ということは,借地人に明渡を要求する時に明渡料が不要なのですか。
ハイレヴェルです!マニアックというか。
でも,震災の影響で建物が損壊→明渡の方向へ→その中でこの問題が表面化
ということは出てきているようです。
誤解ありがち度 4(5段階)
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A 明渡料は安い金額になるでしょう。完全ゼロは難しいですが。
確かに,「無償返還の届出」は,税金対策が目的です。
これをやっておかないと,税務署が家庭にズカズカ入ってくるというのは別の話しでした。
そうこうしていると,明渡という場面で,借地人サイドから,
「届出は税務署向けで,対借地人ではそう甘くはいかねーぜ!借地権価格として更地の7割をくれ!」
という主張がされることがこれまたよくあります。
普通そんな主張はおかしい,とお思いかもしれませんが,相続とかで当事者が変わっているといろんな主張が繰り出されます。
当然,争われてくると,裁判所の登場です。
で,裁判例の傾向ですが。
「対税務署(公法)・対借地人(私法)で別の解釈」は認めていません。
裁判例を末尾に引用します。
なお,この裁判例は,直接当事者間における「無償返還」が争われたものではありません。
相続税申告における土地評価が更地という前提になる,というものです(正確には↓)。
・底地評価(借地権割合70%を控除)→NG
・自用地評価→OK
その判決文の一部で,私法上の効果が判断されているのです。
では「無償返還の届出」のとおりに,地主から借地人に,無償での明渡を請求できるのでしょうか。
賃貸借契約期間の満了時に「更新拒絶」と主張するわけですが。
結論。
明渡料は低廉でしょうけど,無償とはなりにくいです。
「無償返還の届出」がなされていても,地代が払われている以上,借地として扱われます。
そうすると,期間満了時には,正当事由がない限りは更新されます。
更新を止める場合は,特殊な事情がない限りは正当事由が認められることは少ないです。
正当事由が弱い分,言いかえると「不足分」を金銭で付け足すことになります(正当事由の補完としての明渡料)。
ただし,明渡料の算定としては,一般的な場合(=借地権価格をベースとする)とは異なり,大幅に低廉になるはずです。
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【東京地方裁判所 平成20年7月23日(抜粋)】
(5) 原告は,さらに,仮に本件届出書に係る無償返還合意が有効であっても,その基礎となる特殊な関係は一身専属的で相続性がない旨主張する。
しかしながら,①上記(2)のとおり,本件賃貸借契約の締結に際し,土地所有者から借地人に対し何ら経済的価値が移転しておらず,前記2(2)イ(イ)及び(ウ)にいう借地人に帰属すべき利益もなかったという経済的実態が,本件届出書の提出により,その時点における状況として明らかにされており,また,②上記(3)のとおり,本件届出書に係る無償返還届出は,認定課税の回避という課税上の利益を享受するための公法上の行為として課税庁に対して行われ,現にこれを享受し得る効果を伴うものとして有効に成立していると認められる以上,当該届出に係る無償返還合意における一部当事者の私法上の地位が相続によりAから原告及びGに承継されたことによって,上記①の経済的実態が左右されるものではなく,また,上記②の届出の税法上の効果が影響を受けるものでもないので,上記主張は理由がない。