6月30日)。
簡単に言えば,「借地権が存在するか否か」という「権利の有無」,ではなく,承諾する対価(承諾料)をいくらにするか,という「内容」を「裁量」をもって判断する,ということです。
ごく簡略化して言えば,「非訟事件」というのは「ミニ裁判」とも言えます。

【介入権】
どのような場合に「介入権」が使われるのでしょうか。

→評価額が判明して,地主の予想よりも低い場合が典型例です。

一般の借地権売却や競売において,地主が「第三者に売るのを承諾するくらいならば自分自身が買い取りたい」と考えることがあります。
勿論,裁判が始まる前の交渉段階で,スムーズに話が進めば自然と地主が借地権を買い取る(買い戻す)ことになったはずです。
しかし,一般的には,地主が借地権を買い取る場合でも,金額で折り合いがつかない場合があります。
その結果として,借地人としては,第三者に売却した方が高く売れる,という流れになることがあるのです。
まさにこのような状態で地主・借地人間で協議が決裂した場合が,譲渡許可の申立に至る典型例です。
譲渡許可の非訟事件手続きの中では,主に承諾料の金額を定めることが主要な作業となります。
その大前提として,借地の評価額が重要です。
審理としては,借地の評価を進めます。
その中で,借地の評価がある程度低く出た場合,地主としては,「承諾料をもらうよりは自分で買い取った方が良い」と考えることもあります。
その場合,地主は最優先で「買い取る」ことができるのです。
この「介入権」ですが,裁判所の取扱としては,1つの「申立」として扱います。
形式的には1つの「手続き(事件)」とされます。
実質的には,譲渡承諾の申立(非訟手続き)の一環となっています。

【借地借家法(抜粋)】
(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
19条3項
第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。

(建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可)
20条2項
前条第二項から第六項までの規定は、前項の申立てがあった場合に準用する。

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