質屋で発見した私のアクセ;ペットは?~即時取得と質屋・古物商~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 以前から盗まれたか紛失したと思っていた宝石のアクセサリーを質屋で見つけました。
  きちんと証明すれば返してもらえるのでしょうか。
  仮に行方不明になったペットが,拾った人に飼われていた場合は?


結構複雑なんです。
質屋営業法,古物営業法とも絡んできます。

誤解ありがち度 5(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

ランキングはこうなってます
このブログが1位かも!?
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ
↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑

A アクセの返還請求は紛失から2年以内なら可能です。
  有償or無償は細かいルールがあります。
  ペットは戻ってくる,が原則。


【即時取得】

以前から盗まれたか紛失したと思っていた宝石のアクセサリーを質屋で見つけました。
きちんと証明すれば返してもらえるのでしょうか。

→大原則は返してもらえません。

どのようなルートをたどったか分かりませんが,アクセサリーを盗んだ人または拾った人が質屋に質入れしたという想定で考えます。
結果的に,「所有権」はあなたにはないと思われます。
民法の原則から考えると,あなたは「所有権」を誰にも渡してない(合意がない)ので,「所有権」はいつまでもあなたにあるはずです。
しかし,この原則を破るすごい例外規定があるのです。
売買でも贈与でも,「取引」において,その対象物を取得した方が裏事情(「盗品」「遺失物」ということ)を知らなかった場合は「所有権」を取得します(民法192条)。
即時取得とか善意取得,と呼んでいます。
本来所有者ではない人が「所有権」を取得した,その結果として,本来の所有者であるあなたから「所有権」が消滅することになります(反射的効果)。
あなたは「所有者」ではないので,対象物(アクセサリー)を返すよう請求できないことになります。
ただし,これは即時取得の原則的ルールが適用された場合です。
さらに例外的なルールもあります。

【民法192条(即時取得)】
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

【盗品・遺失物の回復請求権】
私はアクセサリーを紛失した被害者です。何とか返してもらうことはできないのでしょうか。

→盗難または遺失から2年間は返還請求ができます。

即時取得は非常に強力な制度です。
紛失した者が犠牲になります。
そこで,2年間限定ですが,例外的に「回復請求」ができるルールがあります(民法193条)。
【民法193条(盗品又は遺失物の回復)】
前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。

【回復請求の有償・無償】
質屋にアクセサリーを返してくれるように言ったら,代金を払って欲しい,と言われました。払わないといけないのでしょうか。

→紛失から1年以内であれば無償となります。それ以上の場合は有償となる可能性があります。

回復請求ができるとしてもそれが有償になるか,無償となるかはちょっと複雑です。

1 質屋が「盗んだ人または拾った人」から直接入手した場合
「無償」となります。
簡単に言えば,質屋が入手する際に,ある程度は盗品や遺失物であることを疑うべきだった,一定のリスクを負うべきだ,という考えが根底にあるのです。
2 質屋が「他の商人(店舗など)」から入手した場合
「有償」となります(原則)。
代金を支払わないと返してもらえないということです。
他の商人から入手した場合は,さすがに「元をたどると盗品かもしれない」と疑ってかかるのは不合理です。
極端に言えば,そんなことを言っていたら流通が成り立ちません。
そこで,「商人から入手した」という場合は,回復請求は有償とされています(民法194条)。
2-2 質屋特有のルール
現在の所持者が古物商,質屋の場合は特別なルールがあります。
1年以内であれば「無償」となります。
質屋が他の商人から入手した場合は,原則として回復請求は「有償」となります。
しかし,古物営業法,質屋営業法によって,「1年間」だけは「無償」とされています。
盗まれた人などをより保護する趣旨のルールです。
逆に言えば,質屋や古物商(中古品販売店)は,「商品をタダで誰かに渡すことになるかもしれない」というリスクを元々負っているということになります。

【民法194条】
第百九十四条  占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
【古物営業法20条(盗品及び遺失物の回復)】
古物商が買い受け、又は交換した古物(商法 (明治三十二年法律第四十八号)第五百十九条 に規定する有価証券であるものを除く。)のうちに盗品又は遺失物があつた場合においては、その古物商が当該盗品又は遺失物を公の市場において又は同種の物を取り扱う営業者から善意で譲り受けた場合においても、被害者又は遺失主は、古物商に対し、これを無償で回復することを求めることができる。ただし、盗難又は遺失の時から一年を経過した後においては、この限りでない。
【質屋営業法22条(盗品及び遺失物の回復)】
質屋が質物又は流質物として所持する物品が、盗品又は遺失物であつた場合においては、その質屋が当該物品を同種の物を取り扱う営業者から善意で質に取つた場合においても、被害者又は遺失主は、質屋に対し、これを無償で回復することを求めることができる。但し、盗難又は遺失のときから一年を経過した後においては、この限りでない。

【ペットの即時取得】
ペットを拾われた場合も,アクセサリーと同じように,「所有権」を失うのでしょうか。

→一般にペットとなっている動物については「所有権」を失うことはありません。

民法195条で,動物の場合にも即時取得に似ているルールが規定されています。
正式には「動物の占有による権利の取得」と言います。
条文を分析的に説明します。
3つの要件を満たすと,拾った人が「所有者」(新たな飼主)になります。
<ペットの主が新飼主に変わる場合>
1 『家畜以外の動物』
2 『占有の開始の時に善意』
飼主がいることを知らずに入手した,という意味です。
3 『1か月以内に飼主から回復の請求を受けなかったとき』

以上を学ぶと「あ,うちのネコちゃんが居なくなったら1か月以内に探し出さないと飼主が変わっちゃう」と心配になることでしょう。
でも違います。大丈夫です。
「1」の「家畜」がポイントです。
「家畜」と言うと,牧畜的なイメージがあって,猫・犬のような愛玩動物(ペット)は含まれない(=「家畜以外の動物」に該当)と思われる方が多いでしょう。
しかし,法律解釈はそのようになっていません。
「家畜」には,犬・猫などの一般的な愛玩動物,が含まれます。
ペットには失礼ですが,大審院(現在の最高裁)の判例ではそのようになっています(大判昭和7年2月16日)。
結論としては,「家畜以外の動物」=「野生動物」ということです。
ですから,珍獣を飼っている,という場合は,仮に拾われたら,見た目「野生動物」だから拾った人が飼主になってしまう可能性があります。
しかしその場合でも,「首輪が付いている」とか「人になついている」という場合は,「2」の「善意」に該当しなくなります。
要は「仮に珍しい動物を拾っても,その状況から,『誰か飼主がいるな』と分かるはず」ということです。
結局,この条文によって「飼主が変わる」ということはほとんどありません。
拾って飼い始め,情が湧いたペットでも,「以前の飼主」が現れたら渡さないといけない,ということです。
ペットの場合,「育ての親 より 元の親」ということになります。
仮に,家族になったペットが泣く泣く元の親に戻ってしまった,という場合は・・・
離婚時の親権問題を応用して,定期的に写真を送るとか面会するとかの解決法を推奨します。

【民法195条(動物の占有による権利の取得)】
家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。

<<告知>>
みずほ中央リーガルサポート会員募集中
法律に関する相談(質問)を受け付けます。
1週間で1問まで。
メルマガ(まぐまぐ)システムを利用しています。
詳しくは→こちら
無料お試し版は→こちら

<みずほ中央法律事務所HPリンク>
PCのホームページ
モバイルのホームページ
特集;高次脳機能障害

ランキングはこうなってます
このブログが1位かも!?
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ
↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑

労働・企業法務に関するすべてのQ&Aはこちら
震災特例法に基づく被災者(会社)の負担軽減策。税金の還付請求など。by国税庁
個別的ご相談,助成金申請に関するお問い合わせは当事務所にご連絡下さい。
お問い合わせ・予約はこちら
↓お問い合わせ電話番号(土日含めて朝9時~夜10時受付)
0120-96-1040
03-5368-6030