接道要件・私道・通行権~噛み砕きシリーズ~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 私道でも接道要件は満たすのですか。
  私道でも他人が通って良いのでしょうか。
  とにかく,私道と道路?意味がよく分からなくなります。


ややこしいのです。

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A 「指定」を受けると「道路」です。
  通行権は別の問題です。

  
【建築基準法上の「道路」として扱われる「私道」】
→「私道」が「位置指定」または「2項道路として指定」を受ければ「道路」として扱われます。

いわゆる公道であれば,「道路」として扱われるのが原則です。
私道についてはちょっと注意が必要です。
見た目では,一般の人が自由に通行していても,「実は建築基準法上の『道路』ではない」ということもあります。
<建築基準法上の「道路」となる「私道」>
1 特定行政庁の「道路位置の指定」を受けている
  →「位置指定道路」(建築基準法42条1項5号)
2 建築基準法42条2項の道路,として特定行政庁から指定を受けている
  →「2項道路」(建築基準法42条2項)
※特定行政庁=都道府県知事または市区町村長

【建築基準法(抜粋)】
42条1項5号
土地を建築物の敷地として利用するため、道路法 、都市計画法 、土地区画整理法 、都市再開発法 、新都市基盤整備法 、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法 又は密集市街地整備法 によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの
42条2項
この章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、(以下省略)

【位置指定道路,2項道路となった私道の扱い】
→道路して維持されます。所有者は建造物を建てられません。

当然,接道要件の前提としての「道路」となります。
位置指定道路,2項道路に接する土地所有者は建物を建築する上でメリットがあります。
一方で,私道の所有者は,その私道を道路として維持しなくてはならなくなります。
要は,私道上に建造物を建てるとかは禁止されるということです。

【位置指定道路,2項道路と通行権】
→第三者は,その「私道」(位置指定道路,2項道路)について,「通行権」(地役権など)を取得するわけではありません。

位置指定道路,2項道路には,その所有者でも建造物を建てられません。
見た目は「道」です。
第三者もその私道を意識せずに通行するでしょう。
しかし,それはあくまでも道路としての指定を受けたことの反射的な結果です。
通行者が「通行する権利」(通行地役権など)を持ったわけではありません。

【第三者の通行を阻止】
→通行の差止や損害賠償請求が考えられますが,難しいこともあります。

例えば,次のような方法が考えられます。
・「関係者以外立ち入り禁止」という立て看板を掲げる
・自動改札のようなゲートを設置して,ICタグを持った関係者だけが通行できるようにする

【第三者の通行を阻止できない場合】
→自由に通行できる状態が長期間継続している場合は,途中から通行を禁止することはできなくなります。

長期間,自由に誰でも通行できる状態が続くと,通行者の日常生活に溶け込みます。
既成事実が優先という結果です。
私道所有者からではなく,通行者からの「妨害排除請求権」を正面から認めた最高裁判例があります(後掲)。
「日常生活上不可欠の利益」という言い方をしています。
要は「今まで使わせてくれたやん。急にダメと言われても困るよ」という意味です。
逆方向に,かつ格言調に言えば,私道所有者は「黙っていると損をする」「恩をあだで返す(返される)」ということです。

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【最高裁判所平成8年12月18日(要旨)】

 道路位置指定を受け現実に開設されている道路を公衆が通行することができるのは,本来は道路位置指定に伴う反射的利益にすぎず,その通行が妨害された者であっても道路敷地所有者に対する妨害排除等の請求権を有しないのが原則。
 しかし,現実に開設されている2項道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は,右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され,又は妨害されるおそれがあるときは,敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り,敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有する。