死亡の慰謝料,基準はいくら? | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 交通事故で死亡した場合に,一体,どんな賠償がされるのでしょうか。
  特に慰謝料については,どのように計算されるのかを知りたいです。

死亡事故の場合は,当然,遺族が具体的に加害者(多くの場合は実質的に保険会社)と交渉したり訴訟をすることになります。
賠償額の計算は複雑,と言いますか,項目が多いです。
そして,慰謝料については,「心の凹み」を金額化するものです。
基準がないと適当になってしまいますし,また基準が強すぎても,個別的な事情が無視されます。
実務では適正な金額の算定に苦労するところです。

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A 項目としては,治療費,葬儀費用,逸失利益(将来の収入),慰謝料,弁護士費用が主なものです。
  慰謝料については,遺族全員のトータルで2000万円~2800万円が「目安」となっています。

治療費,葬儀費用は,まさに実際にかかった金額,ということで領収証を集めれば計算は単純です。
逸失利益は,「仮にそのまま生存していたら,将来寿命までの間にどのくらい収入があったか」です。
原理は簡単です。
ただ,実際には,考えることは多いです。
例えば,収入は死亡直前のものを使えば良いのか,
つまり,将来収入が上がったり下がったりする可能性をどう考えるのか,
とか。
また,生きていれば将来「経費」(生活費)もかかるだろうから,収入がすべて貯蓄されていくわけではない,
ということも考える必要があります。
さらに,賠償金を払うと,受け取った方は,その後預貯金などで利子が増えることになります。
生存していれば,収入は少しずつなので利子は対して付きません。
ということで「まとめ払い」の分,もらう方は有利になるので,その分差し引く計算が必要です。
「中間利息控除」と言います。この計算方法も結構マニアックです。

弁護士費用,については,訴訟まで至ると,当然弁護士の業務も大変になり,費用もかかります。
これについてもよく考えると加害者が事故を起こしたことに原因があります。
一定の限度で賠償額に算入されることになっています。

で,質問で指摘されている慰謝料,です。
裁判所で用いられる基準(赤い本)では,アバウトな「目安」が記載されています。
「一家の支柱」であれば2800万円,と。
ちなみに,これは遺族全員分の総額です。
え?とお思いでしょう。
厳密に言うと,慰謝料というのは,次の2つがあります。
1 被害者本人が加害者に請求する慰謝料(本人の慰謝料)→これが遺族に相続される
2 被害者の遺族自身が加害者に請求する慰謝料

とにかく,合計で目安が決められています。
ということで,個別的事情によって金額は変わってきます。

その一例として,裁判例を末尾引用します。
タクシードライバーが対向トラックに踏みつぶされた→被害者は流血がひどく,無残さが高かった
というケースです。
慰謝料としては,
被害者本人分2600万円,妻分200万円,子1人分100万円(2人で200万円)で,合計3000万円と算定されました。
「目安」より若干上乗せ,ということになっています。

他の項目についての賠償を含めるとトータルで7000万円ちょっとです。
勿論,既払いの分は最後に差し引かれていますが。
あくまでも一例でした。


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<裁判例(抜粋)平成18年5月10日東京地方裁判所>
理   由

2 請求原因(3)(損害)ア(Dの損害)について
(1)通院交通費 1万640円
   前示争いのない事実に,証拠(甲2,3の1ないし3,35,36の10・22)及び弁論の全趣旨を総合すると,Dは,昭和26年*月*日生まれの男

子(本件事故の当時52歳)であるところ,本件事故の結果,胸腔内臓器損傷等の傷害を負い,平成16年5月15日から死亡した同月18日までの4日間,G

病院に入院したこと,同月15日に二男である原告C(昭和55年*月*日生まれ)が,同月16日から18日まで長男である原告B(昭和50年*月*日生ま

れ)及び原告Cがそれぞれタクシーを利用して同病院にDを見舞ったこと,原告らの自宅から同病院まで公共交通機関を利用した場合の料金は,片道760円で

あることが認められ,Dの受傷の部位,程度等に照らすと,その子である原告B及び原告Cによる見舞いの必要性,相当性は認められるものの,本件事故の当日

はともかく,その後の期間については公共交通機関の利用が困難であるなどタクシー利用の必要性を認めるに足りる事情はうかがわれない上,タクシー料金を支

出したことを的確に裏付ける証拠に欠けることからすると,本件事故と相当因果関係がある通院交通費は,次の計算式のとおり算出される1万640円を認める

のが相当である,
   760円×2+760円×2×2名×3日=1万640円
(2)葬儀関係費用 150万円
   証拠(甲4の1ないし10)及び弁論の全趣旨によると,Dの葬儀関係費用として150万円を超える支出がされたことが認められ,本件事故と相当因果

関係のある損害としては150万円を認めるのが相当である。
(3)休業損害 5万4243円
   前示事実関係に証拠(甲5,35,36の22)を総合すると,Dは,本件事故の当時,Hにおいてタクシー乗務員として勤務しており,本件事故の結果

,4日間の休業を余儀なくされたこと,本件事故前3か月間に支給された給与(付加給を含む。)の合計額は,124万7185円であることが認められ,本件

事故と相当因果関係のある休業損害は,次の計算式のとおり算出される5万5430円を認めるのが相当であるところ,原告らが主張する額5万4243円は,

これより控え目であるから,同額を認める。
   124万7185円÷90日×4日≒5万5430円
(4)逸失利益 3532万2254円
  ア 稼働収入の逸失利益 3177万712円
  (ア)定年までの逸失利益 2349万5491円
     請求原因(3)ア(エ)(逸失利益)a(稼働収入の逸失利益)(a)(定年までの逸失利益)の事実は,当事者間に争いがない。
  (イ)定年後の逸失利益 827万5221円
    a 原告らは,請求原因(3)ア(エ)a(b)(定年後75歳までの個人タクシー事業による逸失利益)のとおり,Dは,本件事故に遭わなければ,

61歳でHを定年退職した後は,個人タクシー事業を営み75歳まで稼働することができたなどと主張し,証拠(甲5,8,9ないし11,13の1・2,14

,15,35,36の22)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。
    (a)Dは,昭和26年*月*日生まれの男子で,昭和45年に高等学校を卒業後,名古屋の薬品販売会社,運送会社における勤務,自営の内装工事の

仕事を経て,平成12年9月1日から,Hにおいてタクシー乗務員として稼働するようになり,妻である原告Aを扶養していた(Hが発行したDの平成15年分

給与所得の源泉徴収票には,配偶者を除く扶養親族の記載がない。)ところ,将来は,個人タクシー事業を始める意思を有していた。
    (b)関東運輸局長が平成13年12月27日付けで公示した「一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシー事業に限る。)の許可及び譲渡

譲受認可申請事案の審査基準について」は,個人タクシー事業の許可及び譲受けの認可の申請の審査基準について,おおよそ次のように定めている。
      ① 営業区域
        (省略)
      ② 年齢
        申請日現在で65歳未満であること。
      ③ 運転経歴等
       Ⅰ 有効な第二種運転免許(普通免許又は大型免許に限る。)を有していること。
       Ⅱ 申請日現在における年齢が40歳以上65歳未満の者は,
       (あ)申請日以前25年間のうち,自動車の運転を専ら職業とした期間(他人に運転専従者として雇用されていた期間で,個人タクシー事業者又

はその代務運転者であった期間を含む。)が10年以上であること。この場合,一般旅客自動車運送事業用自動車以外の自動車の運転を職業とした期間は50パ

ーセントに換算する。
       (い)申請する営業区域において,申請日以前3年以内に2年以上タクシー・ハイヤーの運転を職業としていた者であること。
      ④ 法令遵守状況
       Ⅰ 申請日以前5年間及び申請日以降に,次に掲げる処分を受けていないこと。また,過去にこれらの処分を受けたことがある場合には,申請日

の5年前においてその処分期間が終了していること。
       (あ)道路運送法又は貨物自動車運送事業法の違反による輸送施設の使用停止以上の処分又は使用制限(禁止)の処分
       (い)道路交通法の違反による運転免許の取消しの処分
       (う)タクシー業務適正化特別措置法に基づく登録の取消し処分及びこれに伴う登録の禁止処分
       (え)自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の違反による営業の停止命令又は営業の廃止命令の処分
       (お)刑法,暴力行為等処罰に関する法律,麻薬及び向精神薬取締法,覚せい剤取締法,売春防止法,銃砲刀剣類所持等取締法その他これに準ず

る法令の違反による処分
       (か)自らの行為により,その雇用主が受けた道路運送法,貨物自動車運送事業法又はタクシー業務適正化特別措置法に基づく輸送施設の使用停

止以上の処分
       Ⅱ 申請日以前3年間及び申請日以降に,道路交通法の違反による処分を受けていないこと。ただし,申請日の1年前以前において,反則点1点

を付された場合又は反則金の納付のみを命ぜられた場合のいずれか1回に限っては,処分を受けていないものとみなす。
       Ⅲ Ⅰ又はⅡの違反により現に公訴を提起されていないこと。
      ⑤ 資金計画
       Ⅰ 所要資金の見積りが適切であり,かつ,資金計画が合理的かつ確実なのものであること。なお,所要資金は次の(あ)ないし(え)の合計額

とし,各費用ごとに以下に示すところにより計算されているものであること。
       (あ)設備資金((う)を除く。)
          80万円以上。ただし,80万円未満で所要の設備が調達可能であることが明らかな場合は,当該所要額とする。
       (い)運転資金
          80万円以上
       (う)自動車車庫に要する資金
          新築,改築,購入又は借入等自動車車庫の確保に要する資金
       (え)保険料
          自動車損害賠償保障法に定める自賠責保険料(保険期間12か月以上)並びに対人8000万円以上及び対物200万円以上の任意保険又

は共済に係る保険料の年額
       Ⅱ 所要資金の100パーセント以上の自己資金(自己名義の預貯金等)が申請日以降常時確保されていること。
      ⑥ 営業所,事業用自動車,自動車車庫,健康状態及び運転に関する適性,法令及び地理に関する知識
        (省略)
    (c)Dは,平成15年8月及び12月の2回にわたり,Hの代表取締役から,無事故,無違反で2万3000キロメートルを走破するなど優秀な成績

を修めたなどと表彰された。
    (d)個人タクシー事業の許可及び譲受けの認可の申請について,平成15年度における東京の場合,許可率は78.9パーセント,認可率は同年6月

が96.9パーセント,同年10・11月が88.3パーセントであった。
    (e)社団法人東京都個人タクシー協会が個人タクシー事業者300名の平成14年における輸送実績(1名当たりの平均)を分析したところ,収入は

689万7061円,管理費(人件費(事業主),交際費,租税公課,諸負担金,福利厚生費,賃借料)は401万8917円であった。
    (f)社団法人全国個人タクシー協会の調査によると,平成16年5月1日現在において,個人タクシー事業者4万4961人のうち,60ないし64

歳の者が8738人(19.4パーセント),65ないし69歳の者が7408人(16.5パーセント),70ないし74歳の者が5152人(11.5パー

セント),75ないし79歳の者が973人(2.2パーセント),80歳以上の者が144人(0.3パーセント)であり,同年度上半期において,個人タク

シー事業を譲渡廃業した者の平均年齢は70.1歳(最高76歳,最低47歳),一般廃業した者の平均年齢は70歳(最高87歳,最低42歳),死亡廃業し

た者の平均年齢は62.8歳(最高79歳,最低41歳)であった。
    b しかしながら,Dは,本件事故の当時,個人タクシー事業の許可等の要件を満たしていたわけではなく(原告らも,本件事故から6年以上経過した

後の平成22年の時点で,ようやく許可等の要件を満たすことを自認している。),本件事故の当時,Hを定年退職後,個人タクシー事業を営み75歳まで稼働

した蓋然性が高かったとまでは直ちにいえず,他にこの点を認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は,その前提を欠くこととなる。
      そうすると,前示事実関係によれば,Dは,本件事故に遭わなければ,Hを定年退職後も67歳まで就労することができたというべきであり,本件

事故と相当因果関係のある定年後の稼働収入の逸失利益は,賃金センサス平成16年第1巻第1表による産業計男性労働者学歴計の年齢別平均賃金額を基礎とし

た上,生活費控除率を40パーセントとし,中間利息をライプニッツ方式で控除して,次の計算式のとおり算出される827万5221円を認めるのが相当であ

る。
      443万1500円(前示賃金センサスによる60ないし64歳の平均年収額)×(1-0.4)×(8.8632(52歳から64歳までの12

年に対応するライプニッツ係数)-7.1078(52歳から61歳までの9年に対応するライプニッツ係数))≒466万7433円
      396万5300円(前示賃金センサスによる65歳以上の平均年収額)×(1-0.4)×(10.3796(52歳から67歳までの15年に

対応するライプニッツ係数)-8.8632)≒360万7788円
      466万7433円+360万7788円=827万5221円
  (ウ)小計 3177万712円
     以上の稼働収入の逸失利益を合計すると,3177万712円となる。
  イ 年金収入の逸失利益 355万1542円
  (ア)請求原因(3)ア(エ)b(年金収入の逸失利益)のうち,遺族年金の半額18万4600円及び遺族一時金10万7200円が控除されるべきこと

は,当事者間に争いがない。
  (イ)証拠(乙3,各調査嘱託)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。
    a 老齢厚生年金関係
      Dは,本件事故の当時,国民年金保険料納付済月数が109月,国民年金保険料全額免除月数が12月,厚生年金保険被保険者月数が235月の合

計356月で,厚生年金保険の受給資格(保険料納付済期間25年)を満たしており,老齢厚生年金の受給権は,平成23年8月11日に発生し(支給開始年月

は同年9月分から),納付済みの保険料を前提とすると,年金見込額は,60歳からが16万2600円(月額1万3550円),65歳からが73万8800

円(月額6万1566円)である。
      厚生年金保険には,在職老齢年金の制度があり,総報酬月額相当額と老齢厚生年金との間で調整が行われるところ,この制度は,厚生年金保険に加

入中の年金受給者に適用され,本件事故の当時,60歳以上65歳未満で,老齢厚生年金を受給しながら厚生年金の被保険者として就労している者の年金額は,

一律2割減額されるとともに,給与等及び年金の月額合計が28万円を超える場合には,超過した金額の半額が支給停止されていた。
    b 名古屋薬業厚生年金基金関係
      Dは,昭和45年3月から昭和46年12月まで,名古屋薬業厚生年金基金に加入しており,本件事故の当時,当該厚生年金の受給資格を満たし,

生存していれば60歳に到達した月の翌月分からの年金が支給され,納付済みの保険料を前提とすると,年金見込額は,年額5624円である。
      Dが生存していれば支給されるはずの年金は,いわゆる中途脱退者に支給する基本年金であるため,稼働状況による収入等に応じて行われる支給停

止等の措置はない。
    c 東京貨物運送厚生年金基金関係
      Dは,昭和49年10月から平成元年1月まで,東京貨物運送厚生年金基金に加入しており,本件事故の当時,当該厚生年金の受給資格を有してお

り,生存していれば,60歳に達した平成23年9月から支給が開始され,年金見込額は,年額29万9900円(加入員であった全期間の平均標準給与月額2

0万3333円×生年月日別給付乗率表1000分の8.625×加入員期間の月数171月)である。
    d 東京乗用旅客自動車厚生年金基金関係
      Dは,平成12年10月から平成16年5月まで,東京乗用旅客自動車厚生年金基金に加入しており,本件事故の当時,当該厚生年金の受給資格を

有しており,生存していれば,60歳に達した平成23年9月から支給が開始され,年金見込額は,年額47万5000円(基本年金額37万3700円,加算

年金額10万1300円)である。
      当該厚生年金の受給者が稼働して収入がある場合で,厚生年金保険の被保険者であるときは,①基本年金は,60歳から70歳未満の間は,在職老

齢年金となり,年金額の全部又は一部が支給停止となり,②加算年金は,60歳から65歳未満の間は全額支給停止,65歳以上は全額支給となる一方,厚生年

金保険の被保険者でない場合には,基本年金及び加算年金のいずれも全額支給される。
  (ウ)以上の事実関係によると,Dは,本件事故に遭わなければ,60歳から80歳まで(平成16年簡易生命表によると,52歳男子の平均余命は28.

93年である。),各厚生年金を受給することができたというべきであり,本件事故と相当因果関係のある年金収入の逸失利益は,次のとおり355万1542

円と認めるのが相当である。
    a 老齢厚生年金分 164万1039円
    (a)前示したところによると,Dは,本件事故に遭わなければ,60歳から61歳まではHにおいて稼働し,厚生年金の被保険者であり,61歳から

67歳まで就労することができ,厚生年金の被保険者となる可能性がある(前示のとおり個人タクシー事業者として稼働していた可能性が高いとまではいえない

。)というべきであり,当該厚生年金は,次のとおり支給停止等がされると考えるのが相当である。
      ① 60歳から61歳まで
        16万2600円×0.8(減額率)=13万80円
        550万9321円(本件事故当時のHの年収)÷12月≒45万9110円
        (13万80円+45万9110円-28万円)÷2=15万4595円
        13万80円-15万4595円=-2万4515円(支給停止)
      ② 61歳から64歳まで
        16万2600円×0.8=13万80円
        443万1500円(前示賃金センサスによる60ないし64歳の平均年収額)÷12月≒36万9291円
        (13万80円+36万9291円-28万円)÷2≒10万9685円
        13万80円-10万9685円=2万395円(現実の支給額)
    (b)以上によると,本件事故と相当因果関係のある当該年金収入の逸失利益は,生活費控除率を6割とし,次の計算式のとおり算出された164万1

039円と認めるのが相当である。
       2万395円(61歳から64歳までの支給額)×(1-0.6)×(8.8632(本件事故当時の52歳から当該支給額の受給終期である6

4歳までの12年に対応するライプニッツ係数)-7.1078(52歳から当該支給額の受給始期である61歳までの9年に対応するライプニッツ係数))≒

1万4320円
       73万8800円(65歳からの支給額)×(1-0.6)×(14.8981(52歳から当該支給額の受給終期である80歳までの28年に

対応するライプニッツ係数)-9.3935(52歳から当該支給額の受給始期である65歳までの13年に対応するライプニッツ係数))≒162万6719


       1万4320円+162万6719円=164万1039円
    b 名古屋薬業厚生年金基金分 1万8975円
      本件事故と相当因果関係のある当該年金収入の逸失利益は,生活費控除率を6割とし,次の計算式のとおり算出された1万8975円と認めるのが

相当である。
      5624円×(1-0.6)×(14.8981-6.4632(52歳から当該支給額の受給始期である60歳までの8年に対応するライプニッ

ツ係数))≒1万8975円
    c 東京貨物運送厚生年金分 78万8077円
    (a)前示のとおり,東京乗用旅客自動車厚生年金は,老齢厚生年金と同様に支給停止がされることに照らして,東京貨物運送厚生年金についても,老

齢厚生年金と同様に,次のとおり支給停止がされると考えるのが相当である。
      ① 60歳から61歳まで
        29万9900円×0.8(減額率)=23万9920円
        550万9321円(本件事故当時のHの年収)÷12月≒45万9110円
        (23万9920円+45万9110円-28万円)÷2=20万9515円
        23万9920円-20万9515円=3万405円(現実の支給額)
      ② 61歳から64歳まで
        29万9900円×0.8=23万9920円
        443万1500円(前示賃金センサスによる60ないし64歳の平均年収額)÷12月≒36万9291円
        (23万9920円+36万9291円-28万円)÷2≒16万4605円
        23万9920円-16万4605円=7万5315円(現実の支給額)
    (b)以上によると,本件事故と相当因果関係のある当該年金収入の逸失利益は,生活費控除率を6割とし,次の計算式のとおり算出された78万80

77円と認めるのが相当である。
       3万405円(60歳から61歳までの支給額)×(1-0.6)×(7.1078(52歳から当該支給額の受給終期である61歳までの9年

に対応するライプニッツ係数)-0.9523(52歳から当該支給額の受給始期である60歳までの1年に対応するライプニッツ係数))≒7万4863円
       7万5315円(61歳から64歳までの支給額)×(1-0.6)×(8.8632-7.1078)≒5万2883円
       29万9900円(65歳からの支給額)×(1-0.6)×(14.8981-9.3935)≒66万331円
       7万4863円+5万2883円+66万331円=78万8077円
    d 東京乗用旅客自動車厚生年金分 139万5251円
    (a)当該厚生年金は,次のとおり支給停止等がされると考えるのが相当である。
      ① 60歳から61歳まで
        47万5000円×0.8(減額率)=38万円
        550万9321円(本件事故当時のHの年収)÷12月≒45万9110円
        (38万円+45万9110円-28万円)÷2=27万9555円
        38万円-27万9555円=10万445円(現実の支給額)
      ② 61歳から64歳まで
        47万5000円×0.8=38万円
        443万1500円(前示賃金センサスによる60ないし64歳の平均年収額)÷12月≒36万9291円
        (38万円+36万9291円-28万円)÷2≒23万4645円
        38万円-23万4645円=14万5355円(現実の支給額)
    (b)以上によると,本件事故と相当因果関係のある当該年金収入の逸失利益は,生活費控除率を6割とし,次の計算式のとおり算出された139万5

251円と認めるのが相当である。
       10万445円(60歳から61歳までの支給額)×(1-0.6)×(7.1078-0.9523)≒24万7315円
       14万5355円(61歳から64歳までの支給額)×(1-0.6)×(8.8632-7.1078)≒10万2062円
       47万5000円(65歳からの支給額)×(1-0.6)×(14.8981-9.3935)≒104万5874円
       24万7315円+10万2062円+104万5874円=139万5251円
    e 小括 355万1542円
      以上の年金収入の逸失利益を合計すると,384万3342円となるところ,前示のとおり,遺族年金の半額18万4600円及び遺族一時金10

万7200円が控除されるべきであるから,本件事故と相当因果関係のある年金収入の逸失利益は,次の計算式のとおり355万1542円となる。
      164万1039円+1万8975円+78万8077円+139万5251円=384万3342円
      384万3342円-18万4600円-10万7200円=355万1542円
  ウ 小計 3532万2254円
    以上の逸失利益を合計すると,3532万2254円となる。
    3177万712円+355万1542円=3532万2254円
(5)慰謝料 2600万円
   Dの死亡による慰謝料は,Dの年齢,家族構成,本件事故の態様その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,2600万円が相当である。
(6)小計 6288万7137円
   以上のDの損害額を合計すると,6288万7137円となる。
3 請求原因(3)イ(相続)について
  請求原因(3)イの事実は,当事者間に争いがない。
  そうすると,その法定相続分(原告Aにつき2分の1,原告B及び原告Cにつき各4分の1)に従い,原告Aは3144万3569円のDの損害賠償請求権

を,原告B及び原告Cは各1572万1784円の同請求権をそれぞれ取得したこととなる(1円未満の端数は原告Aに割り振った。)。
4 請求原因(3)ウ(原告らの損害)について
(1)慰謝料 原告Aにつき200万円,原告B及び原告Cにつき各100万円
   請求原因(3)ウ(ア)(慰謝料)のうち,原告Aが,Dと幼なじみで仲のよい夫婦であり,ずっと血の止まらない状態で集中治療室にいたDの姿に衝撃

を受け,それ以来つらい日々を送っており,元の幸せな生活が二度と戻ってこないことが悔しく,体調も優れず,2か月ほど仕事を休んでいること,原告らが,

被告Eの居眠り運転による本件事故でかけがえのないDを奪われ,悔しさと怒りでいっぱいであることは,当事者間に争いがなく,その他本件に現れた一切の事

情を考慮すると,Dの死亡による原告らの精神的苦痛を慰謝するには,原告Aにつき200万円,原告B及び原告Cにつき各100万円が相当である。
   以上によると,原告らの損害額は,原告Aにつき3344万3569円,原告B及び原告Cにつき各1672万1784円となる。
(2)弁護士費用 原告Aにつき183万円,原告B及び原告Cにつき各91万円
  原告Aは1504万4572円の,原告B及び原告Cは各752万2285円のそれぞれ損害のてん補を受けていることを自認しているから,これらを前示

各損害額からそれぞれ控除すると,原告Aにつき1839万8997円,原告B及び原告Cにつき各919万9499円となる。
  そして,弁論の全趣旨によると,原告らは,本件訴訟の提起及び追行を原告ら訴訟代理人に委任し,相当額の費用及び報酬の支払を約束していることが認め

られるところ,本件事案の性質,審理の経過,認容額その他諸般の事情を考慮すると,原告らが本件事故と相当因果関係のある損害として賠償を求めることがで

きる弁護士費用は,原告Aにつき183万円,原告B及び原告Cにつき各91万円が相当である。
5 結論
  よって,原告らの請求は,被告らに対し,連帯して,原告Aにつき2022万8997円,原告B及び原告Cにつき各1010万9499円並びにこれらに

対する不法行為の日である平成16年5月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度においていずれも理由があるか

ら認容し,その余はいずれも失当であるから棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条本文,65条1項本文を,仮執行の宣言につき同法259条1

項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。